「若者が立ち上がった。中年も、お母さんも、そして学者も。次は報道が立ち上がる番だ!」--。
衆院特別委員会で強行採決された安保法案に反対する「学者の会」と「日弁連」が、2015年8月26日、同日18時から行われる抗議集会に先立ち、東京・霞ヶ関の弁護士会館で共同記者会見を行った。記者会見には、法曹関係者と、全国約100大学の教授が集まった。
「安保法案廃案!」「立憲主義を守りぬく!」と声をあげ、「違憲」「廃案」とプラカードを掲げた。
学者の会の正式名称は、「安全保障関連法案に反対する学者の会」。賛同学者・研究者人数は、8月26日9時の時点で、13,507人にのぼる。一般市民の賛同者は、同時点で、28,947人だ。
日弁連は、「日本弁護士連合会」。日本全国すべての弁護士・弁護士法人が日弁連に登録する。村越進会長は、「安保法案が成立すれば、国家権力に対する歯止めがなくなり、人権を守ることができなくなってしまう。全国の弁護士の方々とは、その一点で一致して、行動を起こした」と述べた。
21人の法曹界の元トップたちが安倍総理に「NO」
会見では、21名の法曹関係者・学者が、安保法案廃案への熱い思いを語り、安倍政権への怒りをあらわにした。
元最高裁判事の濱田邦夫氏は、今回の「戦争法案」について、「9歳の少年のときに戦争の惨禍を見た自分としては、到底許せない」と断言した。
同じく元最高裁判事で、今回は出席のかなわなかった那須弘平氏は、代読された発言の中で、「日本の憲法は、たくさんの兵士や国民の犠牲の上に作られた。そのエッセンスが憲法前文である」と語り、「戦争の犠牲者に、憲法の誓いを果たしたと、胸を張って言えるのか。政治家よ、自身の良心に問え」と厳しく問うた。
元内閣法制局長官の大森政輔氏は、昨年7月の閣議決定の際に安倍首相が自ら「憲法解釈には理論的整合性と法的安定性が必要」と述べたことに触れ、「歴代の内閣が集団的自衛権は違憲としてきたのを閣議決定で覆すことは、法的安定性を害している。つまり、そのような閣議決定による憲法解釈の変更は成り立ち得ないことを自ら証明している」と述べ安倍政権の矛盾をついた。
また、同じく元内閣法制局長の宮崎礼壹氏も、「集団的自衛権を認めないことは歴代内閣の一致した見解。内容的にも手続き的にも立憲主義に反する」として、安保法案廃案を求めた。
創価大教員「池田大作先生が築いた日中関係をぶち壊すのか」
東京大学名誉教授の上野千鶴子氏は、「大学人というのはこんな抗議行動をしないものと思われているが、大学の危機、学問の危機を切実に感じて、大学人だからこそ行動した。共に立ち上がれたことを心から嬉しく思っている」と発言した。
6月4日の衆院憲法審査会で安保法制を「違憲」とした、早稲田大学教授の長谷部恭男氏は、「この問題に関する政府・与党の発言は、苦し紛れの言い逃れにすぎない」と吐き捨てた。
早稲田大学の水島朝穂教授は、今年4月に自衛隊統合幕僚監部によって作成された内部資料に「安保法制は8月中に成立、2月に施行」と書かれていた問題に関連して、「制服組は過去にも問題を起こしている」と述べた。
「1965年に、いわゆる『三矢作戦研究』といって、87件の戦時立法を2週間で決めるということを、制服組だけで決め、法案成立のための精密なシミュレーションまでやっていた事実が国会で明らかにされたことがある」
そして、このたび共産党の小池晃議員の国会質問で明るみに出た、統合幕僚監部作成の内部資料について、「外務省の一部や政治家の中の好戦的な部分がくっついて動かしていると見ている。安倍内閣のもとで、ミリタリーな考えをダイレクトに反映させるチャンネルやルートが動き出している」と分析した。
創価大学教員の佐野潤一郎氏は、「もう疲れた。早く教育の現場に戻りたい」と嘆きつつ、「でも日本の将来が不安でそれができない」と、安倍政権の武力拡大を批判。また、中国を仮想敵に仕立てる安倍政権のやり方を、「創価大学創始者の池田大作先生がずっと築いてきた、日本と中国の関係をぶち壊しにするようだ」と怒りをあらわにした。
地方大学の参加者の中からは、名古屋大学名誉教授の池内了氏が発言した。池内氏は、防衛省が安全保障装備開発研究推進制度のもとに大学の軍事協力を推進しようとしていることに言及。「軍と学の協働」が、法案成立以降も進んでいくであろうと推測し、「法案の廃案を第一歩として、日本の軍事化路線に抵抗していかなければ大変なことになる」と、危機感をあらわにした。
産経記者の悪意ある質問に失笑とブーイング
今回の記者会見では、弛緩したメディアへの批判も目立った。