「僕がテロリストだったら、原発を狙う」――東京外大・伊勢崎賢治教授らが日本での「原発テロ」に警鐘 ~米国の海外最大の軍事拠点“日本”を狙えば米軍の弱体化に有効であることを示唆 2015.2.14

記事公開日:2015.2.21取材地: テキスト動画
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(IWJテキストスタッフ・富田)

※2月21日テキスト追加しました!

 「日本政府が今後も、『イスラム国』は悪、日本が参加する有志連合は善、という二元論的なメッセージを発信し続けたら、世界中で日本人が狙われる。中でもパキスタンにいる日本人は、かなり危なくなるだろう」──。元内閣官房副長官補の柳澤協二氏は、こう警鐘を鳴らす。

 2015年2月14日、東京都千代田区の日比谷図書文化館で行われた、自衛隊を活かす:21世紀の憲法と防衛を考える会(略称=自衛隊を活かす会)の「第5回シンポジウム」は、過激派組織「イスラム国」による邦人2人の拉致殺害事件が起きて間もないこともあり、当初のテーマ「現代によみがえる『専守防衛』はあるか」に、急遽「テロと人質」問題が議題に加えられた。

 この日は、ゲストに元陸上自衛隊幕僚長の冨澤暉氏を迎え、同会メンバーである元内閣官房副長官補の柳澤協二氏、東京外国語大学教授の伊勢崎賢治氏、桜美林大学教授の加藤朗氏と共にスピーチと意見交換を行った。

 柳澤氏は、中東歴訪中の安倍首相の演説(1月17日エジプト、1月20日イスラエル)が、無駄に「イスラム国」を挑発した、との批判を展開。特に、「イスラム国」が嫌悪するダビデの星のイスラエル国旗の前で、安倍首相が日本人の人質解放を訴えたことを、「賢いやり方ではなかった」と問題視し、「安倍首相のそういうメッセージの出し方が、在外邦人の命の安全や、幸福を求める権利を脅かす『最大の脅威』になっている」と断じた。

 また、伊勢崎氏は、「イスラム国」の思想に共鳴して中東へ渡った日本の若者が、自国へのテロを命じられて戻ってくる「バックホーム・テロリズム」の可能性を危惧し、「僕がテロリストだったら、原発を狙う」と発言。アメリカ国外最大の軍事拠点である日本で原発テロが起きれば、米軍の弱体化には大きな効果があるとして、「これを(テロリストが)考えないわけがない」と警鐘を鳴らした。

記事目次

■ハイライト

  • 対談 冨澤暉氏(元陸上自衛隊幕僚長)×柳澤協二氏(元内閣官房副長官補)
  • コメント 加藤朗氏(桜美林大学教授)
  • 司会 伊勢崎賢治氏(東京外国語大学教授)

邦人人質事件、メディアの連日の「状況分析」に疑問

 元国連平和維持軍武装解除部長として国際紛争の解決にあたった経験がある伊勢崎氏は、「今回の邦人2人の人質事件では、自分にもメディアから取材依頼が殺到した」と明かした上で、このように話した。

 「私が所属する東京外国語大学には、中東が専門の学者が何人もいる。テレビなどに出ていた人たちは、皆、私の友人だが、私は出演をすべて拒否した。なぜなら、これは拉致・誘拐事件だからだ。国内の誘拐事件だったら報道規制がかかるはず。(メディアによる状況分析などが、日本側の手の内を明かすことになりかねず)人質解放に向けて現地で奮闘している外務省の職員らに配慮すべきなのに、テレビに出てペラペラ喋るのはおかしいだろうと思った」

 伊勢崎氏は、今回の人質殺害事件をめぐり、こうした視点からの議論が一切なされていないことに不満を表明。「以前、この会の第2回シンポジウム『対テロ戦争における日本の役割と自衛隊』に参加した酒井啓子氏(千葉大学教授)とメールでやりとりしたが、私と同じ考えだった。落ち着いてから、この点も総括したほうがいいと思う」と付言した。

