「路上でどれだけ人が苦しみ、命を落としてきたか。少しくらい想像したらわかるはず。発言を撤回すべきだ」――。
2月18日のフジテレビ『ワイドナショー』で、またもや、著名人から無神経な発言が飛び出した。たった一週間前の11日には、ゲストコメンテーターとして出演した国際政治学者の三浦瑠麗氏が、北朝鮮からのテロリストの多くが東京や大阪に潜んでいるという趣旨の発言をし、SNSで大炎上したばかりだが、火消しが終わらぬうちに、今度はメインコメンテーターのダウンタウン・松本人志氏がネットカフェ難民に関連して貧困バッシングを煽る暴論を繰り広げた。
生活困窮者などを支援するNPO法人「ほっとプラス」代表理事の藤田孝典氏はツイッターで19日、松本氏がネットカフェ難民を路上へ追い出すような発言したことに対し、「発言を撤回すべきだ」と批判した。
▲視聴率最下位に低迷するフジテレビが、炎上続きの『ワイドナショー』を放置するのは落ち目の「炎上商法」なのかとの疑問も!?
東京都が年末に初調査!都内の「ネットカフェ難民」は1日4000人!
18日の放送で、同番組は「フリーランスの働き方」「漫画の海賊版」などに並んで「ネットカフェ難民」を特集し、30代から40代が客の中心を占め、全体の8割が一ヶ月以上の長期滞在者だという、新宿歌舞伎町のとある店舗を取材、「ネットカフェ難民」の一例を紹介した。
「ネットカフェ難民」とは「安定した居住の場所を有せず、終夜営業のインターネットカフェ等の施設を起居の場所とし、不安定な雇用状態に置かれている又は現に失業している者」を指す。
東京都は2017年11月から2018年1月にかけて、インターネットカフェやカプセルホテル等で寝泊まりしながら、不安定な仕事に就く労働者の実態を初調査。報告によると、都内には1日で約15,300人が住居を持たず、昼夜滞在が可能な店舗で寝泊まりし、うち4000人程度が「ネットカフェ難民」であることがわかっている。
「ちゃんと働いてほしい。ネットカフェ難民は路上に出た方が頑張れる」!?ダウンタウン・松本氏は弱者への二次加害!? 炎上詳報はまるで「第二の長谷川豊」の声も!!
番組では、仕事を失い、家賃が払えないことで事実上のホームレスになったケースが多く、また、就労先を探そうにも、住所がないことで就労できないという悪循環に陥っているネットカフェ難民の実状を伝えた。
この日、ゲストコメンテーターとして出演した社会学者の古市憲寿(ふるいちのりとし)氏が、フリーターの高齢化を指摘すると、タレントのピーコ氏は続けて、働き盛りの世代が「日雇い労働」から抜け出す手立てがないことを問題視。すると、レギュラーコメンテーターの松本氏はこうした比較的まっとうな懸念を笑い飛ばすかのように、「(ネットカフェの)部屋を少しずつ狭くしたったらどうですか」と、利用者を部屋から追い出すべきだと言わんばかりの持論を展開し、周囲を唖然とさせた。
番組MCで芸人の東野幸治氏がとっさに、「(これはネット難民を)追い出す話ではない」と諭し、ピーコ氏も「その人たちが出ていった時に行く所を作らないと」と反論すると、松本氏は「なんかみんな優しいな、話を聞いていると。俺は若干イライラしている。ちゃんと働いてほしいから」とコメントし、ネットカフェ難民をただの「怠け者」であるかのように断罪した。
すると、古市氏が「逆に、今からネットカフェなくしますって言ったら、その人たち、どこに行っちゃうと思います?」と松本氏を問いただすと、耳を疑うような言葉が飛び出したのだ。
「路上でまず始まるんだろうね。路上で始まるほうが俺はチャレンジしている感じがするけどね。路上なら頑張るんじゃないかな」
この報道が流れたのは、繰り返すが2月18日。真冬のただ中である。自分は温かいスタジオでぬくぬくとしながら、家もなく、食もなく、ギリギリのアジール(避難所)として、ネットカフェが「代用」されているという議論の中で、「路地へ出せ」と松本氏はのたまったのだ。
下手をしたら凍えて死ぬだろう、少なくとも一晩で風邪をひいてしまうだろう、という「常識」的な発想や人としての優しさが、みじんも感じられない。だいたい、そこまで言うならば松本氏をはじめ番組スタッフ一同、ぜひ真冬の夜の路上でこの番組のロケをすべきだろう。そこで路上生活者に向かって「ネットカフェより路上の方が頑張れるでしょ?」と、聞いてみたらいい。「ふざけるな」と誰でもが思うだろう。
ネットカフェ難民は路上へ出た方が頑張れるなどというこの松本氏の暴論に対し、ネットは一気に炎上した。
「路上よりネカフェの方が死ぬリスクが少ない。なんで路上に追い出す?」「ちゃんとした情報を元にまじめに話す気がないなら、社会問題に口出すな」「ネカフェ難民は住所不定なために就職するのも困難。それを簡単に『ちゃんと働け』って、松本人志は長谷川豊と同じで弱者への二次加害が好きだな」などといった、松本氏に対する厳しい、しかし当然といえば当然の批判が相次いだのだ。
『下流老人』著者・藤田孝典氏が松本氏に苦言!「路上でどれだけ人が苦しみ、命を落としてきたか。発言を撤回すべき」
専門的立場から、松本氏のこの暴言に反論したのは、前述したNPO法人「ほっとプラス」の代表理事であり、『下流老人』や『貧困世代』の著者、藤田孝典氏だ。藤田氏は2月18日から19日にかけて、ツイッターで次のように連投している。
藤田氏にはIWJ代表の岩上安身が3度にわたりインタビューを行っている。貧困バッシングが止まない問題、非正規雇用によって奨学金が返済できず路上生活者になる若者の増加、子どもの進学や親の介護で板挟みになり、働き盛りの主役世代の貧困率が悪化している現実について藤田氏は解説しているが、中でも、15~39歳の青年・壮年層の死因トップが「自殺」だという事実はとてもショッキングだ。
「働けば収入を得られる」「若いうちは努力をするべきだ」といった、今回の松本氏のような無理解が引き金となり、貧困バッシングが蔓延していること自体が日本社会の悲劇であることが、よくわかるインタビューとなっている。ぜひ、あわせてこちらのインタビューアーカイブをご覧いただきたい。
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