【安保法制国会ハイライト】防衛省が「8月に法案成立」を前提に運用計画検討!? 自衛隊を「軍」と明記!? 内部資料を小池晃議員が暴露!「まさに戦前の軍部の独走」 2015.8.12

記事公開日:2015.8.12取材地: テキスト
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(佐々木隼也)

特集 安保法制

 日本はシビリアンコントロールが崩壊していたのか。2015年8月12日、共産党の小池晃議員が暴露した「自衛隊内部資料」をめぐり、国会が紛糾。中谷元防衛大臣は答弁できずに審議がストップする事態が起こった。

 小池議員が暴露した資料は、 日米防衛協力指針(ガイドライン)および安全保障関連法案を受けた今後の方向性」と題し、最も早いパターンとして「8月に法案成立」「2月ころに法施行」としている。作成したのは防衛省「制服組(自衛官)」を主体とする統合幕僚監部で、作成日時は、まさに安保法制が衆議院で審議入りした5月末。小池議員が独自に入手したという。

小池議員が入手した内部資料(しんぶん赤旗HP)】

資料を手に質問する小池議員

 資料ではさらに、陸上自衛隊が派遣されている南スーダンPKOについては、2月の法施行に合わせて「新法制に基づく運用」に移行することが明記され、新たな任務として「駆け付け警護」(※)の可能性にも言及している。

(※)「駆け付け警護」とは、自衛隊が他国軍やNGOなどの民間人が危険にさらされている場所に駆け付け、「武器を使って」救出すること。

 南スーダンPKOは先週8月7日に、派遣期間を今年8月末から半年間延長が閣議決定されたばかり。しかし資料によると、5月末の時点で半年間の延長どころか、2月からの「新たな運用計画」についても国会での議論を経ずに練っていたことになる。

 中谷大臣は「(資料の)真贋(しんがん)や位置付けについて、即答するのは困難」と答弁を避けつつも、「国会の審議中に法案の内容を先取りをするようなことは控えなければならない」「中身の運用や検討は当然、法案が通った後の作業になる」との認識を示した。

 他にも資料には、 4月下旬に改定された「日米軍事協力の指針」(新ガイドライン)で新たに設けられることになった「同盟調整メカニズム(ACM)」(※)内に、運用面の調整を実施する「軍軍間」の調整所が設置されることが明記されている。

 新ガイドラインの具体化については、国会でもまだ議論されていない。小池議員は「『軍軍間』ってなんですか? 自衛隊と米軍ですか? 自衛隊はいつから軍になったんですか? 『軍軍間の調整所』なんていうことは、ガイドラインにも法案にもない文章なんですよ?」と厳しく追及した。

  法案成立を前提とした自衛隊の部隊編制の検討や計画は、中谷大臣が答弁したように「法案が通った後の作業が当然」である。もし中谷大臣や安倍総理がこうした検討や計画を「知って」いたとしたら、国会を軽視していたことになる。また「知らなかった」とすると、シビリアンコントロール(文民統制)が機能せず、まさに「軍部の独走」がまかり通っていたことになる。いずれにせよ、大問題だ。

 ここへきて窮地に追い込まれた、安倍政権。18日から再開を目指している国会審議で、どのような答弁をするのか、国民の注目が集まる。

 以下、8月12日の小池議員の質疑から、内部資料に関する部分の全文文字起こしを掲載する。

(※)「 同盟調整メカニズム」とは、 自衛隊と米軍の「運用面での調整」「共同計画の策定」を行う事実上の日米統合司令部。 これに合わせて日米両政府は、米軍幹部を自衛隊の最高司令部である防衛省の中央指揮所に常駐させる方向で検討している。

 今、国会の議論の外、日本の法律の外で日米の軍事「一体化」が進んでいる。統合幕僚監部は、6月の防衛省設置法改正で大幅に権限が強化された。憲法学者で学習院大学教授の青井未帆氏は、同盟調整メカニズムと防衛省設置法改正によって、自衛隊の主体性が失われ、日本の安全保障政策が実質、米軍によってコントロールされることを懸念する。