「テロとの戦い」に完全勝利などない

 伊勢崎氏は、「今、『イスラム国』には周辺各国から多くの義勇兵が急速に集まっている。義勇兵自体は珍しくないが、ジハーディストにとってはレジェンドになっていたパキスタンから、新世代のジハーディストがシリアに渡る構図がある」とし、自身が武装解除交渉などに関わったアフガニスタンでは、NATOとアメリカが13年間もタリバンと戦った末に撤退を始めたことに触れて、「通常戦力でテロと戦っても、勝てないのだ」と語った。

 伊勢崎氏によれば、タリバンには、対話が可能な『アフガン・タリバン』と、非常に急進的な『パキスタン・タリバン』がおり、『パキスタン・タリバン』は、すでに『イスラム国』との共闘宣言を出し、『アフガン・タリバン』側でも『イスラム国』のリクルート・エージェントが暗躍しているという。

 「今、古典的な国家間の戦争が起こり得るのだろうか」と疑問を呈した伊勢崎氏は、戦争が起こらないと考える理由を、「なぜなら、国家同士の通常戦を抑止する、いくつかのタガがあるからだ」と話し、次のように説明した。

 「まず、国連には、侵略国家を出さないための仕組みがあり、安保理で5ヵ国が牽制し合っている。次に核抑止のレジームがある。そして、グローバル経済によって、国を超えて経済的に依存し合う関係がある。この3つで通常戦のタガとしては十分だ。ただ、内戦が起きた国の場合は違っていて、元の政権が大国に支援を求めた場合、大国はそこに対して『侵略ではない侵略』をする。それは、集団的自衛権の行使という形をとる」

米軍弱体化を狙う、日本での「原発テロ」の可能性

 さらに、「イスラム国」などによるグローバル型のテロリズムは、経済のグローバル化の副産物のようなもの、と続けた伊勢崎氏は、グローバリゼーションの進展で社会の底辺に置かれることになった人々の不満や反発心が、グローバル・テロの土壌をなしていると訴え、「その影響がもっとも顕著なのは、アフリカ大陸。そして、イスラム教スンニ派の人たちだ」と述べた。

 また、「イスラム国」の出現で、警戒しなくてはいけないのは「バックホーム・テロリズム」だと話し、「イスラム国」の思想に共鳴して中東へ渡った日本の若者が、自国へのテロを命じられて戻ってくる可能性にも言及した。

 「僕がテロリストだったら、原発を狙いますね。それは日本を殲滅させるためではなく、アメリカの弱体化のために有効だから。日本は、アメリカ国外における、最大のアメリカの軍事拠点です。日本で原発事故を起こせば、3.11の時のように米軍はさっさと出て行くでしょう。これを(テロリストが)考えないわけがない」と、伊勢崎氏は警鐘を鳴らした。

占領者の負い目と日本の役割

 「イスラム国」は突然変異ではなく、過去にもあった反体制勢力のひとつであると伊勢崎氏は主張し、そのような勢力の特徴として、「社会構造が生む強い被害者意識と、そこから生まれた『大義』を持ち、法の支配の空白に巣食って、自らの『法の支配』を敷く。そこに恐怖政治を織り交ぜる」と述べた。

 そして、西側諸国は、そういう勢力への対処法を積み重ねてきたはずなのに、一向に状況が改善されないことについて、「占領者の負い目があるからだ」と、伊勢崎氏は指摘した。

 「アメリカは、破綻国家を支援する時、必ず条件を付けて内政にも関わる。傀儡政権を置いて手なずける。占領している負い目があるから、傀儡政権には厳しくしない。すると、汚職や腐敗が蔓延して地域住民の不信を生む。そこを狙うのが反体制勢力だ。この構造を何とかしないと、テロとの戦いには勝利できない」

 その上で伊勢崎氏は、「占領者側にいながら、唯一、占領していない存在が日本。占領者の負い目がなく、強く発言できる日本の役割を自覚することが、テロとの戦いに勝利する唯一の方法だと思う」と語った。

