2021年8月31日、米国がアフガニスタンからの撤退完了を発表し、20年にわたる戦争が終結した。その2日後に当たる9月2日、東京・衆議院本館にて、野党合同国会「アフガン退避状況ヒアリング」が行われた。
日本政府は、現地に残る日本人と、日本大使館のアフガン人職員や、国際協力機構(JICA)のアフガン人職員ら、約500人を国外に退避させるため、8月23日に岸信夫防衛大臣が自衛隊法にもとづき、自衛隊機による輸送命令を出した。
24日に航空自衛隊の輸送機3機と航空自衛隊、陸上自衛隊の隊員数百人を出発させたが、26日に共同通信の共同通信カブール通信員・安井浩美さんと、アフガン人14人をパキスタンに退避させたのみで、31日に岸防衛大臣が撤収命令を出した。
冒頭、野党側から事前に通告した質問に対し、外務省、防衛省からの回答が行われた。
野党側が事前に通告した質問は、以下の通り。
1. アフガン退避活動について、時系列で人員、指揮系統、費用など、概括的に説明頂きたい。
2. 大使を含め、大使館職員の退避状況について、説明頂きたい。
3. 政府専用機の活用状況について説明頂きたい。
4. 当初、政府は8月26日、27日で500人退避を可能と見立てていたのに結局、1人のみの退避となった理由について説明頂きたい。
5. 米国との連携はいかほどなレベルで、どれぐらいの効果を挙げたのか。
6. 今後、アフガン内の邦人、アフガン協力者の退避の見通しについて。
7. タリバン政権とのルートについて、可能な範囲で説明頂きたい。皆無という事はあるのか。
立憲民主党の黒岩宇洋(くろいわ たかひろ)衆議院議員は、退避の初動について、以下のように質問した。
「大使は15日に退避していますよね。現場の最高責任者は真っ先に退避しちゃっていると。
で、17日に大使館職員がみんな引き上げてますけど、多くの国では、現地の民間人をすべて退避させてから、その次に大使館員が退避しているという、こういう対応の違いから見ると、いささか私は無責任だったんじゃないのかなと。
特に大使は15日に真っ先に退避したのは、一体どういう理由なのかが一点。
もう一つ、(自衛隊派遣の)500人のオペレーションが、(救出した邦人が)1人だった理由に、26日のテロをあげているんですけれども、これは報道によりますと、22日の時点で、米国からテロがあるあるかもしれないという呼びかけが、日本にも入っていたと。(中略)
結果的に我が国は、たった一人。しかもこれ、メディアの人ですよね、退避させたのは。
そういう意味では、ちょっとオペレーションとしては、私は初動が遅れて、決して胸を張って『成功した』とは言えないんじゃないか、この大使館の15日の件と、この初動について、ちょっとこれ教えていただきたいです」。
これに対して外務省の黒宮貴義氏は、次のように答えた。
「初動といいますか、そこの点につきましては、今回のオペレーションの重要な一つのポイントが、『空港まで、いかに安全に来ていただけるか』ということで、それについては、現地でアフガニスタンの情勢に鑑みますと、タリバンの検問所の調整がつかない限り、空港に安全にたどり着くことができないということもありまして、そこの調整に関して、いろいろなチャネルを使って調整をしていて、それが整ったのが26日ということでございましたので、そういう意味で、結果的にはこういう形にはなっておりますけれども、そういう事情があったという点でございます。
それから、邦人の退避のタイミングにつきましては、この15日のアフガニスタンのカブールにおける情勢というのは、この時に退避した大使館員も、実際に本当に命の危険がありうるというぐらい、最終的にはこれ、アメリカ軍の支援なんかも得ながら、アメリカのヘリのエアカバーによる防護を経て、ようやくカブール国際空港にたどり着けると。
そういうような状態でありましたので、この時点の判断として、最高責任者である大使館のトップが、必ず現地に残るという判断をする状況にすらなかったということで、私どもとしては、そういう判断をしたということでございます」
また、外務省の黒宮氏は、今後の見通しとして、以下のように発言した。
「今後の見通しにつきましては、予断を持って申し上げることはできませんけれども、そこはタリバンが今、現地を支配しているということもありますので、アフガニスタンがテロの温床にならないようにするということについては、国際社会としてメッセージを出していますし、それはタリバンに対しても、そういう形でしていただきたいという形で、今後も働きかけをしてまいりたいということでございます」。