 「『制服組』(自衛官)が実際の知識を持っているんです。米国とデータを共有しているので、事実上の指揮権が日本にあるとは考えられない。米軍の制服組を中心に決定されていくことになるのではないか、ということです。専門家である制服組の意見に政治がどう異論を挟めるでしょうか。そう考えると、NSC(国家安全保障会議)での議論が形式的なものになる可能性が高い」

【7月8日の岩上安身のインタビューより】

8月12日参議院特別委:小池議員の「内部資料」に関する質疑全文文字起こし

質疑動画(共産党HP)】

小池晃氏「本日は、新たな資料をお示しをいたします。これは統合幕僚幹部の、私どもが入手した内部文書であります。これは、『ガイドラインおよび平和安全法制関連法案について』ということで、5月の末に作成されたようです。

 4月27日に、日米両政府は、日米防衛協力のための指針、以下新ガイドラインとしますが、これ18年ぶりの再改定に合意しました。

 新ガイドラインは、集団的自衛権行使、米国などに対する武力攻撃への共同対処を明記するとともに、アジア太平洋地域およびこれを超えたグローバルな協力を打ち出して、地球規模で自衛隊が米軍に協力をし、従来の戦闘地域にまで行って、軍事支援をすることを謳っている。

 これは、日米安保条約の実質的な改定であって、地球規模の軍事同盟への根本的転換だと思います。こういう大転換を国会での法案審議が行われてもいないのに、アメリカに誓約してきた。

 これは、日本の独立と主権をないがしろにする異常な対米従属の姿勢だというふうに言わざるを得ません。

 資料の二枚目を見ていただきたい。

 ガイドラインと平和安全法制関連法案の関係にかかる概念イメージとして、ガイドラインの記載内容に、現行法制下で実施可能なもの、現行法制に加えて、SDC文書と言われる別紙文書が必要なもの、そして、安保法制成立後に実施可能となるものがあることが明示されております。

 で、図表の下に、これ全部、プレゼンテーションの原稿が書かれてるんだと思うんですが、この説明文書のなかに、こうあります。

 『ガイドラインの記載内容については、既存の現行法制で実施可能なものと、平和安全法制関連法案の成立を待つ必要があるものがあり、ガイドラインのなかでは、これらが区別されることなく記載されている』と。

 これね、本当に率直に書かれているんですね。

 で、大臣。法案が成立しなければ実施できない内容を国会で議論もしないうちに、日米合意し、発表したことになる。そういうことですね?」

中谷防衛大臣「はい。まあ、あの、この資料につきましてですね、突然のご指摘でございまして、ご提示をいただいている資料がいかなるものかは、承知をいたしておりません。

 また、提示の資料につきましては、少なくとも防衛省といたしまして、これまで公表した資料にあるとは承知をしておりません。

 どういった経緯によって入手されたものか、明らかでない限りは、真贋や位置づけについて、即答することは困難でございます」

小池「この文書、存在、確認してください。じゃあ。すぐにそれ、確認してください」

委員長「速記止めてください」

・・・・・・・・・・・・

委員長「ただいまから、我が国及び国際社会の平和安全法制に関する特別委員会を再開いたします。休憩前に引き続き、我が国及び国際社会の平和及び安全の確保に資するための自衛隊法等の一部を改正する法律案及び国際平和共同対処事態に対して、我が国が実施する諸外国の軍隊等に対する協力支援活動等に関する法律案、の両案を一括して議題とし、質疑を行います。中谷大臣」

中谷「はい。まあ、事前の通告なくですね、提出された資料でございまして、確認するのに時間がかりましたけれども、同じ表題の資料、これは存在をいたします。

 ただ、示された資料と同一なものなのか、いろいろ文言も書かれておりまして、細部まで、これ確認、特定するには、多少時間がかかるということでございますが、同じ表題の資料、これは存在するということでございます」

委員長「小池君」

小池「こういうですね、ガイドラインと法案の関係を示す重大な文書ですよ、これ。根幹問題ですよ。それをね、大臣が知らないってこと自体が私はこれ、大問題だと思うんですよ。

