「ロシア=プーチン、プーチン=悪魔」
日本や米国、ヨーロッパ、いわゆる「西側」の報道だけを見ていれば、自然とこうした見方になってしまっている人も多いのではないだろうか。しかし、実際はどうか。ドイツ取材中のIWJ代表・岩上安身が9月16日、ライプチヒ大学を訪れ、「東側」の事情に詳しい、リヒター・シュテフィ東アジア研究所日本学科主任教授にインタビューした。
(取材・岩上安身、文・原佑介)
特集 IWJが追う ウクライナ危機
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「ロシア=プーチン、プーチン=悪魔」
日本や米国、ヨーロッパ、いわゆる「西側」の報道だけを見ていれば、自然とこうした見方になってしまっている人も多いのではないだろうか。しかし、実際はどうか。ドイツ取材中のIWJ代表・岩上安身が9月16日、ライプチヒ大学を訪れ、「東側」の事情に詳しい、リヒター・シュテフィ東アジア研究所日本学科主任教授にインタビューした。
記事目次
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■イントロ
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ライプチヒは、ドイツ東部ザクセン州に位置する、人口50万ほどの街である。古くから商業で栄え、19世紀には工業都市となった。出版社も多く、「本の街」でもあるとリヒター教授はいう。
バッハ、シューマンといった音楽家や、ゲーテ、ニーチェなどの詩人・学者を輩出した「文化の都」としても名高い。ライプチヒ大学は1409年、プラハ大学から当地に移住したドイツ人教師と学生らにより創設され、16世紀にはドイツ最大規模にまで発展。物理学、歴史学、心理学が有名で、森鴎外もここで学んだ。
リヒター教授はドイツが東西で分断されていたころの東ドイツに生まれた。共産圏の中で当時のソ連のモスクワ大学に進み、5年間、哲学を勉強した。80年から東ベルリンのフンボルト大学で日本語を学び、90年半ばには2年間日本に滞在し、うち1年間は東大で教鞭を振るった。
日本からは情報になかなか手が届きにくいウクライナ危機の問題。ゴルバチョフ元ソ連大統領は、「ウクライナの紛争はこのままでは欧州大戦になるかもしれない」と危機感をあらわにし、ローマ法王は、「世界はすでに第3次世界大戦の状態にある」と懸念を示した。
イラク、シリアやイスラエル・ガザの問題も含め、世界中で危機が高まっている。一見バラバラでも、リンケージしていくかもしれない。ひとたび戦争が始まれば、「同盟だから」という理由で全てつながる可能性がある。
米国、EU、日本などの「西側」の情報にばかり接している我々は、あまりロシアなどの「東側」の情報には詳しくない。東ドイツで生まれ育ち、モスクワの大学にも通っていたリヒター教授は、この状態をどう分析しているのだろうか。
「私も戦争になるんじゃないかという感じもありますが、正直、岩上さんがライプチヒにきてこういう話をしようと言ったときに、自分が何も知らないことに気がついて、やっと目が覚めました」
リヒターさんは今回のインタビュー前に、様々な友人に連絡を取り、学んだという。
「私の友人には、ロシアにずっと関心を持っている人がいます。その人によれば、EUやNATOのやっていることはひどい。私も、友人を頼りにして、知識を得なければいけないと思っています。岩上さんから連絡を受け、ウクライナ情勢について詳しい友人と連絡を取り、徹夜で勉強しました。一言で言って、ひどい状況になっています。西側のマスメディアの報じ方もひどい」
リヒター教授はメディア報道について、「プーチンがまるで悪魔のように描かれています」と述べ、情勢が「単純化」されていると指摘。また、「ナショナリズム」という問題が、ロシアでもウクライナでも、ヨーロッパでも日本でも、非常に重要になっている、と主張する。
「東ウクライナは、ロシア系住民が多い。石炭を掘る工業が盛んで、ロシア人というよりロシアから移動したウクライナ人がいます。しかし、ドイツの報道では、『ロシアへのあこがれ対EUへのあこがれ』と単純化されています。ユーロマイダンの抗議は、ウクライナの『独裁化』へのプロテストだった。本当は、民族やナショナリズムの問題が、複雑に絡み合っているのに、そのことが全然報道されていない」
