樋口陽一氏、集団的自衛権は「国会審議への侮辱」「判例への侮辱」「歴史への侮辱」――国民安保法制懇が戦争法案の廃案を求めて緊急記者会見 2015.7.13

記事公開日:2015.7.14取材地: テキスト動画
このエントリーをはてなブックマークに追加

(原佑介)

※7月14日テキストを追加しました!

 集団的自衛権の行使を可能とし、日本を「戦争ができる国」へと変質させる安保法案、いわゆる「戦争法案」の衆院強行採決が迫っている。2015年7月13日、憲法学者らや安全保障の専門家らで構成される「国民安保法制懇」が緊急記者会見を開いた。

 国民安保法制懇は声明を発表し、「集団的自衛権の行使は従来の憲法解釈と論理的に整合しない。自国防衛のための個別的自衛権と他国防衛の集団的自衛権は本質的に違う」と指摘。さらに「9条の限界のもとに日本の国防はなければならない」「法的安定性に欠け、明確な限定が存在しない。時の政権が行使しようとすれば歯止めがない」などと批判し、戦争法案を廃案にするよう強く求めた。

■ハイライト

  • 出席者 大森元内閣法制局長官、長谷部恭男早稲田大学教授、小林節慶応大学名誉教授、柳澤協二元内閣官房副長官補、伊勢崎賢治東京外国語大学教授、樋口陽一東京大学名誉教授、伊藤真弁護士
  • 日時 2015年7月13日(月) 18:30~19:30
  • 場所 日本記者クラブ・日本プレスセンタービル 9階「会見場」(東京都千代田区)
  • 詳細 国民安保法制懇 (告知

元内閣法制局長官、「砂川判決」を根拠とするのは「暴論中の暴論」

 会見で元内閣法制局長官の大森政輔氏は、「『7.1の閣議決定』では、政府の憲法解釈には論理的整合性と法的安定性が求められると言いながら、いざ研究をしてみると、整合性も安定性も実現できていない」と真正面から批判する。

 「7.1の閣議決定」とは、安倍内閣が昨年2014年7月1日に行った、集団的自衛権の行使を容認するとした閣議決定のことだ。

 集団的自衛権とは、独立主権国家であれば先天的に有する自国防衛の個別的自衛権とはまったく異なり、他国との密接性によって後天的に発生し、付与されるものだと大森氏は言う。

 「集団的自衛権の本質は直接的には他国防衛で、『他衛権』。自国への武力行使とは本質的な差がある。私が内閣法制局にいたときまで、まったくこの結論、理由を一言なりとも変えずに堅持してきた」

 また、大森氏は、自民党・高村正彦副総裁などが集団的自衛権行使の根拠に「砂川判決」をあげていることに関して、「暴論中の暴論」であると批判。「最高裁の砂川判決が集団的自衛権行使を合憲であるという結論を引き出す余地はない」と断言した。

樋口氏、集団的自衛権の行使は「三重の侮辱」

 東北大学名誉教授の樋口陽一氏は、安倍総理の集団的自衛権の行使を認める「7.1閣議決定」について、「国会審議の何十年にもわたる攻防の積み重ねを一気に吹き飛ばしてしまう、国会審議への侮辱である」と批判する。

 「砂川判決を根拠とするのは、判例の読み方の基本をまったく踏み外している。判例への侮辱だ」とし、さらに戦後レジームの出発点とも言える「ポツダム宣言」への認識も正しくできていない安倍総理について、「言ってみれば歴史への侮辱だ。『三重の侮辱』で進行しつつある日本の政治の現状について深く憂慮している」と胸のうちを語った。

 早稲田大学法学学術院教授の長谷部恭男氏は、「安保関連法案は違憲で決着がついている。論争などない。それだけでも廃案にすべきだ」と訴えた。

(…会員ページにつづく)

アーカイブの全編は、下記会員ページまたは単品購入より御覧になれます。

一般・サポート 新規会員登録単品購入 330円 (会員以外)

関連記事

「樋口陽一氏、集団的自衛権は「国会審議への侮辱」「判例への侮辱」「歴史への侮辱」――国民安保法制懇が戦争法案の廃案を求めて緊急記者会見」への1件のフィードバック

  1. @55kurosukeさん(ツイッターのご意見) より:

    樋口陽一氏、集団的自衛権は「国会審議への侮辱」「判例への侮辱」「歴史への侮辱」――国民安保法制懇が戦争法案の廃案を求めて緊急記者会見 http://iwj.co.jp/wj/open/archives/252693 … @iwakamiyasumi
    この法案が押し進められれば、『力』で物事を押し通す野蛮な国になる。
    https://twitter.com/55kurosuke/status/620906779203891200

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です