過去最多の立候補者となりそうな横浜市長選、郷原信郎氏(元検事・弁護士)が立候補の意向を表明、立憲民主党が推す山中竹春氏(元横浜市大教授)との候補者調整は不発に終わる~7.16 横浜市長選 郷原信郎氏 出馬会見 2021.7.16

記事公開日:2021.7.18取材地: テキスト動画
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(取材・渡会裕 文・村上良太)

 2021年8月8日告示の任期満了に伴う横浜市長選に、7月7日すでに出馬意志の表明を行った元検事で弁護士の郷原信郎(ごうはら のぶお 66歳)氏が7月16日、横浜市役所で改めて記者会見を行い、正式に立候補を表明した。

 郷原氏は横浜市の「コンプライアンス顧問」をつとめていたが、辞職しての立候補となる。

 前回7月7日の出馬表明の際に郷原氏は、横浜市立大学元教授の山中竹春氏(48歳)を推薦している立憲民主党の県連会長に質問状を送ったと発表。今回はその経緯と結果の報告が1つの柱になっている。

 山中氏も郷原氏も現職・林文子市長が進めてきた横浜市のカジノ誘致計画には「反対」を表明している。したがって野党側の候補者が林立することで、与党候補を利することを避けるために、候補者調整も視野に入れて、郷原氏は立憲民主党側に質問状を送ったという。郷原氏は冒頭で、こう述べた。

 「山中竹春氏が横浜市長としてふさわしい人物であること。私の重点政策が概ね受け入れられること。この2つが満たされるのであれば、私は立候補の意思を撤回することもあり得ることを示しました。いわば解除条件付きの立候補の意思の表明だったわけですが、その(回答の)期限が昨日の7月15日でした。」

 結論として郷原氏は「残念ながら山中氏が横浜市長にふさわしい人物とは判断できなかった」と述べた。

 振り返ると、立憲民主党推薦の山中氏は横浜市長選への立候補表明の記者会見(6月29日)で、データサイエンティストとしての知見を活かす横浜市政をアピールしていた。しかし、山中候補の話は郷原氏を十分に納得させるものではなかったようだ。この日の会見で郷原氏は、その点を次のように述べた。

 「極めて重要な事項、山中氏がなぜ横浜市長を目指そうとするのか、その理由。そしてどのような市政を行っていこうとするのか。データサイエンティストとしてどのような市政を目指しているのか、という点について具体的におたずねしたことに対して、まったく納得できるような回答が得られませんでした」

 第一の点がそもそも満たされなかったため「2番目の政策の問題に入るまでもなく、山中氏を支援することはできない」と、立候補は撤回しないことに決め、「ここに立候補の意思を明確に述べたい」と語った。

 「一昨日(7月14日)の午前中に山中氏に代わって江田憲司(衆議院議員・立憲民主党代表代行)氏、青柳(陽一郎 衆議院議員・立憲民主党神奈川県連幹事長)氏、市議会議員の藤崎(浩太郎)氏、このお三方が私の六本木の事務所にお見えになって、そこでの話の結果から、今申し上げたような判断に至ったものです」

 郷原氏は、今回の候補者調整の上で最も重要だと自身で考える点について、次のように述べた。

 「山中氏は横浜市大のデータサイエンスの研究科長・教授という立場にあった。横浜市では2017年3月に『横浜市官民データ活用推進基本条例』が制定されて、まさにデータ活用が市の行政としても重要事項として取り組もうとしていた。そのデータサイエンティストとしての中心的な役割を担うべき立場にあったのが山中氏です。

 その山中氏が教授、研究科長、そして学長補佐という立場では横浜市の行政におけるデータの活用が行い得ないのか。なぜ市長としての立場に立たなければ今後十分なことができないのか。そこが第一の疑問でした」

 横浜市が「横浜市官民データ活用推進基本条例」を制定した翌年、横浜市と横浜市大は「データ活用に関する包括連携協定」を締結している。「データを重視した政策形成の推進」などの施策を進めることが目的とされ、横浜市大でデータ活用に詳しい教員が市職員への研修を行ったり、横浜市が保有するデータを大学に提供して現実の行政課題を学ぶことに役立てたりといったことがうたわれている。

 横浜市の公開資料によると、2018年に横浜市立大学医学部臨床統計教室の教授だった山中氏らは、横浜市医療局と連携して横浜市内のがんに関する実態把握のため、レセプト情報や特定健康診断等の情報データベースを分析する計画だった。さらに山中氏は横浜市立大学大学院データサイエンス研究科の研究科長でもあった。郷原氏の疑問は、山中氏がすでに横浜市大職員という立場で横浜市政と深く関わっていたということにある。

 「まずこれまで横浜市におけるデータの活用に関して、どのようなことが行われたのか。どのような提言が行われたのかを具体的に示していただき、それがそれ以上のことは今の立場ではできないんだ、ということであればそのあたりの事情をお答えいただきたい、ということを質問したわけです…」

 しかし、山中氏の説明を受けて訪ねてきた立憲民主党側の3人による説明に満足できなかったことを郷原氏は次のように述べた。

 「市長になったらデータについてはこういうようなことをやっていきたい、今までのやり方をこういう風に変えたい、ということは一応それらしく書かれたものはあったが、『なぜそれが市長でなければできないのか』、という点はまったく示して頂けなかった」

 今回、辞退の可能性がなくなって、正式に出馬の意向を表明した郷原氏は「横浜を市民に取り戻す『7つの重点政策』」を掲げている。

1.住民投票で横浜IRに決着
2.山下ふ頭活用の選択肢としての市場と「食の賑わい施設」
3.不要不急の予算を新型コロナ対策へ
4.政治的圧力との決別
5.住民自治を発展
6.市民の多様性が輝く横浜へ
7.市民の命と暮らしを守る

 この日の郷原氏の記者会見の場には、同じく横浜市長選に立候補を表明している坪倉良和氏(70歳)が同席していた。

 坪倉氏は横浜市中央卸売市場の水産仲卸の会社を経営してきた人物で、横浜生まれの「はまっ子」。郷原氏はカジノ誘致に代わる代案として、坪倉氏の提唱しているフィッシャーマンズワーフ構想に賛同していると語り、坪倉氏にマイクを渡した。これは郷原氏の「7つの重点政策」の2番目にある、山下ふ頭活用の選択肢としての市場と「食の賑わい施設」でもある。山下ふ頭はカジノ誘致の候補地だが、カジノの代わりにサンフランシスコのフィッシャーマンズワーフのような施設をつくろうというのである。

 郷原氏は「7つの重点政策」の第一番目に「住民投票で横浜IRに決着」とうたっているが、住民投票にはカジノの代替案も盛り込んだらどうかと語りかけた。坪倉氏の構想はその代替案の一例である。

 詳しくはぜひ、全編動画を御覧いただきたい。

■全編動画

  • 日時 2021年7月16日(金)16:30~
  • 場所 横浜市役所 9F 市政記者室(神奈川県横浜市)

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