 でね、結局ね、この内部文書、私、大問題だと思ってるのは、内容で言うと、その次のページですが。この統幕内部文書、ガイドライン及び平和安全法制関連法案を受けた今後の方向性と、なってるわけですよ。

 まだね、国会で審議の真っ最中ですよ。

 それを受けた今後の方向性を、統幕が議論してるってわけですよ。大臣ね、統合幕僚幹部がすでに、新ガイドライン、法案を受けた今後の方向性の検討に入ってることをご存知でしたか?」

中谷「はい。まあ、あの、どういう経緯によってですね、入手されたものか、明らかでない限りですね、この内容について、即答するのは、困難でございますが、防衛省といたしましては、やはり法案、これの審議、これがまず第一でございまして、今、部内で実施していることは、法案の内容を十分に研究、分析しつつ、現場の隊員にもよりよく理解をしてもらうということが重要でございまして、国会の審議中にですね、法案の内容を先取りをするようなことは控えなければならないものだと考えております

委員長「小池君」

小池「これは、法案の説明じゃないんですよ。今後の方向性ですよ。こういったことをね、議論してるかどうか、これはね、私は答えられるはずだと思う。答えていただきたい」

委員長「中谷大臣」

中谷「はい。あの、この安保法案につきましては、国会の審議が第一でございますし、また、法案が成立した後ですね、これは検討を始めるべきものでございます。ガイドラインにつきましては、今年4月にですね、日米間で合意をしたものでございますので、この内容について、検討をするということは、これは当然のことだと思っております」

委員長「小池君」

小池「あの、今、大臣は、法案が成立してから検討すべきものだとおっしゃった。だとすれば、統幕でこういう検討をしてれば、大問題じゃないですか。これはどうされるんですか?」

委員長「中谷大臣」

中谷「まあ、法案の中身まで、これ踏み込んでいるかどうか。おそらく、一般的に法案に書かれたことの、理解だと思いますが、まあしかし、ガイドラインにつきましては、今年の4月にですね、日米間で合意をし、公表されたものでございますので、これについて、中身を検討するということは、防衛省の中としては、当然のことだと思っております」

委員長「小池君」

小池「そうじゃないんですよ。これはガイドライン及び関連法案を受けた今後の方向性ですよ。ね?そのことを実際に検討してたということを知らなかったんですね?じゃあ。大臣は」

委員長「中谷大臣」

中谷「はい。まあ、あのガイドラインについては、これはもう合意されたことでございますので、検討はしてもいいと思いますが、法案につきましては、現在、参議院で審議中でございますので、中身の運用とかの検討におきましては、これは当然、法案が通った後の作業になるわけでございます。

 まあしかしながら、この法案の中身は、どのような内容であるのか、これは当然、担当官庁の職員としては、十分認識をするのは当然のことでございまして、この法案の中身、内容等については、当然、この組織としてはですね、検討するのは当然のことだと思っております」

委員長「小池君」

小池「ぜんぜん答えになってないです」

委員長「速記止めて」

・・・・・・・・・・・・・・・・・

委員長「小池晃君」

小池「あの、大臣はさきほど、その法案成立後に検討するんだったらいいけども、中身を前もって検討することはおかしいというふうに認められたんですが、この中身ね、ちょっと見てくださいよ。

 例えば、その次のページ。これはですね、新ガイドラインで新たに設けられることになった同盟調整メカニズムACMが、これ常設になることが明記されているんですね。

 ACM内には運用面の調整を実施する軍軍間の、軍軍間調整所が設置される。

 軍軍間ってなんですか?自衛隊と米軍ですか?自衛隊はいつから軍になったんですか? こんなね、軍軍間の調整所なんていうことは、ガイドラインだってこんな文章ないんですよ?法案だってないんですよ。

