「高齢者」とは、どのようなイメージだろうか? 人や地域によって感覚は違うと思うが、定年の延長や平均寿命の伸びなど、時代の変化にあわせて、その定義は変わってきた。
長谷川町子原作の漫画で、国民的人気アニメとなった「サザエさん」の父、波平さんは、自宅では和服を着て、盆栽や囲碁が趣味であり、孫もいる「おじいさん」として描かれているが、年齢は54歳。「サザエさん」が朝日新聞で連載を開始した1951年に、サラリーマンの定年は55歳で、波平さんは定年直前の設定なのだ。
1951年の男性の平均寿命は60.8歳で、会社員らが加入する厚生年金の受給開始年齢は55歳だった。当時は、リタイアして年金をもらい始める55歳からが「高齢者」だったのかもしれない。
その後、厚生年金の受給開始年齢は、1954年の法改正によって60歳へと段階的に引き上げられていき、1985年の大規模な年金制度改革で、国民年金と同じ65歳に統一された。
1982年には「高齢者の医療の確保に関する法律」で、65歳以上を高齢者と定義し、65歳から74歳までを「前期高齢者」、75歳以上を「後期高齢者」に分けた。この法律が制定された1982年当時、65歳以上の高齢者の全人口に占める割合は、まだ9.6%だった。
2026年9月、日本の65歳以上の高齢者人口は3624万人、人口に占める割合は29.6%と過去最高を更新した。前年比2万人の増加で、男性1571万人、女性2054万人である。日本人の3人に1人が高齢者ということになる。
※統計からみた我が国の高齢者-「敬老の日」にちなんで-(総務省、2026年9月20日)
https://www.stat.go.jp/data/topics/topi1490.html
また、今年は100歳以上の人が初めて10万人を超え、10万7677人(前年比7914人の増加)となった。内訳は、男性が1万3379人、女性は9万4298人で、圧倒的に女性が多い(全体の約88%)。最高齢は114歳の京都の女性だった。
※令和8年度百歳の高齢者へのお祝い状及び記念品の贈呈について(厚生労働省)
https://www.mhlw.go.jp/stf/houdou/newpage_002341.html
総人口に占める65歳以上の高齢者の割合が21%を超えた社会を、「超高齢社会」と呼ぶ。
日本は世界でも高齢化のスピードが早く、2007年から超高齢社会になっており、その一方で、合計特殊出生率(女性1人が生涯で産む子供の数)は10年連続で低下を続け、2025年に過去最低の1.14となった。合計特殊出生率1.5未満は「超少子化」と呼ばれる。日本は「超少子化・超高齢化」という前例のない状況に、すでに突入しているのである。
ドラッグストアの紙おむつ売り場では、赤ちゃん用より大人用が大きなスペースを占めている。日本最大の紙おむつメーカーのユニ・チャームが、「大人用紙おむつの売上げが、子供用を上回った」と発表したのは2011年のことだった。王子ホールディングスの子会社の王子ネピアは、2024年に日本国内向けの子供用紙おむつ事業を終了し、大人用紙おむつ事業を強化している。
※日本の紙おむつメーカー、大人用にシフト 子供用は9月に事業終了(BBC NEWS JAPAN、2024年3月27日)
https://www.bbc.com/japanese/articles/cjj58yylq4jo
高齢者の割合は年々上昇しており、国立社会保障・人口問題研究所の推計では、第2次ベビーブーム世代が65歳以上になる2040年には34.8%に達する見込みだ。
岩上安身は、4半世紀以上前から、日本の少子高齢化に危機感を抱き、2002年から2003年にかけて連載した「日本人が消滅する日」で、社会全体で少子化対策を真剣に考えるべきだと訴えていた。
2003年当時、消費税16%構想で話題になった、日本経団連の奥田碩(おくだ ひろし)会長による「奥田ビジョン」は、日本の再生に必要な改革を提案したもので、将来の人口問題を見すえて、移民受け入れの必要性にまで触れていた。それにもかかわらず、日本人の次世代育成の視点はすっぽり抜け落ちており、岩上安身は、その点を連載の中で批判している。

▲奥田碩日本経団連元会長(Wikipediaよりwww.kremlin.ru)
https://bit.ly/3TOrMV8
また、移民を受け入れても、やがて社会的・文化的な摩擦が激しくなるのは欧米諸国の例をみれば明らかで、人口問題の解決にはならないという岩上安身の指摘は、2026年の今、日本各地で外国人労働者や移民に反対する声が大きくなっている事態を的確に見通していた。
そもそも、「海外なら、まだ人口が多い国があるから、日本に来てもらおう」という考えは甘かったのかもしれない。今年8月に発表された、ペンシルベニア大学とノースウェスタン大学の研究者達の論文によれば、世界の合計特殊出生率は、人類史上初めて、人口置換水準(人口が一定に保たれる水準)を下回った可能性があり、これにより世界人口は、2056年に約90億人でピークを迎えた後、減少に転じる見通しだという。
※World faces historic population decline – study(RT、2026年8月25日)
https://www.rt.com/news/644626-world-historic-population-decline/
研究者らは、低出生率が長期化すれば、労働力人口の減少、社会の急速な高齢化を招き、経済や福祉制度に負担をかける恐れがあると指摘している。これはまさに、「合計特殊出生率1.14」「全人口の3人に1人が高齢者」となった、今の日本が真剣に受け止めるべき警告ではないだろうか。



































