「日本が平和で繁栄して、ここまで来られたのは、平和憲法があるからこそ。その日本が、憲法9条を壊そうとしていることは理解できない」──。
冒頭で記したこの発言は、日本人によるものではない。母国の現状を憂慮するアフガニスタンの医師、レシャード・カレッド氏が口にした、日本の安保法案に対する疑問だ。
2015年9月10日、東京都千代田区の参議院議員会館で、「安全保障法制に反対するNGO 国際共同声明」の記者会見が行われた。2001年に米軍と連合軍がアフガニスタンに入った時、唯一、日本だけが軍隊を送らず、医療や教育分野で無償協力をしたことを強調し、「多くの国が日本に期待しているのは、軍事的な支援ではなく、平和的で信頼に基づいた国際協力だ」とカレッド医師は訴えた。
弁護士で、ヒューマンライツ・ナウ事務局長の伊藤和子氏は、「国際共同声明への多くの賛同は、日本のNGOが『非戦』という日本国憲法の精神にもとづいて、さまざまなネットワークを構築し、信頼を築いてきたからである」と述べ、こう続けた。
「そこには、これまで海外で一度も暴力的手段に出ることなく、憲法9条のもとで平和に貢献してきた日本の、基本的なあり方に対する信頼が背景にある。だからこそ、みんな安保法案に反対している」
「国際共同声明」を読み上げた、日本国際ボランティアセンター(JVC)代表理事の谷山博史氏は、「この声明は、日本人だけの訴えではない」と断じた。
「この法案が成立すれば、軍事化、暴力化する世界の動きを加速する」と、日本の「変化」が国際社会に大きな影響を与えることを指摘し、警告したうえで、「平和憲法を持つ日本に、そんなことをしてほしくない、という国際市民社会の訴えを政府に届けたい」とした。
日本政府が、集団的自衛権行使を容認する理由に、自衛隊がNGO職員など海外の邦人を救出することを想定した「駆けつけ警護」を挙げている点について、IWJ記者は「NGO職員は(自分たちが)いい口実に使われている、という認識なのか」と質問した。
それに対して谷山氏は、「現地にNGO職員はほとんどいない」と驚きの事実を明らかにし、「NGOはダシにされている」と断じた。
「政府は、海外で活動する日本のNGOを助けるため、とNGOをダシに使っている。実際には、自衛隊による救出は現実的ではない」
9月19日未明、安保法制が参院で可決。そのわずか3時間後には、南スーダンでの自衛隊の武器使用基準が緩和されると報じられた。用意周到な発表と報道である。安全法制法案が可決されたとはいえ、法として施行されるのはまだまだ先のことで、それなのにその前に既成事実が着々と積み重ねられていこうとしている。
しかし、実際には、現地には「守る」べきNGOが存在しない。これは皮肉な事実ではないか。法案可決の5日前に開かれた貴重な記者会見の内容を以下、詳しくお伝えする。
【特別寄稿】安倍首相の「人道支援」発言とNGOの軍事利用 ― 救援者、それともCIAスパイか? ―(米川正子 元UNHCR職員・立教大学特任准教授)
http://iwj.co.jp/wj/open/archives/tag/cia