2025年1月10日午前9時40分頃より、東京都千代田区の総務省にて、村上誠一郎総務大臣の定例会見が行われた。
会見冒頭、「家計調査報告(二人以上の世帯)2024年(令和6年)11月分」について、村上大臣から報告・説明があった。
- 家計調査報告(二人以上の世帯)2024年(令和6年)11月分(総務省、2025年1月10日)
続いて、各社記者と村上大臣との質疑応答となった。
他社からは、「米国のメタ社がフェイスブックやインスタグラムなどで行ってきた、投稿内容の第三者による事実確認(ファクトチェック)を廃止すると発表した件」、および「日常化している企業へのサイバー攻撃に関する総務省の認識と今後の取り組み」について、質問があった。
IWJ記者は、中居正広氏と元フジテレビ女性社員との間での「慰謝料9000万円のSEXスキャンダル」について、以下の通り質問した。
IWJ記者「タレントの中居正広氏が、当時フジテレビの局アナだった女性X子さんに対して、自宅でX子さんの『意に沿わない性的行為』を行い、9000万円の慰謝料を支払ったというスキャンダルについてうかがいます。
この被害女性が、フジテレビのアナウンス部の上司に訴えたところ、問題は世に出ることなく揉み消され、何事もなかったかのように番組が続いてきたことや、X子さんのケースだけでなく、局ぐるみの『性上納』がこれまでもあり、揉み消されてきたことなども報じられています。
中居氏は昨夜、自身の名義でコメントを出し、トラブルがあった事実を認める一方で、示談が成立していることを強調し、『当事者以外の者の関与といった事実はございません』と、局員など第三者が絡んでの『性上納』ではないことを強調しました。フジテレビ関係者の関与はないということで、フジテレビをかばったものと思われます。
また、『示談が成立しているので、今後の芸能活動に支障はない』ともコメントしています。性加害の当事者としての意識が、欠如しているように思えるコメントです。
しかし、同事件は不同意性交罪として、刑事事件になってもおかしくない重大な事案であることに変わりはありません。示談がいったん成立したからといって、すべて終わったことにはなりません。
現に、元大阪地検トップの検事正であった北川健太郎被告が、当時部下だった女性検事に性的暴行を加えて、準強制性交罪に問われた事件で、当初は両者の間で示談が成立し、和解金も支払われました。
しかし、被害者の女性検事は、被害感情、処罰感情がおさまらず、2023年にPTSDと診断され、和解金を返納した上で、2024年4月になって、大阪高検に被害を申告し、刑事告訴しました。
大阪高検は、2024年6月に、北川被告を準強制性交の疑いで逮捕し、起訴して、現在、刑事裁判が継続中です。
X子さんが、示談を取り下げるかどうか、この後、刑事告訴するかどうかは別問題として、フジテレビというテレビ局は、何の社会的責任も取っていません。
中居氏への注意や抗議も行わず、被害女性への、社としての謝罪もケアもなく、この事件から教訓を汲み取って、社員や外注スタッフ、タレントに対しても、コンプライアンスの徹底を呼びかけるなどの対策もしていません。
以前自民党の安倍政権下で、総務大臣を務めた高市早苗氏は、番組に政治的偏向があったら停波もあり得ると、強い姿勢を見せたことがありました。
政治的偏向問題で、すぐに停波措置は、言論と報道の自由から考えて、議論の余地が大いにあると思います。しかし、こうした性加害のような刑事事件の是非については、議論の余地はなく、是々非々は、はっきりしています。『義務として、公安・善良な風俗を害しない』という放送法4条に、明白に違反しています。
国民の財産である地上波の電波帯を各局にあてがっている総務省としては、この問題を放置せず、監督官庁として、然るべき厳格な調査と、注意や処罰などの措置をとるべき義務があるのではないでしょうか?」
IWJ記者の質問は終わっていなかったが、村上大臣が次のように割って入った。
村上大臣「今、ご指摘の内容は報道で承知しておりますが、他方、放送法は放送事業者の自主規律を基本とする枠組みとなっておりまして、放送番組にどのようなタレントを起用するかを含めて放送事業者自らの責任において放送番組の編集を行うこととされております。
このため、総務大臣としましては、この問題についてコメントすることは差し控えさせていただきたいと考えております」
IWJ記者は、村上大臣の答弁に対し、次の通り、追加質問を投げかけた。
IWJ記者「追加でもう一点、すぐ終わります。
ネット上の声などを見ると、自浄作用能力のないフジテレビこそ、停波にせよ、という声が満ち溢れています。国民の怒りは沸騰していますが、それをオールドメディアが報じていないだけです。テレビの視聴率も、スポンサー離れも、新聞の発行部数も激減するはずです。
オールドメディアのモラル崩壊を立て直しできるのかどうか。村上大臣のご見解を、お示しください」
村上大臣は一度目の答弁を繰り返し、以下のように答えた。
村上大臣「繰り返しになりますが、放送番組にどのようなタレントを起用するかを含め、放送事業者の自主規律とする放送法の枠組みのもと、放送事業者において検討し、自主的に判断されるべきものと考えております。
このため、総務大臣としては、コメントすることは差し控えさせていただきたいと考えております。以上であります」
監督省庁としては、一切、調査も行わず、放送事業者の自主規律にひたすらまかせる、というこの村上大臣の回答に、納得できる有権者は果たしているのだろうか?
これでは、監督省庁としての責任回避、業務放棄ではないか? 事実関係を調査して、不同意性交罪であるとの認識に至れば、この犯罪は非親告罪であり、被害者による刑事告訴がなくても、総務省が刑事告発をすれば、示談金の支払いの有無とは関係なく、摘発されることもありえる。
刑事訴訟法239条2項によると、公務員には「犯罪があると思料する時には、告発をしなければならない」という、刑事告発義務がある。
村上大臣の主張は、その刑事告発義務に対する違反、あるいはサボタージュではないだろうか。
会見の詳細については、全編動画を御覧いただきたい。