現在、国会で審議中の安保関連法案に対して、与党で唯一公の場で反対の声を上げている自民党・村上誠一郎衆議院議員が、2015年6月30日に日本外国特派員協会主催の記者会見を行なった。
村上氏は、「我々の親父や祖父の時代は、法律案を出すときには、縦・横・斜め・筋交いから質問が出たときにパーフェクトな答えができるような法案以外は出さないようにしていた」と述べ、今回の安保法案がそれとは対照的で、「質問が出て、明確に答えられないような、違憲性の疑義のある法案を出すのは、もう一回、踏みとどまって考える必要がある」と訴えた。
「『日本は法治国家だ』と常々口にする安倍総理自身が、なぜ法治主義に反するような行動をするのか」との記者からの質問に対し、村上氏は、「これは今までに受けた教育としか言いようがない」と厳しく断じ、「私は小学校から大学まで、非常に素晴らしい先生に教わったという誇りと自負を持っている。私はその先生方が教えてくれた魂に対して、感謝をしているし、彼らが教えてくれたことは、決して間違えていなかった」と語り、涙を拭う場面もあった。
「このまま突破すると、日本の将来、民主主義に多大なる禍根を残す」
※以下、発言要旨を掲載します
村上誠一郎氏(以下、村上・敬称略)「安保法制で集団的自衛権を含む法律が11本出された。毎日のように国会でこの法案が議論されているが、議論されればされるほど、問題点がどんどん出てきて、いろいろな矛盾が出てきている。
雑誌『世界』5月号の『ワイマールの落日を繰り返すな』という文章で、私は『集団的自衛権の行使を可能にするには憲法改正以外に道はない』と書いた。集団的自衛権は自分の国が攻められていないのに、同盟国が攻められているときには戦争ができるということ。これを可能にするには、憲法を改正する以外に道はない。
本来ならば、正々堂々と憲法改正の発議をして、国民投票で皆さんの賛成が得られれば集団的自衛権を行えばよし、反対が多ければ集団的自衛権は諦めるというのが民主主義であると私は考える」
「法制局長官が解釈で憲法を変える」――「憲法が有名無実化、空洞化、もはや法治国家ではない」
村上「衆議院の委員会で、亡くられた小松(一郎)さんという法制局長官が『解釈を変更することによって集団的自衛権の行使が可能だ』と言われた時、安倍さんが『内閣法制局長官は内閣の一部局であるから、総理である私が全責任を負う』という答弁をした。私はこれはたぶん大変なことになるだろうと思った。
法制局長官というのは内閣における法律顧問であり、本来ならば客観的な判断で内閣の今までの考え方をコントロールしてきた。簡単に言えば、お相撲さんの行司役が、まわしをつけて土俵に上がってしまった。ここからがボタンの掛け違い、大きな問題が出てきたと思う。
もし内閣の一部局である法制局長官が解釈を変更することによって憲法を変えることができるようになれば、それは例えば憲法の最大原則である主権在民、基本的人権の尊重まで時の内閣によって、法制局長官が恣意的に解釈することによって変えてしまうということ。それは明らかに憲法があってなきが如し、有名無実化して空洞化してしまうということ。そうなればもはや法治国家ではない。
ある方は、『日本国憲法は不磨の大典ではない』、『絶対変えることはできない』と言うかもしれないが、戦後教育を受けた私は、平和主義、主権在民、基本的人権はいつなる時代においても、いつなる場合においても決して変更してはならないことだと、確信している」
「砂川や昭和47年の政府見解は集団的自衛権の法制の根拠ではない」
村上「今回のこの集団的自衛権の法制の根拠を我が自民党は何に求めたか。それは砂川判決と昭和47年の政府見解である。
先日の衆議院の憲法調査会で3人の非常に常識的な憲法学者が『違憲だ』と言われた。99%の憲法学者、歴代の法制局長官、そしてほぼ全員の判事や検事や弁護士の法曹のみなさんが全部、砂川や昭和47年の政府見解は根拠ではないと考えている。
大多数の国民や学者に違憲法案であるというコンセンサスが得られているのに、これをあえて強引にこのまま突破することは、日本の将来、日本の民主主義において多大なる禍根を残すのではないかと心配している。
来年(2016年)から18歳の方々が投票権を持つようになる。我々は、若い皆さん方に『立憲主義を守れ』、『三権分立を守れ』と、教えてきている。
