九州電力・川内原発の新規制基準適合に関する鹿児島県主催の住民説明会が10月10日、日置市で開かれた。原発立地である薩摩川内市に続き2度目の開催で、日置市民と鹿児島市の原発の30キロ圏内にかかる一部地域の住民が参加対象となった。
日置市は薩摩川内市に隣接しており、面積の約半分が事故時に避難が必要となる原発の30キロ圏内に含まれる。原発の過酷事故が起きれば、日置市も被害を避けられない。原発再稼働には地元の同意が必要条件とされているが、伊藤祐一郎鹿児島県知事は、「地元同意の範囲は県と薩摩川内市だけで十分」との姿勢を打ち出し、日置市などは「地元」の範囲から除外されている。
日置市議会は9月30日、地元同意の範囲に日置市も含めるよう県知事に求める意見書を可決したが、状況は変わっていない。
「新規制基準に適合すれば、30キロ圏内の住民が避難するような事態は起こらない、と言いきれるのか」――。
蚊帳の外に置かれる住民たちの不満は、10日に行われた住民説明会で表面化した。
- 場所 伊集院文化会館(鹿児島県日置市)
- 主催 鹿児島県(詳細)
「重大事故が起きた場合の責任は? 福島では誰も責任をとっていない」
説明会では、原発事故時の責任の所在について、質問が集中した。
一人目の質問者の女性は、「重大事故が起きた場合、規制委、鹿児島県が補償を含めて責任を持つのでしょうか。責任が九電にあるのであれば、九電による説明会は開かれないのでしょうか」と質問した。
規制庁は、「まずは原子力事業を行っている事業者に事故を起こさない責任がある」と回答。「審査を行ったことで、法令上求められている安全確保ができていることを規制委員会は確認しましたが、それでも事故が起きれば、国、県が協力して事故の拡大を防ぐことに全力を上げたいと考えています」と話した。
続く質問者は、先の回答に納得していない様子で、「交通事故なども、起こそうと思って起こすのではなく、偶然起きるものです。放射能で病気になったり、死亡した場合、誰が責任を取り、賠償するのでしょうか。事業者だと思いますが、福島の事故では事業者も県も国も、責任を取っていない」と重ねた。
規制庁は、「福島事故では東電が一義的に賠償していますが、責任を取れない部分は国が支援をしています」と応じたが、実際の賠償は迅速さに欠け、地域によって差が出ている。
「本当に地元同意は川内市と県だけでいいのか」
ある質問者の男性は、「福島では、地元住民のケアがされていません。川内原発で事故が起きれば、我々の生存権、居住権も脅かされる可能性があります。住民は絶対の安全を求めています」と前置きし、「新規制基準に適合すれば、30キロ圏内の住民が避難するような事態は起こらない、と言いきれるのでしょうか。再稼働について、鹿児島県知事は、『地元同意は川内市と県だけでいい』と言っていますが、手順の問題も規制委で意見を言うべきではないでしょうか」と迫った。
規制庁は、「『絶対安全』というのはできません」と回答。「これだけの対策をとっても、リスクゼロはできない。だからこそ、安全向上を求めています。できるだけの安全確保対策をする努力を、事業者も規制委も政府もやる、というのが日本の考え方で、世界的な考え方でもあります」と話した。
福島原発事故を経た上で、なお「努力します」でいいのか――。会場はどよめき、怒りの声が多く上がった。
「最高責任者である小渕優子経産大臣に来てほしい」
「今日話を聞いて、余計怖くなった」と話す質問者もあった。「福島事故の原因究明がなされていないのに基準が作られましたが、福島のような事故が起きて、魚も土地も汚染されるということが、川内原発でも起こり得るのでしょうか」。
規制庁は、「福島事故は究明されていないが、大筋の放射性物質の拡散のプロセスは把握しました。それに基づき、福島事故を起こさない基準はできた」と説明した。
東京出身で、現在、鹿児島市に住んでいるという女性は、「鹿児島市で説明会を開催し、公開討論会を行ってほしい」と要望。日置市在住の男性は、「最高責任者は総理、経産大臣だと思います。小渕優子大臣に来てほしい。それが道義ではないでしょうか」と訴えた。
予定された終了時間を30分近く過ぎても、会場では、質問を求める手が上がり続けた。9人の質問者全員が再稼働を不安視する立場を表明した。
不満を募らせた住民説明会「これで納得できる人はいないんじゃないか」
手を上げ続けながらも最後まで指名されなかった女性は、説明会の終了後、IWJのインタビューに答え、「福島原発事故が起こって3年半、まだ、『冷やす、止める、閉じ込める』ができていませんよね。その状態で、なぜ再稼働を急ぐのか、その理由を聞きたかったんです」と打ち明けた。