【大義なき解散総選挙】「卑怯だ!」選挙公約に「集団的自衛権」の文字がない!? 国民安保法制懇が緊急会見、安倍総理の「逃げの姿勢」を痛烈に非難 2014.12.1

記事公開日:2014.12.2取材地: テキスト動画
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(IWJ・原佑介)

 「集団的自衛権」を選挙公約にきっちり書き込んで、選挙戦を堂々と戦っていく――。

 11月18日、衆院解散の決定を表明した記者会見の場で、こう断言した安倍総理。しかし、いざ公表された自民党の選挙公約の中に、「集団的自衛権」の文字は見当たらない。「国民を刺激したくない」「争点にしたくない」という気持ちの表れか。

 それでも選挙で勝利を収めれば、自民党は「信任を得た」と勝ちどきをあげるのだろう。国民不在のまま、「白紙委任状態」で憲法が破壊されてゆこうとしている。そんな中、衆院選公示日前日の12月1日、安倍政権の解釈改憲に異を唱える「国民安保法制懇」が緊急記者会見を開き、緊急声明を発表した。

 会見者は元防衛官僚の柳澤協二氏、憲法学者で慶應義塾大学名誉教授の小林節氏、法学者で東京大学名誉教授の樋口陽一氏。

▲会見に臨む国民安保法制懇の識者ら3名

 会見では、10月8日にとりまとめられた日米防衛協力のための指針(日米ガイドライン)見直しの中間報告に触れ、改めて集団的自衛権行使の違憲性を指摘。選挙の見通しなどにも言及した。

■ハイライト

  • 日時 2014年12月1日(月) 18:00~
  • 場所 日本プレスセンタービル(東京都千代田区)

冷戦、朝鮮半島の不安定化…日本を有事から守るための日米ガイドライン

 日米ガイドラインとは、他国から日本が攻撃を受けた場合や、周辺国で有事が起きた場合に、自衛隊と米軍がどう動くかの役割分担を決めた文書のこと。旧ソ連の日本侵攻を念頭に、冷戦下の1978年に初めて策定された。97年に改定され、朝鮮半島有事などの協力を盛り込んだ。

 日米両政府は来年(2015年)に、17年ぶりとなる日米ガイドラインの再改定を目指している。今回は尖閣などをめぐる中国への対応や、宇宙・サイバー空間での協力強化に主軸を置く。日米両政府は今年(2014年)10月8日、防衛協力小委員会を開き、日米ガイドラインの中間報告をとりまとめた。

 中間報告では、集団的自衛権の行使容認を踏まえ、これまで日本周辺に限定されていた地理的制約を削除し、日本に対する武力攻撃がない場合でも、「非戦闘員を退避させるための活動」や、ホルムズ海峡の機雷掃海などの「海洋安全保障」を行う方針などが記述された。

憲法違反に基づいた「新日米ガイドライン中間報告」

 今回の中間報告を受け、国民安保法制懇は緊急声明を発表した。会見で柳澤氏は、3点にわかれた緊急声明の論点を説明した。

 1点目は、そもそも集団的自衛権の行使は憲法違反であり、日米ガイドライン改定も、憲法違反を前提に進められている以上、正当性がないということ。

 2点目は、今回の日米ガイドライン中間報告には、安保条約上の根拠がないこと。ソ連侵攻を念頭においた78年指針は「日本有事」として安保条約5条に、北朝鮮での有事などを念頭においた97年指針は「周辺事態」として安保条約6条に、それぞれ根拠をもっていた。今回の中間報告で示された指針は、日米安保条約の範疇を超え、「グローバル」化を図っている。

※日米安保条約(日本国とアメリカ合衆国との間の相互協力及び安全保障条約)

 5条――各締約国は、日本国の施政の下にある領域における、いずれか一方に対する武力攻撃が、自国の平和及び安全を危うくするものであることを認め、自国の憲法上の規定及び手続に従って共通の危険に対処するように行動することを宣言する。

 6条――日本国の安全に寄与し、並びに極東における国際の平和及び安全の維持に寄与するため、アメリカ合衆国は、その陸軍、空軍及び海軍が日本国において施設及び区域を使用することを許される。

 3点目は、中間報告が「周辺事態」の枠を超えており、日本の平和に重大な影響を与える可能性があること。周辺事態とは、放置していたら日本の平和が侵害されるような事態が、日本の周辺国で起こることである。これまでは周辺の有事の際、米軍を支援することで、日本が巻き込まれないようにすることを目的としてきた。今後は日本の有事を防止するどころか、「周辺事態」の域を超えることで米国の戦争に加担し、戦争当事国として日本に有事を呼びこむ可能性がでてくるという指摘である。

 柳澤氏は、「こうした議論がまったくないまま、争点にもならずに選挙が進んでいる。日米の防衛当局間で、白紙委任状態で進んでいくことに危惧を持っている」と話した。

▲集団的自衛権行使の違憲性を指摘する元防衛官僚・柳澤協二氏

公約に「集団的自衛権」の文字がないという「卑怯」

 樋口陽一氏は、今回の解散総選挙が解散権の乱用にあたり、「憲政の常道」に背くものだと批判。安倍総理が命名した「アベノミクス解散」について、「特定の争点に誘導して有利な選挙結果を期待し、選挙が終われば、それ以外の争点でも『信任を得た』として、爆進する」と懸念を示す。

 樋口氏は、「沖縄県知事選の『辺野古新基地建設反対』の意思表示も、選挙を利用して、国民全体の声で消してしまおうとしている。解散に疑問を持つ有権者が少しでも増えて欲しい、そして、投票所にいって欲しい」と語った。

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