原子力規制委員会は9月10日、川内原発が「新規制基準」に適合しているとの審査結果を公表した。早ければ来春までに再稼働する見込みで、残すは地元の同意だけとされている。10月9日、鹿児島県と地元・薩摩川内市が、適合性審査の結果を住民に伝えるため、川内市内で説明会を開催した。
原子力規制庁がパワーポイントを用いて説明にあたったが、参加した住民からは「テロ対策ができていないではないか」「今日の説明ではわからない」「なぜ録音が禁じられているのかわからない」といった批判が噴出した。
(IWJ・原佑介)
原子力規制委員会は9月10日、川内原発が「新規制基準」に適合しているとの審査結果を公表した。早ければ来春までに再稼働する見込みで、残すは地元の同意だけとされている。10月9日、鹿児島県と地元・薩摩川内市が、適合性審査の結果を住民に伝えるため、川内市内で説明会を開催した。
原子力規制庁がパワーポイントを用いて説明にあたったが、参加した住民からは「テロ対策ができていないではないか」「今日の説明ではわからない」「なぜ録音が禁じられているのかわからない」といった批判が噴出した。
記事目次
■ハイライト
説明会の会場となった川内文化ホールでは、開場前から多くの住民らが列をなしていた。
受付開始を待つ列に並んでいた女性は、「川内原発は怖いでしょう。そんな怖いものを、福島の事故がまだ片付いていないのに、なんで急いで再稼働しなければいけないのかわかりません」と話す。
さらに、「火山は予知できません。霧島だって桜島だって活火山で、いつ爆発するかもわかりません。そのときに核燃料を持ち出すといいますけど、どこに持っていくかも決まってないでしょう。やることがめちゃくちゃですよ」と手続きの拙速さを批判した。
一方で、早期再稼働を期待する声もある。ある男性は「川内市民として、原発が稼働しないことには経済が大変なんじゃないかなぁと思います。(リスクへの懸念は)そんなにはありませんが、稼働しなければ経済が消耗して、逆に大変ではないでしょうか」と話す。
「(インタビューには)答えられない」と顔をしかめる住民も少なくない。「説明をきちんと聞こうと思ってきた」というお年寄りの男性は、原発については「難しくて言えないところもある」と言葉を濁し、足早に去っていった。
会場外では、小規模ながら反原発集会も開かれていた。
鹿児島市から来たという男性は、来場者に原発の危険性を訴えるチラシ配りをしていた。「(チラシは)あまり受け取られない。態度がはっきりしているという感じで、原発賛成派は受け取らない感じですね」。さらに男性は、鹿児島県民の内心について次のように話した。
「原発は問題だ、という意識は『3.11』から浸透してきましたが、自分の態度をはっきりさせる・させないとは別の話です。鹿児島特有というか、形を見てはっきりものを言わないところがあります。
今の規制庁、国、県、市の態度をみると、かなり(再稼働阻止は)厳しい局面だと思う。(御嶽山が噴火したが)火山への恐怖は別問題で、原発と結びつけて考えるのは、原発を問題に感じている人だけで、それ以外の人は、別問題だと思っているのではないでしょうか。それは御嶽山の噴火後も変わりません」
川内原発に対する地元住民の関心は高い。説明会開始10分前には、1200人を収容する会場は満席となった。
説明会で規制庁は、新規制基準が、これまでの基準から大幅に強化されたものであることを説明し、原子炉運用中に原子炉へ影響をおよぼすほどのカルデラ噴火が起こる可能性は少ない、などと現状を紹介。その上で、九州電力による原子炉設置許可申請は新規制基準に適合している、との結論を改めて提示した。
その後の質疑応答では、参加者から厳しい質問が続出した。核燃料の保管、管理や最終処分場の問題に関する地元の懸念は強い。
「使用済み核燃料の中にはプルトニウムがあり、数万年単位で管理しなければなりません。住民は不安に思っています」「再処理施策がない以上、使用済み核燃料は溜まる一方です。九電は、何本の燃料を貯めると想定しているのでしょうか。処理設備の場所も決まらず、ここに半永久的に押しつけられる可能性もあるのではないでしょうか」
規制庁の担当者は、「原子炉で使っている燃料も、やがては使用済み燃料プールに出さなければなりません。そこで使用済み燃料プールの空き部分が確保できなくなれば、運転はできなくなります。その間の安全性は確保されます」などと話し、使用済み燃料プールの健全性をアピールした。
しかし、根本的な「使用済み燃料の処理問題」について規制庁担当者は、「私は答えを持ち合わせていない」として回答できず、住民からは反発の声が上った。
テロや戦争など、外部からの攻撃を不安視する声もあがった。
「世界中で今、テロがすごい。テレビをつけるといつもテロの話です。最近では日本人もおかしくなってきていて、日本にも不満分子がいる。しかし、意図的な航空機の衝突の対応について規制庁は話していません。新規制基準でテロ対策は見当たらない」「テロ以外にも、近年、ロシアに隕石が降ったりもしましたが、ああいうことは、たとえ確率が低くても、当たってしまえば100%の脅威です。対応を具体的に教えてほしい」
規制庁は、「テロ対策は意図的な攻撃にも通じるもので、審査会合も非公開で開きました。事業者からも精密な図が提出され、資料は規制委内部でも一部だけ厳重に保管しています。説明できる範囲に限りがあります」と機密性を訴える。
その上で、「どんなテロにも耐えられるかというとそんなことはないので、できるだけの準備をすることが重要」だと述べ、「外からの攻撃、戦争などの場合は国民保護法などの別の法律があるので、発電所が狙われるときは、そうした法律で止めて対応してもらうことになっています」と釈明した。
隕石などの脅威については、「絶対安全には到達できないんだと思う。科学技術を使うには、必ず何らかのリスクがあるので、できるだけリスクを下げることが重要です」と従来の主張を繰り返した。
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