領土とネット空間の両方を支配するハイパー国家

 次に、加藤氏がマイクに向かい、「現在のイスラム世界のテロの始まりは、1978年4月のアフガニスタンのサウル革命。それ以降、いわゆるタリバンが登場した。サウル革命に影響を受けたのがイラン革命だが、これは『主権在神』の国家を作ろうというもので、世界中が驚いた。結局、イラン革命はイラン・イラク戦争で封じ込められたが、革命が飛び火したのがレバノン。さらに、それが湾岸戦争で周辺一帯に広がった。イスラム過激派のテロは拡大の一途をたどり、中東だけでなく、アフリカ、フィリピン、インドネシアなどに広がっている」と、歴史的な経緯を説明した。

 その上で加藤氏は、「そういう中で、曲がりなりにも領土を支配している『イスラム国』は、単なる過激派集団ではなく、ある種の『国家』だ」とコメント。しかも、その支配がサイバー空間にも及んでいるため二重に恐ろしいとし、「過去におけるテロ組織とは違う。私は『ハイパー国家』と呼んでいる」と付け加えた。

 アメリカというグローバル国家に対するアンチテーゼとして、グローバルテロリズムが生まれたと語る加藤氏は、「これは国家間の争いではなく、草の根の全面戦争であり、『イスラム国』の戦う相手は、17世紀にヨーロッパで作られた『主権在民』型の国際体制なのだ」と指摘。今、中東では「主権在民 vs 主権在神」の戦いが起きていると見るべき、と主張した。

 そして、「残念ながら『イスラム国』に対処する妙案は思い浮かばない」とした加藤氏は、すでに世界規模で広がっている「イスラム国」によるテロが、さらに拡大することへの懸念を表明。「なぜなら、彼らはサイバー空間に過激な思想を永久に残してしまったからだ。今後、それに鼓舞される形で、新たなテロが起こる可能性が、多くの国にあるのだ」と表情を曇らせた。

なぜ、ダビデの星の前で……

 続けて柳澤氏が、「今回の邦人人質事件では、細かな点に着目した検証が、ぜひとも必要だ。『1月17日の安倍首相のエジプトでの中東支援表明がなくても、この事件は起こり得た』という声もある。確かに、そういう展開になったのかもしれないが、『イスラム国』に2人の日本人が拉致されていることを、遅くとも昨年(2014年)12月には知っていた以上、その2ヵ月の間に(安倍首相が)どういうことを行ったかを、十分に検証しなければならない」と切り出した。

 柳澤氏は、安倍首相が、1月20日にイスラエルで行ったスピーチにも問題があったと指摘する。「身代金要求を受けて、安倍首相はイスラエルで演説し、日本の中東支援は『人道支援』だと強調して人質解放を求めたのだが、なぜ、日の丸の旗と(『イスラム国』が忌避する)ダビデの星の旗(イスラエル国旗)が並ぶ前に立ったのか。『イスラム国』へのメッセージ発信としては、これは賢くなかった」

 そして柳澤氏は、1月17日の安倍首相の演説と、人質殺傷事件は無縁ではなかったとの認識を、こう改めて表明した。

(…会員ページにつづく)

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  1. 自他ともに厳しい富澤さん、面白い! より:

    冨澤暉さんのお話、大変面白く拝聴しました。人の命を守る視点を貫き、現実的で、他の人との対話に開かれたお話で、面白く拝聴しました。経済学者の森嶋通夫さん、高坂正堯さんとも議論されてきたんですね。謙遜されていましたが、防衛の専門家としてだけでなく外交はじめ他分野にも幅広く関心をもたれているように思いました。

  2. @55kurosukeさん(ツイッターのご意見) より:

    「僕がテロリストだったら、原発を狙う」―東京外大・伊勢崎賢治教授らが日本での「原発テロ」に警鐘~米国の海外最大の軍事拠点“日本”を狙えば米軍の弱体化に有効であることを示唆 http://iwj.co.jp/wj/open/archives/232897 … @iwakamiyasumi
    戦争×原発、最悪の組み合わせだ。
    https://twitter.com/55kurosuke/status/604403255293005824

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