日本の取り調べは国際的に「常識外」─取り調べ拒否経験者らが警察の暴力的態度を告白 2014.1.15

記事公開日:2014.1.15取材地: テキスト動画
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(IWJ・鈴木美優)

 「拷問禁止委員会によると、日本は拷問している国」──。

 脱原発運動、秘密保護法反対運動、新大久保での反差別デモなどで、参加者らの不当な逮捕が相次いでいる。平和力フォーラムは15日、黙秘権と取調拒否権に関する学習会を開催し、パネラーや過去に不当逮捕された被害者たちが意見を述べ合った。

■ハイライト

  • パネラー 小池振一郎氏(弁護士)、寺中誠氏(東京経済大学教員)、前田朗氏(東京造形大学教員)
  • 主催 平和力フォーラム

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日本の取り調べは「時代遅れ」

 密室での長時間に渡る被疑者取り調べや自白強要は、日本で現在も繰り返し行われている。こうした問題についてより深く議論すべきだと、弁護士の小池振太郎氏は述べる。厚労省に設置された警察作業部会では「取り調べの可視化」について繰り返し議論されているが、実際は、現場の捜査官が取り調べをどう行うかを決めているのが現状だ。

 「捜査側は、一人の犯人も逃したくない。だから上手く徹底的に調べ、被疑者を疲れさせ、そして自白させる」小池氏は被疑者取り調べの現状をこう解説する。1日14時間にも渡る取り調べの中、被疑者は休憩をとることも水を飲むこともほとんど許されず、精神的・身体的疲労が蓄積する。長時間の取り調べによって、被疑者らは「自白せずに真実を貫き通すか、自白して楽になるか」の選択を迫られることになる。

 小池氏によると、長時間に渡る取り調べや自白の強要は、国連人権機関などから「拷問だ」と批判されているにもかかわらず、日本の警察側はその姿勢を崩すことなくその拷問的取り調べを続けているという。昨年6月、国連拷問禁止委員会において、上田人権人道大使が「日本は人権先進国の一つだ」と発言した際、会場からは失笑が湧き、上田大使は「なぜ笑うんだ、笑うな。シャラップ! シャラップ!」と叫んだことが話題になった。日本の被疑者取り調べの現状は、国際的に見ても「時代遅れ」だと小池氏は指摘する。

 現在、取り調べの可視化が実現されているのは一部でのみだ。これについて、小池氏は、「可視化の可否が捜査側によって決められている。規制されるべき当人が事件を可視化するか決めるのはナンセンスだ」と指摘し、取り調べの全面可視化と弁護人による取り調べの立会を可能にすべきだと訴えた。

逮捕勾留の目的は「自白を得ること」

 東京経済大学教員の寺中誠氏も、「拷問禁止委員会によると、日本は拷問している国だ」と述べ、日本ほど長時間の取り調べが行われる国はないと明言した。「日本の警察は、逮捕勾留してから23日間に起訴を実現しなければいけないと言っているが、他国では23日も身柄拘束できるのは完全に常識外だ」。寺中氏はそう声を上げ、多くの日本人が常識だと思っていることは実は非常識なのだと強く訴えた。

 「自白を得ることが徹底的に逮捕勾留の目的とされている」。寺中氏はこう述べ、逮捕勾留の目的の実質について解説した。「逮捕勾留は、捜査を成り立たせるための手段。捜査とは、供述をとること、つまり供述調書を収集するために逮捕勾留する」。寺中氏はこう語り、続けて、「供述調書とは、つまり自白を得ることだ」と述べた。一方、警察側は、逮捕の目的を「逃亡を防ぐこと」と主張している。

取り調べ拒否経験者3人らが語る、公安警察の強圧的行為

 学習会の後半には、実際に取り調べ拒否をしたことのある3名が匿名でマイクを握った。

 昨年6月16日、新大久保で在特会らが行った差別デモに対する反差別デモに参加したBさんは、抗議行動の最中に逮捕され、原宿署に移送された。翌日から公安警察らによる取り調べが行われ、7月20日から取り調べ拒否を徹底した。「仲間が取り調べ拒否権について書かれた資料を差し入れしてくれた」。そう語るBさんは、毎日のように取り調べに迫られながらも断り続けたことを振り返り、その時の様子を「かなり強圧的な態度だった」と語る。

 過去に3回逮捕されているというCさんは、最初の2回の逮捕では黙秘を貫いた。しかし2012年2月、野宿者逮捕に抗議したCさんは、警察から無理やり追い出されるなどひどい対応を受け、怒りのあまり建物のガラスを蹴ったところ割れてしまい、器物破損で再び逮捕された。取り調べ拒否を続けたものの、警察側はCさんの持ち物から無理やり指紋を取ろうとするなど、警察の対応は強圧的だったと語る。

 「抗議に参加する人は、取り調べを拒否できることや黙秘権について知っておくべき」。Cさんは自分の経験を基にそう語る。「捜査なんて事件について聞くより、『親が泣いているぞ』とか『外の人間はお前を見放すぞ』などと脅し、自白をさせるのがメインだ」。Cさんは、逮捕されたときに警察から言われた脅しを明かし、「捜査の方法はでたらめだ」と警察側の捜査方法について批判した。

 2011年2月、米軍ヘリパッド建設を受け、アメリカ大使館前を通る反戦デモを申請した際、都公安委員会にコース変更処分をされ、Aさんらは、当日デモをボイコットし、歩いて大使館まで向かった。これに対し、警察は「公安条約違反の不届けデモだ」と指摘し、Aさんは警察車両の梯子に上り警察に対する抗議を行った。その結果、Aさんは「警察官を殴った」ことにされ、公務執行妨害として逮捕された。

 「反対と歩いているだけで逮捕されることがある」。Aさんはこう述べ、犯罪とされる行為をしなくても確信犯としてでっち上げることが実際に行われていると公安警察の不当逮捕の現状の酷さを述べた。「戦うべきところは戦わなければならない。でないといくらでも悪くなる」Aさんはこう主張し、不当逮捕された人が屈せずに戦う必要があると語気を強めた。

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