そもそも憲法は、国家権力が暴走しないためにあるものであり、それが立憲主義である。そのために、行政や司法や立法はチェックアンドバランスの三権分立を守らなければいけないと言ってきている。若い人々に『立憲主義を守れ』、『三権分立を守れ』と言っておきながら、天下の自民党がそれを破ることをとしたら、若い人達に非常な不信感を持たれるのではないかと懸念する。
それから小林節先生が言っているように、この法案が通って行けば、違憲訴訟が連発されることになると思う。総務会で私は説明者に、『もし違憲訴訟が起こって、違憲判決が出たときにどうするんだ』と聞いたら、『この安保法案は失効する』という答えだった。
我々の親父や祖父の時代は、法律案を出すときには、縦・横・斜め・筋交いから質問が出たときにパーフェクトな答えができるような法案以外は出さないようにしていた。すなわち質問が出て、明確に答えられないような法案は決して出さなかった。違憲性の疑義のある法案を出すということは、もう一回思いとどまって、踏みとどまって考える必要があるのではないか」
「新3要件は戦前の日本の軍部の独走を食い止めるような歯止めにはならない」
村上「一番の大きい問題点は、新3要件。これは、あくまで自民党と公明党の合意をするために作ったものであり、法案として構成要件が曖昧。どこまで、何ができるのかが全くはっきりしていない。私が心配しているのは、昨日(2015年6月29日)の法制局長官の答弁だ。論理的に整合性が保たれていないと思う。結局は、時の内閣総理大臣が存立危機だと認めれば、それが存立危機だということになり、集団的自衛権ができるということ。
戦前において、日本の軍部の独走を止められなかった。今回、この法案において、独走を止められる歯止めがあるのか。確かに国会承認という手続きがあるが、今のように与党が圧倒的多数であれば、普通の法案を通すよりもイージーに通ってしまう。これでは戦前のような暴走を食い止めるような歯止めにはならないのではないか。それを危惧している」
「私こそが『ミスター自民党』だ」
村上「一政治家や一官僚の問題ではないということ。国民ひとりひとりが今の憲法についてどのように考え、どのように民主主義を守っていくか、それが問われている問題だと考える。
次の世代はもう財政も経済も金融も社会保障も大変。その上に地球の裏側まで行ってもらう。では誰が次の世代のために弁明するというのか。
私がこれを言い続けているのは、自分ためだとか言っているのではない。選挙で通って、一回も自民党を出たことがないし、一回も野党の内閣不信任案に同調しなかった60数人のただ一人の生き残り。私こそが『ミスター自民党』だと思う。
なぜその『ミスター自民党』がそういうことを言うかというと、愛するわが自民党と日本が誤った道に踏み出さないように、なんとしてでも、ここはもう一度考え直して欲しいと、ここに参加させていただいた」
自民党総裁選に出馬する用意はあるのか?
ウルトラライトからウルトラレフトまでがカネという一点でつながっていたのが自民党だと、故立川談志師匠が週刊文春の阿川佐和子さんとの対談の中でおっしゃってました。村上さんがおっしゃっている《法律案を出すときには、縦・横・斜め・筋交いから質問が出たときにパーフェクトな答えができるような法案以外は出さないようにしていた》というのは法律を作るときの基本中の基本で、それができていない法律はいかようにも解釈されて法律を作った意味がなくなるのです。今回の一連の法案に関してはむしろワザと意味がなくなるのだと思います。
現行の日本国憲法は村上さんがおっしゃるとおり帝国議会で可決されたもので、共産党が反対できたという事実がある。嘘とデマで成り立つ安倍政権では事実は関係ないのだろう。
「愛するわが自民党と日本が誤った道に踏み出さないよう、もう一度考え直して欲しい」――自民党・村上誠一郎衆院議員が涙の訴え「このまま突破すると、日本の将来、民主主義に多大なる禍根を残す」 http://iwj.co.jp/wj/open/archives/251176 … @iwakamiyasumi
自民党最後の良心。
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