「生活保護を受給した途端、同じ弱い立場の友人たちから非難された」「不正受給よりも漏給(ろうきゅう)の方がはるかに重大な問題」~弱者が弱者を叩く無残な構図!生活保護引き下げに反対!極寒のアルタ前に響いた切実な声! 2018.1.28

記事公開日:2018.1.30取材地: テキスト動画
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(取材・文:上杉英世)

※2月21日、テキストを追加しました。

 2018年1月28日、15時30分より新宿アルタ前で、「みんなで貧しくなりたいですか?生活保護引き下げに反対する街宣」がおこなわれた。主催は「自立生活サポートセンター・もやい」とAEQUITAS(エキタス)。街宣には、立憲民主党の長妻昭衆院議員、日本共産党の小池晃書記局長、自由党の山本太郎共同代表の他、貧困問題に取り組む作家やジャーナリスト、生活保護を利用している当事者、弁護士や学者が次々に登壇した。

 貧困問題に長年向き合ってきた作家の雨宮処凛氏は、自民党・片山さつき議員ら一部政治家が主導して展開した生活保護バッシングにより、家から出られなくなっただけでなく、自殺にまで追い込まれた人もいるという現実を伝え、「ほとんど知られることなく命が奪われている」と語った。

 エキタスの奈良みゆき氏は、「私の周りには貧困と隣り合わせの生活をしている人がたくさんいる」と、友人や後輩たちの厳しい生活を例に挙げ、不正受給よりも、必要な人に給付が行き渡らない「漏給(ろうきゅう)」の問題の方がはるかに重大な問題だと訴えた。

 また、エキタスの栗原耕平氏は、「最低賃金1500円になったら何がしたいか?」というアンケートへの回答で最も多かったのが「病院に行ける」という、実に切ない回答であったと紹介した。若者が置かれている厳しい状況に触れ、「生活保護が引き下げられれば、生活が悪化する。負のスパイラルだ」と主張した。

 街宣では、生活保護を利用している当事者の女性も発言した。彼女は、生活保護の切り下げへの不満や不安を口にした途端、親しかった友人たちから非難の言葉を投げられたが、彼女を非難した当の友人たちも、長時間労働や職場のパワハラに苦しんでいたり、親の介護のために貯金を使い果たしたりと、「生活保護からそう遠くないところにいる」と語った。弱者が弱者を叩いている、そうした無残な社会の縮図が、彼女の生々しい証言によって浮き彫りとなった。

 制度を利用しない弱者からぶつけられる苛烈な怨嗟の声。「生活保護を受けるぐらいなら死んだ方がマシ」という「恥」の文化とも相まって、利用者が精神的にも追いつめられている実態が明らかとなったこの街宣、全編をぜひ御覧いただきたい。

追記

 この日の路上は厳しい冷え込みで、マイクを握る人も、立ち止まって耳を傾ける人々も、皆、凍えていた。それを中継するカメラマンも、防寒着を重ねていたが、体の芯まで冷え切った。こんな寒波の中で、職がなく、家がなく、路上で過ごさなくてはならない人の厳しさは、想像を絶する。

 それから1ヶ月後の2月18日、フジテレビの「ワイドナショー」で、メインコメンテーターの松本人志氏の口から、ネット下で難民をただの怠け者扱いし、ネットカフェから追い出して、路上へ出すべきだ、そうしたら働き出すだろうという、信じがたい発言が飛び出した。冗談ではない。無防備にこの冷え切った路上へ押し出したら多くの人間が、凍え死んでしまうだろう。

 自分は温かいぬくぬくとしたスタジオから、弱者をバッシングする酷薄な発言をお笑いにくるんで「たのしい貧富の格差拡大賛成プロパガンダ」へとつなげる松本人志氏の発言は、到底看過できない。真冬の東京(大阪でもいいが)、1時間でも2時間でもスタッフ全員まるごと路上で同じように吹きさらされながら、この「ネットカフェ難民」談義をやってみろ、と言いたい。

■ハイライト

  • スピーチ 加藤歩氏(自立生活サポートセンター・もやい事務局長)/布川日佐史氏(法政大学現代福祉学部教授)/長妻昭氏(衆議院議員、立憲民主党)/生活保護制度利用者から/小池晃氏(参院議員、日本共産党書記局長)/メッセージ紹介/AEQUITASメンバー/安田浩一氏(ジャーナリスト)/雨宮処凛氏(作家、活動家)/林治氏(弁護士)/山本太郎氏(参議院議員、自由党共同代表)/栗原耕平氏(AEQUITAS)
  • タイトル みんなで貧しくなりたいですか? 〜生活保護引き下げに反対する街宣〜 登壇 長妻昭衆院議員、山本太郎参院議員、小池晃参院議員、雨宮処凛氏(作家)、安田浩一氏(ジャーナリスト)ほか
  • 日時 2018年1月28日(日)15:30〜17:00
  • 場所 新宿駅東口アルタ前(東京都新宿区)
  • 主催 自立生活サポートセンター・もやいAEQUITAS(エキタス)詳細

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  1. 川越健生 より:

    地域格差を考えないと駄目な気がする、まずはコミュニケーションのとれるより良い方法はないのでしょうか?

  2. @55kurosukeさん(ツイッターのご意見) より:

    「生活保護への苛烈な批判は制度を利用していない人の悲鳴のように聞こえる」無理解とバッシングに晒される「最後のセーフティネット」~負のスパイラル生む生活保護引き下げに反対!極寒のアルタ前に切実な声 https://iwj.co.jp/wj/open/archives/410670 … @iwakamiyasumi
    引き下げで一番影響あるのは「子ども」だ。
    https://twitter.com/55kurosuke/status/958225910213230592

  3. @55kurosukeさん(ツイッターのご意見) より:

    雨宮処凛氏「自民党・片山さつき議員ら一部政治家が主導して展開した生活保護バッシングにより、家から出られなくなっただけでなく、自殺にまで追い込まれた人もいる。ほとんど知られることなく命が奪われている」
    https://iwj.co.jp/wj/open/archives/410670 … @iwakamiyasumiさんから
    https://twitter.com/55kurosuke/status/966606194059046912

  4. rtc598 より:

    非正規雇用が原因で、貧困が大きく拡大した。小泉政権・安倍政権が元凶。
    安い賃金で労働させられ使い捨てられた人達が、役所へ保護申請の相談に押し寄せている。
    ボーナスのない時給計算の給料で、生活し続けられるはずはないから。

    恥だとか、不正自給・自業自得、これらすべて政府の幼稚な言い訳だ。
    申請させない為に、小学生レベルの悪口をTVで一生懸命叫び、素直に国民にお頼みしたらどうか?、
    「お願いします、保護申請しないで下さい」と。
    「大人しく、餓死してください」とw

    TVのくだらない印象操作や幼稚な悪口、聞きたくもない。
    日本政府が原因・元凶で貧困が拡大したのだ。

  5. @55kurosukeさん(ツイッターのご意見) より:

    制度を利用しない弱者からぶつけられる苛烈な怨嗟の声。「生活保護を受けるぐらいなら死んだ方がマシ」という「恥」の文化とも相まって、利用者が精神的にも追いつめられている実態が明らかとなったこの街宣、全編をぜひ御覧いただきたい。
    https://iwj.co.jp/wj/open/archives/410670 … @iwakamiyasumi
    https://twitter.com/55kurosuke/status/1102685648870207488

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