 だから、大臣ね、さきほどおっしゃったけども、これまさに法案が成立する前提で、その後のことを検討してる文書じゃないですか。一番、端的なのは最後のね、日程表ですよ。

 これ、見てくださいよ。5月のところに、現時点とちゃんと書いてある。で、8月に法案成立と書いてあるわけですよ。で、1月にキーンエッジ、これKE16ってたぶんキーンエッジ16でしょう。

(注)キーンエッジとは日米共同統合指揮所演習(<キーンエッジ>「鋭い刃」)のこと。

 それを受けて、2月から法施行って書いてある。で、他にもですね、例えば、PKOのところを見ますとね、これ、九次隊が出発をして、年明けの2月からは新法制に基づく運用すると。

 ということは、南スーダンPKOを年明けから、今度の法制に基づく運用するって書いてあるわけですよ。そんなこと、どこで議論しましたか?

大臣ね、こんな検討をしてるということが許されるんですか?どうなんですか?」

委員長「中谷大臣」

中谷「はい。まあ、あの、今日、突然のご指摘でございますので、ご提示いただいている資料が、まあ、いかなるものか、コメントは差し控えたいと思いますが、そのうえで申し上げますが、97年のガイドラインの下での計画検討作業については、包括的メカニズムを通じて、主として自衛隊と米軍の間の組織である共同計画検討委員会、BPCにおいて行なう一方、日米安全保障協議委員会2×2が下部組織である防衛協力小委員会SDCの補佐を受けつつ、方向性の提示、作業の進捗の確認などについて、責任を有してきたと。

 新たなガイドラインの下でも、共同作業の策定について、共同計画策定メカニズムを通じて行なうことになりますが、ガイドラインに明記されている通り、日米の2×2が引き続き、同様の責任を有することには変わりなく、まあ、このご指摘には当たらないと、まあ、あくまでもガイドラインの合意に基づいた検討でございます。

 それから、スーダンのPKO、UNMISS(国連南スーダン共和国ミッション)についてはですね、宿営地の共同防衛にかかる武器使用の権限は、法律の施行後に伴い、行使可能となる権限、よって、スーダンPKOにおいては、当該の権限は法律の施行に伴い、行使することができるということでございまして、教育訓練等も含めて、必要な事項の取り扱いは、法案成立後に検討すべきことでございます。

 それから、この資料、確たることは、まだ申し上げられませんが、この中でですね、平和安全法制関連法案の成立を待つ必要があるものについては、法制が成立して以降、施行されて以降ですね、実施をするということでございまして、あくまでも、これはガイドラインに対する検討でもありますし、また、防衛省としては、法案の内容、内容を十分に分析研究しつつ、隊員によく理解してもらうという上での検討だと認識しております」

委員長「小池君」

小池「これね。まったくね、今の説明、なってないんですよ。例えばね、PKOだって、延長を決めた閣議決定、先週の金曜日じゃないですか。ね?先週の金曜日に閣議決定したんですよ。

 だから、8月の末に終わる予定だったわけじゃないですか。それがもう、九次隊ということで書かれているわけですよ。それが、新法制のもとで運用するって書いてあるわけでしょ。

 それから、ガイドラインの具体化だって、これをSDCのね、文書を発出して、もうガイドライン、要するに今の答弁で言うと、防衛協力小委員会の文書作成も始まってるってことですね?

 そして、法案成立前に、基本計画修正するということも、この後、下のほうには書かれているわけですよ。これ、すべて法案、もう成立を前提とした克明な自衛隊の部隊の編制の計画まで含めて出されているじゃないですか。

 こんなことはね、戦前の軍部の独走ですよ。こんなことは絶対に許されない。こんなものが出たままでね、議論なんかできないじゃないですか。この法案の。

もうこの法案、撤回するしかないですよ。これは、ちょっと止めていただきたい。はっきりさせていかないと、これ以上、議論できない」

委員長「止めてください」

・・・・・・・・・・・・・・・・・・

委員長「速記起こして。暫時、休憩いたします」

・・・・・・・・・・・・・・・・・・

委員長「我が国及び国際社会の平和安全法制に関する特別委員会を再開いたします。本日は、これにて散会いたします」

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