さらに、「ロシア人とウクライナ人との間では、民族的な平等が唱えられてきました。ロシア人とウクライナ人は、ソ連時代にも共存していました。しかし、今の状況で、ファシストが影響力を持つようになってしまった。
ドイツのマスメディアは、『ロシア=プーチン』という単純化した報道をします。“普通”のロシア人は、『なぜ、私たちが戦争を望むだろうか』と言っているといいます」と続けた。
さらにリヒター教授は、EUのウクライナへの興味はネオリベラリズム(新自由主義)に基づいた側面があると主張する。
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ウクライナ危機が起きてから、突如、ジョセフ・バイデン副大統領の次男がウクライナ最大の民営天然ガス生産会社、ブリスマ・ホールディングス社の取締役会メンバー兼法律顧問に就任した。ロシアにガスの供給を依存していたウクライナで、米国のシェールガスの市場を展開しよう、という打算が見てとれる。ウクライナが西側諸国の「経済植民地」になってしまう懸念がある。
「これまでロシアとヨーロッパの関係はまあまあよかったんです。それを壊して一番の利益になるのは米国ですから、心配です。今のヨーロッパは、米国の『マリオネット』のような要素もあると思います」
また、ドイツ、特にベルリンでは、インターネットサービス企業「Google」が、タクシー市場への参入を始めたという。値段の高いタクシーではなく、時間の空いている一般人が、個人の車でタクシー営業をする「白タク」状態を展開しているというのだ。
現在は違法なため、罰金を払わなければならないが、米国・ヨーロッパ版のTPPである「環大西洋貿易投資パートナーシップ(TTIP)」が締結されれば、堂々と規制緩和も可能となる。
「ヨーロッパでは、TTIPの問題には優れた報道があります。その点、ウクライナに関しては機能していませんが、まだまだ西ヨーロッパはマシです」とリヒター教授は語る。
「戦争勃発を心配している、という話は友達の間には多いです。私も孫がいるので、どうなるかなぁ、戦争に行かなければいけないかな、とか考えます。メルケル首相の態度はわかりません。ほとんどウクライナ危機に発言しないので。その代わり、ガウク大統領がバカバカしいことを言っています。
以前、大統領は第2次大戦が始まった9月1日に合わせて、ポーランドでスピーチしました。そのとき『ソ連の赤軍が戦争を終わらせ、ドイツを解放した』という一言も言いませんでした。その事実に触れなかったことで批判されました」
ゆるやかではあるが、日本のような「歴史修正」の思惑もあるのだろうか。「過去に眼を閉ざす者は、未来に対してもやはり盲目となる」と語ったヴァイツゼッカーのような政治家は、もう、ドイツには少ない、とリヒター教授は悲しげに語った。
忙しさは民主主義の敵っていう言葉が印象に残った→「ロシア=プーチン、プーチン=悪魔」? 単純化された「西側」の構図に異論~岩上安身によるライプチヒ大学リヒター・シュテフィ教授インタビュー http://iwj.co.jp/wj/open/archives/169482 … @iwakamiyasumiさんから
https://twitter.com/hilopan/status/517153578155130881
2014/09/16 岩上安身によるリヒター・シュテフィ ライプチヒ大学東アジア研究所日本学科主任教授インタビュー(動画) http://iwj.co.jp/wj/open/archives/169482 … @iwakamiyasumi〜これを見ると世界中の心ある知識人が『IWJ』を見ている事が実感出来る。是非必見
https://twitter.com/ittusattu/status/516278581664559104
リヒター・シュテフィ教授が、ウクライナ情勢についてあまりご存じでなかったというのに驚きました。
IWJでインタビューした教授の方々、たとえば舩田クラーセン先生や米田先生、内藤先生が研究者不足を指摘されていましたが、ドイツにおいても同じなのでしょうか。
研究者が不足している一方で、研究するべき課題が増えている。(大学生をローン破綻させている場合じゃない!)
戦争のない世界においては、多くの人たちがそれぞれ研究をし続けるような生活が自然なのかもしれません。
横並びで同じことをコピーするために使うには、人間の脳は大きすぎると思います。
「忙しさは民主主義の敵です。」 ありがたいお言葉です。