新潟・泉田知事、川内原発へのコメントは控えるも新規制基準の「安全確保」に問題があると指摘、柏崎刈羽の再稼働「議論できない」 2014.10.15

記事公開日:2014.10.28取材地: テキスト動画
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(IWJ・藤澤要)

 新潟県の泉田裕彦知事が10月15日(水)、東京有楽町の外国特派員協会で記者会見を開いた。泉田知事は、原子力規制委員会の新規制基準に関して、「安全性確保」に問題があると指摘。「(福島第一原発事故の)検証総括がされない中で、新規制基準が作られていることに懸念をしています」と述べた。

 泉田知事は、実施が近いと言われる鹿児島県川内原発の再稼働に関して直接言及することはなかったが、新潟県知事として柏崎刈羽の再稼働については「議論ができない」という立場を強調。東京電力が福島第一原発のメルトダウンを2ヵ月以上にわたって隠し続けていたことを挙げ、東京電力が原発運転にふさわしい組織であるのかを疑問視。「ここの議論なしに再稼働の議論はできないと思います」と話した。

 九州電力川内原発が立地する鹿児島県薩摩川内市議会では、28日午前に臨時議会が開かれ、川内原発の再稼働に賛成する陳情を採択。同日午後、岩切秀雄薩摩川内市長が、再稼働に同意を表明した。原発が立地する自治体による初の再稼働同意となる。

 原発再稼働には立地する地元の同意が必要とされる。ただ、「立地地元」の範囲をめぐっては、政府による明確な規定はない。鹿児島県では、県と薩摩川内市だけをその範囲としている。

 鹿児島県では、県議会の「原子力安全対策等特別委員会」で再稼働の陳情が採択される予定。11下旬には、臨時県議会で採択される見方が濃厚だ。

 しかし、原発から半径30キロ圏内にあるいちき串木野市や日置市では、地元同意の範囲に含めるよう、鹿児島県の伊藤祐一郎へ意見書を提出している。

■ハイライト

原子力規制委員会の責任回避体質

 泉田知事によれば、原子力規制委員会は「自らの所掌事務」を縮小させている面がある。原子力規制委員会は、原子力利用の安全確保を目的に設立。しかし、実態は「規制基準の適合性を調べているだけ」というもの。「IAEAの深層防護の基準の全部を見ているわけではありません」と泉田知事は続けた。

 原子力規制委員会が設立された主旨と活動実態がかけ離れている原因について、泉田知事は田中俊一委員長の運営姿勢に言及。「現場の避難の責任を持つトップともコミュニケーションしてくれません」と述べた。

 原発立地自治体との意思疎通を拒む規制委員会の閉鎖性は、過去の経験が政府の施策に活かされない弊害を生むものだと、泉田知事は指摘。現状では一般の市民と同じようにパブリックコメントを出さざるをえないが、なお「まともな回答」を受け取っていないと訴えた。

 「事故は起きる、という前提でどう対応するかということよりも、責任をどう回避するかということで委員会を運営しているのではないか」。こう思われると、泉田知事は述べた。

東電への疑念「再稼働の議論はできない」

 質疑応答では、「川内原発の再稼働に関しては立場上コメントを差し控えたいとお考えだろうが、一般的な話として(安全基準や避難計画に関する)懸念があるから、再稼働が進んでいかないと考えるか」と質問があった。

 泉田知事は、川内原発に関しては言及せず、「再稼働の話をすると福島の事故の検証が後回しになってしまう」と返答。事故検証がないうちは、原発運転に関する東京電力の適格性に疑問が残るため、柏崎刈羽原発の再稼働については一切の議論はしないと、これまでの立場を貫いた。

 泉田知事は、日本全体の原子力再稼働をどうするかという一般的な議論をする立場にはないとした上で、新潟県知事として柏崎刈羽原発の再稼働に関しては「議論はできない」という考えを次のように強調する。

 「柏崎刈羽に関していえば、メルトダウンというたいへん重要な情報を隠す組織が原子力発電所を運転する資格があるのかどうか。この点が先であって、ここの議論なしに再稼働の議論はできないと考えています」

新規制基準は「世界最高水準の規制ではない」

 田中委員長が一貫して「世界で最も厳しいもの」だとする日本の規制基準に対する見解を求められた泉田知事は、まず、「新潟県知事なので、柏崎刈羽原発との関係でどういうことになっているのかという評価で発言している」と回答。

 その上で「日本の新規制基準はIAEAの深層防護の基準、第5層がそっくり抜けていますし、4層についても不十分」と指摘。「世界最高水準の規制ではない」との見解を示した。

「問題があるところに口をつぐむことは、歴史に対する冒涜」

 ある記者からは、泉田知事の主張は理にかなったものであり、もっと多くの賛同を得てもいいはずだ、という意見が出された。他の原発立地自治体に比べ、泉田知事だけが際立って国の原発政策に対して毅然とした態度で臨んでいるように見える。これはなぜかという質問に対して泉田知事は、「地震にともなう原発火災を経験している」と2007年の出来事を挙げた。

(…会員ページにつづく)

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「新潟・泉田知事、川内原発へのコメントは控えるも新規制基準の「安全確保」に問題があると指摘、柏崎刈羽の再稼働「議論できない」」への1件のフィードバック

  1. @55kurosukeさん(ツイッターのご意見) より:

    新潟・泉田知事、川内原発へのコメントは控えるも新規制基準の「安全確保」に問題があると指摘、柏崎刈羽の再稼働「議論できない」 http://iwj.co.jp/wj/open/archives/182361 … @iwakamiyasumi
    こういう知事をもつ新潟県民が羨ましい。それに比べ、わが愛媛の中村知事は・・。
    https://twitter.com/55kurosuke/status/527067835172790272

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