「砂川判決=合憲根拠」は自民・高村副総裁のインチキ誤読!? ーー当時の弁護士らが『砂川判決と戦争法案』創刊で安保法案を廃案へ追い込む! 2015.9.4

記事公開日:2015.9.12取材地: テキスト動画
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(IWJテキストスタッフ・富田)

特集 安保法制反対メッセージ
※9/12 テキストを追加しました!

 1959年に最高裁判決が下された砂川事件。その判決を集団的自衛権行使容認の根拠とする政府・与党の主張は、複数の点で無理がある──。このように批判する集会が、2015年9月4日、東京都内で開かれた。

 マイクを握ったのは、砂川事件の弁護団に加わっていた弁護士らで、彼らは9月10日に刊行される『砂川判決と戦争法案』(旬報社)の著者でもある。砂川裁判の争点は、あくまで、「米軍の日本駐留は憲法9条に照らして許されるか」にあったと指摘し、「あの判決は、『日本は防衛面で余力があるから、他国に力を貸す集団的な安全保障行動に出ていい』とは、ひと言も言っていない」と力説した。

 「砂川事件の最高裁判決が、集団的自衛権行使容認の合憲根拠になり得ないことは、法律の専門家であれば誰でもわかる」

 最初に砂川判決を持ち出したのは高村正彦自民党副総裁だが、安保法案を成立させたいがために、意図的に判決文の誤読をしているのでは、との見方もあった。また、同判決が米国の圧力を受けていることも説明され、登壇した元被告の1人は、「あの裁判自体が、そもそも違憲」と強調。弁護士は、「裏事情がある判決を、合憲根拠にすること自体が不謹慎だ」と訴えた。

記事目次

■ハイライト

  • タイトル 「砂川事件判決の真実!〜事件の当事者と担当弁護士が語る」
  • 日時 2015年9月4日(金)11:30〜13:30
  • 場所 参議院議員会館(東京・永田町)
  • 主催 砂川判決の悪用を許さない会/共催 改憲問題対策法律家6団体連絡会
  • 告知 砂川事件判決の真実! 事件の当事者と担当弁護士が語る(旬報社サイト)

憲法学者らによる「違憲」表明で、「砂川判決」が再び浮上

 集会は、大森典子弁護士(元砂川事件民事事件弁護団)による、挨拶を兼ねたスピーチで始まった。

 「2014年3月に、衆院議員の高村正彦氏(自民党副総裁)から『砂川最高裁判決が、集団的自衛権行使容認の根拠になる』という趣旨の発言が飛び出した時、『これは一大事だ、このような見方を決して容認するわけにはいかない』と強く思った」と振り返った大森弁護士は、その高村発言があった直後に、砂川事件で弁護団に加わっていた弁護士らに声をかけ、高村発言を容認できない旨の声明を出すに至った、と述べた。

 声明の影響もあったのか、2014年7月1日に、集団的自衛権行使容認が閣議決定された折には、砂川最高裁判決を合憲の根拠にする議論はなかった。だが、2015年6月8日、憲法審査会で自民推薦の憲法学者、長谷部恭男氏(早稲田大学教授)からも、「安保法案は違憲である」との表明があり、その後、圧倒的多数の憲法学者が「安保法案=違憲」との立場を鮮明にすると、高村氏や安倍首相は、「重要なのは憲法学者の見解でなく、最高裁の判決だ」と主張し始める。そして、「砂川事件最高裁判決」が再度持ち出される運びとなった。

 大森弁護士は、「砂川事件の最高裁判決が、集団的自衛権行使容認の合憲根拠になり得ないことは、法律の専門家であれば誰でもわかる」とし、今の政府・与党の内部は、そういう法学的常識が通用しない状況になっている、と懸念を表明した。

まずは「伊達判決」に着目せよ!

 その上で大森弁護士は、砂川事件に関する理解が、国民のみならず国会議員の間にも十分でないことに乗じて、同最高裁判決が合憲根拠にされているフシがあると指摘。自身も執筆陣に名を連ねている『砂川事件と戦争法案』には、その陥穽を埋める役割が期待できるとアピールした。

 「本づくりの話が具体化したのは、夏になってから。最初の打ち合わせは7月25日、原稿の締め切りは8月5日だったが、全執筆者が大急ぎで書き上げてくれた。この本が、安保法案を廃案に追い込む一助になれば、なお嬉しい」

 集会はその後、声優による、1959年12月16日に出された「砂川事件最高裁判決文」の主要箇所の朗読を挟み、新井章弁護士(元砂川事件弁護団)の登壇へと進行した。

 マイクを握った新井弁護士は、冒頭で、「法律家として、砂川事件最高裁判決を合憲根拠にする法律論は、まことにレベルが低いと言わざるを得ない」と、高村発言を切り捨ててみせた。

 そして、砂川事件最高裁判決の前段には、1959年3月に下された東京地裁による、通称「伊達判決」があると強調した。これは、米軍立川基地の拡張に反対して、同基地内に入ったことで起訴された市民7人を、米軍駐留(日米安保条約)は憲法9条に反することを理由に、無罪とした判決である。その伊達判決を不服とした当時の検察と政府(岸信介政権)が、高裁を飛び越える跳躍上告を行い、異例の形で行われた最高裁判所での裁判で下されたのが、「砂川事件最高裁判決」なのである。

 新井弁護士は、「伊達判決の正否を判断することが、最高裁の任務」と強調。伊達判決で着目されたのは、あくまでも、「米軍の日本駐留は憲法9条に照らして許されるか」だったとし、こう力を込めた。

 「伊達判決が下された1審で、争点にならなかった事柄を最高裁が扱ったのだとしたら、それは『訴訟法違反』に相当する。伊達判決の文面には、『集団的自衛権』なる単語は一切登場しない。つまり、最高裁で集団的自衛権の問題が突然のごとく顔を出すことなど、あろうはずがなく、この点からも、高村発言には無理があることは明白だ」

高村副総裁に「意図的誤読」の可能性

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