「戦後70年、東アジアフォーラム ―過去・現在・未来―」と題したシンポジウムが2015年8月14日(金)、日本教育会館一ツ橋ホールで開かれた。恵泉女学園大学名誉教授の内海愛子氏らの講演に続き、4つの課題別にシンポジウムが実施された。
その内の一つ「『積極的平和主義』で失うもの」では、安倍政権が強行に進めようとする安保法制について、「フォーラム平和・人権・環境」の藤本康成氏の進行により、3人の登壇者が議論を交わした。
登壇者の一人、日本国際ボランティアセンター(JVC)の谷山博史氏は、「(安部内閣は)駆けつけ警護を錦の御旗のように掲げて、『日本の人たちを守るために、汗水たらして頑張って働いているNGOを救うために、自衛隊が活躍します』と言うが、これは一つのレトリック。私達(NGO)は出汁に使われた」と、厳しく断じた。その上で、「自衛隊が法人、海外NGO、国連部隊を救出するために駆けつけ警護を行うことは、極めて非現実的」と主張した。
同じく登壇者の一人であるWORLD PEACE NOW実行委員の高田健氏は、現在下降を始めたとは言え、それでも支持率30%台を保持する安倍政権に疑問を呈した。その上で、「アベノミクスと安倍内閣の特徴的なナショナリズムが根強い支持を得ている」と推察し、「極端なナショナリズムに支えられた安倍内閣の危険性」を訴えた。
韓国のNGO参与連帯協働事務所長の朴正恩(パク・チェンウン)氏は、「日本が戦争できる国になるということは、朝鮮半島の分断構造に一番大きな影響を及ぼす。日本の問題は朝鮮半島の問題」との懸念を表明。その上で、「アメリカは、韓国の海軍と自衛隊の円滑な相互運用を狙っている」と主張した。
- 基調報告 内海愛子氏(恵泉女学園大学名誉教授)
- 記念講演
- ウタ・ゲルラント氏(ドイツ「記憶・責任・未来」財団理事会アドバイザー)「ドイツは過去とどう向き合ってきたか」
- 徐載晶(ソ・ジェジョン)氏(国際基督教大学上級准教授)「アメリカの東アジア戦略と日韓関係」
- 分科会
- 閉会集会 ―市民社会がつくる平和―
NGO撤退後に、自衛隊の任務拡大、武器使用基準が緩和?――「平和主義に基づき日本のNGOが築いてきた信頼が崩れてしまう」
谷山氏は、8月11日の安保法制特別委員会で共産党の小池晃議員が、自衛隊が安保法制の成立を前提にした任務の拡大を検討しているという内部文書を暴露したことに触れた。その上で、自衛隊が海外で駆けつけ警護を行うことは、極めて非現実的であると主張した。
「その資料によれば、自衛隊はPKO派遣している南スーダンで駆けつけ警護ができるようにするために、どう通達を改正するか、どう教育を進めて行くのか等について報告されている。
安保法制が成立した場合は、新しいPKOが派遣されることを待つまでもなく、今現在南スーダンに駐在しているPKOの任務がそのまま拡大する。そして、武器使用基準が緩和されて、武装勢力に対して戦闘行為を行う。
しかし、自衛隊は本当に法人、海外NGO、国連部隊を守り、救出するために駆けつけ警護を行えるのか。私達は極めて非現実的であると思っている。
2013年、南スーダンで大統領派と反大統領派の内紛が勃発。それぞれに所属する部族なども相乱れて内乱状態になった。その中に外国人や日本のNGOも巻き込まれていった。
そこに自衛隊も私設部隊を派遣していたが、自衛隊は駆けつけ警護ができないので動くことはできない。しかし、他の国の部隊も一歩も動いていない。なぜなら内乱状態で誰が敵か味方かわからない。そんな中で外国軍が入っていて、撃とうものなら大変なことになる。
そんなことはできないことがわかっていて、(安倍内閣は)駆けつけ警護を錦の御旗のように掲げて、『自衛隊が活躍します。日本の人たちを守るためです。汗水たらして頑張って働いているNGOを救うためです』と言うのは、ひとつのレトリック。私たちは出汁に使われた。
自衛隊が南スーダンで駆けつけ警護を実施することはない。なぜなら、紛争危険地域だとして、日本のNGOは撤退させられたからだ。
そんな所で、NGOを守るための駆けつけ警護を法制化したらどうなるか。自衛隊は任務を拡大し、市民の立場で活動しているNGOは入国できないことになったら、これまで 平和主義に基づき、非軍事の政府と連携しながらやってきた日本のNGO団体が築いてきた現地の人との信頼関係は崩れてしまう」 (IWJ・青木浩文)
「安倍内閣のナショナリズムを日本の民衆は克服できるか」