冤罪や取調官による不祥事を防ぐためとして、法制審議会特別部会で、取り調べの録画制度のあり方が議論されている。そのような中、「布川事件」の桜井昌司氏や、「足利事件」の菅家利和氏など、冤罪被害者が一堂に会して、取り調べの録画制度を早期に導入することを求める院内集会が行われた。主催したのは、「取調べの可視化を求める市民団体連絡会」。
(IWJ・松井信篤)
冤罪や取調官による不祥事を防ぐためとして、法制審議会特別部会で、取り調べの録画制度のあり方が議論されている。そのような中、「布川事件」の桜井昌司氏や、「足利事件」の菅家利和氏など、冤罪被害者が一堂に会して、取り調べの録画制度を早期に導入することを求める院内集会が行われた。主催したのは、「取調べの可視化を求める市民団体連絡会」。
■ハイライト
「監獄人権センター」代表で、弁護士の海渡雄一氏は、一刻も早い取り調べにおける全過程の可視化を求めてきた。しかし、法制審議会特別部会の取りまとめの中で、全過程の可視化が実現されない可能性が高まっていることから、「冤罪被害者の声が届いていないじゃないか。冤罪被害者の声を聞けば全事件・全過程の録音・録画しかありえないのに、どうしてそうなっていないのか」と力を込めて訴えた。
2007年に傷害罪で逮捕された「北九州・爪ケア事件」の上田里美氏は、長い取調べの中、自暴自棄となり日々を過ごしていたという。捜査過程が録画されていれば、「取り調べで嘘や強要がないか客観的に判断できるようになる」と述べた。そして、一部可視化ではなく、全ての過程において、録画・録音や弁護士の立会いが必要だと訴えた。
1967年に「布川事件」により逮捕され服役、2011年に無罪判決となり名誉回復された桜井昌司氏は、警察や検察は、自分たちの捜査が冤罪を生んでいるという自覚がないと指摘。「刑事や検察が法制審議会で可視化に反対するのは当然。人を見る目がないから、可視化すると正しい取調べができないと思っている」と語った。実際、桜井氏は法制審議会に2回にわたり申し入れに行ったが、まったく取り合われなかったという。
他にも「足利事件」の菅谷利和氏や、「三鷹バス痴漢冤罪事件」で現在も東京高裁で闘っている津山正義氏の他、「志布志事件」の冤罪被害者ら6名が、スカイプを使って鹿児島から取り調べの可視化を訴えた。「東電社員殺害事件」で無罪判決を受けたゴビンダ・プラサド・マイナリ氏も、ネパールから直筆の手紙を寄せ、取調べの可視化を求めた。