柏崎刈羽原発における東電の新規制基準適合性審査申請後からは初となる、泉田裕彦新潟県知事の定例会見が16日に開かれた。泉田知事の意向により、会見後には記者クラブ以外の記者も質問できるメディア懇談会も開かれた。会見の中継は記者クラブの許可を得られていないため、IWJはメディア懇談会の模様を中継。懇談会では泉田知事への質問も行った。
メディア懇談会でIWJは、新規制基準の適合性に係る審査の申請を、主要メディアが「再稼働申請」と誤解を招くような報道をしたことについて指摘。これに関する泉田知事の見解を質問した。
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- 日時 2013年10月16日(木)
- 場所 新潟県庁(新潟県新潟市)
「安全性を無視した誤解されるような見出し」
泉田知事は「まず、『再稼働申請』ではない。もっと言うと、『安全申請』でもない」として、「この(規制)基準をクリアすれば安全ですというものではない」と明言。規制基準について、「ちゃんと避難ができるのか、健康影響を及ぼす被曝を避けられるのかという観点ではなく、動かす側の事情しか考えていなくて、住民の影響をどう避けるかを全く考えていない、設備基準になっている」と切り捨てた。その上で、「『再稼働申請』という風に書くのであれば、安全性を無視して再稼働を進めたいと誤解されるような見出しではないか」と主要メディアの報道に対して疑問の声をあげた。
また、新規制基準適合性審査を条件付きで承認したことについて、今回の承認は「『条件付きの仮承認』というのが実態であって、なぜそうしたかといえば、原発立地地域に不安があった」と語り、「東電が、自分の設備に対して、安全性の確保について十分な自信が持てないという趣旨の発言をされていたので、他の設備を見ないでいいのか」ということから、「第3者である原子力規制委員会の審査も受けさせないのか、という声がありましたので、その声には向き合ったということだ」と補足した。
懇談会では、新規制基準適合性審査承認後も、これまで東電や規制委員会に対して指摘してきた知事の主張に変わりはないことが改めて確認された。
県技術委員会で独自の検証作業
会見では知事から、原発の安全管理において、県の技術委員会で福島原発事故の検証を課題別にディスカッションしていくことが報告された。
また、今後の運用が検討されているフィルターベント設備についても、技術委員会で調査チームを設置。立地自治体である柏崎市・刈羽村と、東京電力などで構成されたメンバーで検討していくとの方針が示された。チームのメンバーに東電も入っているということについては、「まず実態を把握するところから考えていこうということ」だと述べた。
ディスカッションで議論される課題としては、「地震動による重要機器への影響がなかったのか」、海水注入が遅れたことについて「海水注入の判断に誰が関わって、どういう判断がなされたのか」、事故対応のマネージメントについて「東京電力の意思決定が的確になされていたのか」、「(政府機関、自治体、本店などの)外部とのコミュニケーションはどうだったのか」、発表が2ヶ月以上遅れた「メルトダウン等の情報発信のあり方」、作業に関して「高線量下で原発対応できるのか」、事故対策として「シビアアクシデントが起きた時にどうするのか」といった内容が挙げられた。
フィルターベント設備に関する調査チームでは、「運用した時、健康に被害が及ばないように避難できるのか、ということも検証する」という。「今年度末にはディスカッションの成果をまとめたい」と、泉田知事は技術委員会における課題別の検証作業に意欲を示した。
「国や政府が進められていない課題を先取りして、実行している印象を受けるが」と、記者から技術委員会での検証作業における意識を問われた泉田知事は、「ここに挙がっている課題というのは、県民、もしくは国民の皆さまが原子力行政に対して信頼をおけない理由になっていると理解していますが、本来は先にやらなくてはいけないこと。利害関係があるとやりにくいのかもしれない」との認識を示した。
「日本に原発は必要だと思うか?」という記者からの質問には、「それは国全体で議論すべき課題。知事の役割というのは、県民のみなさんの生命や財産を守ること。それが知事のミッションになると思うので、まずそこをしっかりやっていきたい」と語気を強めた。
以下、メディア懇談会での会見要旨
フリー田中龍作 「現職官僚が書いたノンフィクション小説で『原発ホワイトアウト』に、「にいさき県」の「いずた知事」が出ているのですが、読まれた感触は」
泉田知事「小説だなぁという感じですね」
フリー田中龍作「いや、かなり、リアリティがあるのですが」