国民ひとりひとりの決断が求められる「軍隊の必要性」 ~安保法案をめぐり肯定派も否定派も不満を表明、元自衛隊幹部が語る防衛の真髄 2015.7.28

記事公開日:2015.8.4取材地: テキスト動画
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(IWJテキストスタッフ・富田)

※8月4日テキストを追加しました!

 「新安保法制には、まだまだ議論すべき点が残っている」──。安全保障関連法案の衆院審議が終わったあと、世間に広がった不満を、そのままタイトルにしたシンポジウムが、2015年7月28日、東京都千代田区の衆議院第二議員会館で開かれた。

 この日、登場したゲストスピーカーは元自衛隊幹部たち。元陸上幕僚長の冨澤暉(ひかる)氏、元陸将の渡邊隆、元空将補の林吉永氏の3人だ。中でも冨澤氏は、安倍晋三政権が推進する新安保法制を評価する立場を明確にしており、国際地政学研究所理事長でもある柳澤協二氏(元内閣官房副長官補)をはじめ、安保法案に反対する有識者らからなる「自衛隊を活かす:21世紀の憲法と防衛を考える会」が主催するこの集会では、異彩を放つ存在となった。

 ただし、主催者側のメンバーからは、「冨澤さんが考えていることは、私とほぼ同じだ」との発言もあった。日本の軍隊保有に価値を見出せるか、換言すれば、憲法9条の「先進性」をどれだけ尊重できるか、あるいは信用できるかで、その人の安保法制観が決定づけられるということを、改めて認識する機会となり、リベラル派にとっても意義のある議論の場となっていた。

 スピーチで冨澤氏は、「集団的自衛権」と「集団安全保障」の言葉の混同や、自衛隊が元来持っている「正当防衛権」を強調する議論を展開。実際の自衛隊が、世間の一般的イメージよりも高い戦闘性を備えていることが示された。

 林氏は、航空自衛隊員には瞬時の判断が求められるが、判断の正当性は担保されるわけではないと語り、「彼らは、拙速な判断ミスが戦争を招くリスクと紙一重の場所にわが身を置いている」と語った。

記事目次

■ハイライト

米艦護衛は「正当防衛権」の範囲

 ゲストスピーカーの一番手の冨澤氏は、冒頭で、「安保法制では、リベラルな考え方をしない」と表明。国会で審議が続く安保法案について、「よくぞここまで『積極的平和主義』を具現化したものだと、私は高く評価している」と言い、安倍政権は、麻生太郎政権以前の自民党政権より格段に進歩している、と口調を強めた。

 「安保法制を新しくする動きが、現状から後退することはあり得まい。今回の安保法案を潰しても、何の進歩も得られない。元の木阿弥になるだけだ」

 安保法案をめぐる衆議院の審議では、1. 集団的自衛権、2. 集団安全保障、3. グレーゾーン事態、の3つの言葉に混乱があり、それが国民の理解を難しくしたと指摘する冨澤氏は、「(グレーゾーン事態の具体例である)自衛隊による米艦防護には、集団的自衛権ではなく(日米艦隊を一体視した上での)正当防衛権の行使が当てはまる」と主張。正当防衛権と集団的自衛権の違いについては、「日本語では『正当防衛』と『自衛』を別の言葉で表すが、英語では『self defense』に2つの意味を持たせる」と説明した。日米艦隊一体視での正当防衛を、英語では「unit self defense」と表すという。

 冨澤氏は、「米艦護衛が『集団的自衛権』の行使によるものであるかのように話しているのは、政府・与党のごまかしである」と批判する。安保法案で、自衛隊の正当防衛権を認める自衛隊法95条を改正して、対象に米軍などの部隊を加えることの基本理念は、あくまでも現行法の「正当防衛権」だと力説した。

 本来の「集団的自衛権」の意味について、冨澤氏は、米国が単独で自国防衛を行えず、日本に援助(行使)を求めてくる折の概念、と説明している。そうなると、圧倒的な軍事力を誇る米国が、他国の侵略攻撃を受けることは考えにくい以上、米国は日本に助けてもらおうと、日本に集団的自衛権の行使を求めることを本当に考えているのか、との疑問が生じてくる。

原発、新幹線、高層ビル攻撃に備えよ

 日本では、「集団的自衛権」と「集団安全保障」が混同されていると、かねて指摘してきた冨澤氏は、21世紀の日本の安保政策に相応しいのは、集団的自衛権ではなく、米軍が核となる諸国連合による集団安全保障の概念であると主張しているが、安倍首相は、少なくとも現時点では違う。2014年5月15日の記者会見で、安倍首相は集団的自衛権の行使容認に意欲を示す一方で、国連の集団安全保障措置への参加の検討を行わない旨を表明しているためだ。冨澤氏は、「このままでは大問題になる」と懸念する。

 「朝鮮半島に有事が起きた場合、米豪韓やフィリピンの船を、日本は集団的自衛権で守るのか。そうであれば、要請があるまで待たねばならない。また、国連軍が再編される場合も、日本は、集団的自衛権ではなく、集団安全保障措置への参加になることを忘れてはならない」

 冨澤氏は安倍首相に対し、「自衛隊員には、総理大臣が防衛出動の命令を下さなくとも、撃たれたら撃ち返せる自己防衛権があることを、もっと国民に対して積極的に言うべきだ」とも注文をつけ、自衛隊を過度に「非戦闘」のイメージで覆うことに不満をにじませた。

 さらにまた、冨澤氏からは、「安保法案には、原発や新幹線、高層ビルへの各種攻撃への緊急対応の要素が盛り込まれていない」との指摘もあり、「これこそが、警察だけでは対応できない(今どきの)『グレーゾーン問題』だ」と力説した。

米国も2年間「国民的議論」を重ねた

 続いてマイクを握った渡邊氏は、「ここまでの安保法案騒動で、自国憲法への国民の意識が高まったことは、間違いなく指摘できる」と切り出した。

 そして、安保法案が、自衛隊法などの現行法をひとまとめにして、それぞれの部分的な改正を目指す「平和安全法制整備法案」と、新法の「国際平和支援法案」をパッケージにしたものであることに触れ、「法案には、さまざまな問題点はあるものの、これまで光が当てられなかった部分に、ようやく光が当たり始めたのは事実だ」とも好感した。

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