政府が種子法廃止の拠り所とした「みつひかり」について、岩月浩二弁護士は「想定していなかったほど、粗悪な不良品」だったと指摘! 外資種子メジャー参入の「地ならしだったとしても不思議じゃない」と表明! 山田正彦元農水相は、TPPから、種子法廃止、種苗法改正、農業食糧基本法改正、食糧有事法成立まで、国による食糧安全保障の破壊を批判!~6.14 種子法廃止等に関する違憲確認訴訟 控訴審第3回期日後の報告・意見交換会 2024.6.14

記事公開日:2024.6.16取材地: テキスト動画
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(取材、文・城石裕幸)

 都道府県の管理によって、安全・良好な種子生産をする、主要農作物種子法が、2018年に廃止された。

 この種子法の廃止を決めた、種子法廃止法は、憲法上の「食料への権利」を侵害し違憲だとして、全国の農家(一般農家・採種農家)と消費者が、国を被告に訴えた種子法廃止違憲確認訴訟は、2023年3月に、東京地裁が原告の請求を棄却した。

 しかし原告側は、昨年4月に東京高裁に控訴し、現在も裁判が続いている。

 2024年6月14日、東京高裁で行われた控訴審の第3回期日のあと、弁護士会館で、弁護団による報告と、支援者らとの意見交換会が行われた。

 2023年の地裁判決後に、農林水産省が民間企業の米品種として推奨していた、三井化学クロップ&ライフソリューション株式会社の「みつひかり2003」に、長年にわたる多品種の種子混入や、保証表示を下回る発芽率が確認され、三井化学が種子を回収、出荷を停止したという問題が発覚した。

 政府は、2017年の通常国会での種子法廃止法案の審議当時、「種子事業への民間参入の促進」を目的のひとつとして掲げ、「優れた民間品種」の代表例として、「みつひかり」を推奨していた。

 原告側は、控訴審で、この「みつひかり」不正問題を重要な争点として、「種子法を廃止して民間に種子事業をゆだねることは、極めて問題であって、私たちの食への権利を侵害するもの」だと主張している。

 原告側は、原告のひとりである菊地富夫氏(採種農家)への当事者尋問と、弁護団共同代表でもある山田正彦元農水相、食料への権利に詳しい大分大学経済学部の小山敬晴准教授への証人尋問を申請した。6月14日の期日で、裁判長は3人への尋問を採用しなかったが、次回期日で、このうち菊地氏と山田氏の意見陳述と、最終準備書面の提出を認めた。

 次回期日は、現時点では未定だが、10月1日の午後3時もしくは9月24日の午後3時からで、結審となる見込みである。

 報告会で、弁護団共同代表の田井勝弁護士は、次回期日での菊地氏と山田氏の意見陳述を「この裁判のクライマックス」だとして、裁判の傍聴を呼びかけた。

 6月14日の第3回期日で、「みつひかり」不正事件について意見陳述した、弁護団共同代表の岩月浩二弁護士は、報告会で、三井化学の撤退(現在は出荷停止中)と外資の参入について、「具体的に何か知っているわけではない」とした上で、次のように語った。

 「1審の段階から、当然のことながら、種子の民営化について批判してきましたが、批判の対象となる『みつひかり』がこれほど粗悪だということを、残念ながら我々は想定していなかったほど、粗悪な不良品でした。

 そして、撤退して、空白が生まれる。当然ながら、モンサントとかシンジェンタといったところは、F1(1代交雑種)のイネの品種を持っているわけです。

 種子法廃止とか、種苗法改正とか、そういったものが全部、種子メジャーが日本を席巻するための、地ならしになっているとみても、不思議な状況ではないですね。

 なぜ、こんなことをしてきたかと言えば、最後はモンサント様を迎えるためだった、みたいなオチである可能性は、全然否定できない」。

 また、意見交換会で、山田氏は、外資の参入について、次のように語った。

 「元々、この裁判というのは、10年ちょっと前に、TPP差し止め違憲訴訟をやったの(が始まり)ですが、TPP協定というのは、地方自治体のサービスを民営化するということが、明記されているわけです。

 日本がTPP協定を批准して、最初に種子法が廃止されたんです。

 今までは、国及び地方自治体が、米麦大豆、日本の主食だけは安定して優良なものを安く提供するというのが、種子法だったんです。それを廃止して、民間に頼ると。(中略)

 (TPP差し止め違憲訴訟で、一審も控訴審も敗訴したが)控訴審の判決理由をよく読むと、『種子法廃止の背景に、TPP協定があることは否定できない』とあるんです。

 そして、今度の農業食糧基本法(5月29日に成立、6月5日に公布・施行された、『農政の憲法』と呼ばれる『食料・農業・農村基本法』の改正のこと)も、よく読むと、TPPの内容そのものなんです。言ってみれば、種子も海外に依存するんだと。(中略)

 今の食料自給率は、戦争直後の配給制度の時よりも酷い状況です。米の備蓄は、1ヶ月半しかない。

 中国では、すでに1年半分は、食糧自給の備蓄ができている。

 新聞にも載っていますが、今回、初めて米屋から米が消えた。そういう事態が生じている中、依然として国は、そういう態度なんです。

 だからこれは、本当に大変なことなんです」。

 さらに山田氏は、「みつひかり」不正問題について、次のように厳しく糾弾した。

 「裁判で国側は、『みつひかり』(の不正問題)は『一事例だ』と言いましたが、政府は実際にあれを宣伝してまわったんです。38道県で、当時4000ヘクタールの農家が、(『みつひかり』を)作ったんです。

 ところが、実際に調べてみると、収量も反あたり11俵取れると言いながら、実際にはそんなもんじゃありませんでした。味も悪かった。

 しかし、もうすでに種子法を廃止して、国があれほど推奨してまわった時から、異品種が混じっていたんです。発芽率も偽造していたんです。ありえないことを、政府はやってきて、その結果、こういうざまなんです。

 他にも(米の)品種があります。住友化学の品種とか。日本モンサントの『とねのめぐみ』っていう米の品種とか。豊田通商の『しきゆたか』という品種もあります。

 しかし、それは今、ほとんどが輸出用なんです。輸出に国が税金を使って、輸出補助金をつけて、それで『輸出した、輸出した』って、今現在言っているんです。

 でも、実際に農民が作った品種で、圧倒的に多かったのは『みつひかり』なんです。

 米だけでなく、他(の作物)にも品種があります。

 大きな化学会社のトウモロコシの品種が、実は静岡県の浜松市で、まったく発芽しなかった。そして、トウモロコシ農家が2軒、倒産したんです。

 今、その事実関係を調べています。これをもうちょっと明らかにしたいんです。

 民間の種子に頼ると、もう本当に金儲けだけだから、こんな雑なものになる」。

 国による食糧安全保障の破壊は、これだけにとどまらない。この集会が行われた6月14日、国会では、食料危機の際、政府が農家に増産などを求められるようにする食料供給困難事態対策法(食糧有事法)が、可決・成立した。

 TPP交渉差止・違憲訴訟の会代表の池住義憲氏は、この食糧有事法について、次のように述べた。

 「食糧不足が続いた場合に、国が農家に対して、『これを植えろ、あれを植えろ、芋を植えろ』などと指示を出す。それに従わなかった場合、罰則規定があるという報道が流れています」。

 この池住氏の発言を受けて、山田氏は、次のように政府を批判した。

 「罰金が50万円だというんですが、本来ならば、『芋を作れ』と命令しても、種芋がなければ作れないわけですよ。

 本当に、僕は農水省の官僚に怒ったんだけど、机上の空論ですよ。そして、刑罰だけ、罰金だけ科すというんじゃ、農家が怒らないのがおかしいと思っているぐらいです。

 実際にあんなもの(食糧有事法)で、非常事態を乗り切れるわけが、絶対にないです。私はそう思っています。

 本来ならば、農家に報奨金を与えて、作ってもらう。これが、筋なんです。

 しかし、本当に政府は上から目線で、(江戸時代の年貢の)五公五民、六公四民じゃないけど、『殺さぬように、生かさぬように』という感じでやっている気がしているところです。

 やっぱり、なかなか、政権交代まで持っていかないと、一気に変わることはないかもしれないね。そんな思いです」。

■全編動画

  • 日時 6月14日(金)13:00~
  • 場所 弁護士会館 5階 502会議室D E F(東京都千代田区)
  • 詳細1詳細2(FB)

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