2021年4月15日(木)午前10時半より、新宿区飯田橋にて、調布外環道事故被害補償に関する郷原弁護団記者会見が行われた。
この会見では、郷原信郎弁護士が率いる弁護団が、外環道大深度工事に伴って発生した被害に関し、被害住民連絡会の要求に沿って、4月9日に外環工事事業者と責任者である国土交通省関東地方整備局、東日本高速道路株式会社(NEXCO東日本)、中日本高速道路株式会社(NEXCO中日本)の三者に要請書を提出したことの報告と、その内容の解説が行われた。
会見には被害住民連絡会の河村宏氏も同席し、会の進行を行なった。河村氏より、3者に提出された「東京外環トンネル施⼯等検討委員会 有識者委員会 報告書に対する要請」の内容が、この重大事故の原因の核心を突いたものであることが語られた。
郷原弁護士は、「私は長年コンプライアンスに関する問題に携わっているが、このコンプライアンスとはよく単純に訳されるような『法令遵守』というだけのことではなく、法令の背後にあることも含めて、様々な社会の要請に応えていくという意味がある。事業者に、外環道を完成させることで首都圏はじめ社会に大きな利便を提供するという目標があるとしても、工事のトンネル掘削現場直上の住民に被害を与えるようなことは決してあってはならない」と訴えた。
要請書では以下のような点が要求されている。
●トンネルルート直上に、国道事務所、NEXCO中日本および調布市が管理する土地が並んでいるにもかかわらず、安全確認に必須のボーリング調査を実施せずに施工することを決定した経緯の説明を求める。
●「地上部からシールド掘進断面以深までの地層構成や地盤強度、粒度分布などについて確認していた(有識者委員会報告書より)」とあるが、事前調査として実施したボーリング及び微動アレイ探査では「エリアA」(※「陥没・空洞箇所周辺及び地質が類似している区間」)における掘削地盤の地層構成が把握できていなかったことが明らかとなっている。地上部からシールド掘進断面以深までの地層構成や地盤強度、粒度分布はいかなる手段で把握していたのか説明を求める。
●振動被害について、振動レベルの再検証は今となっては難しいが、事故周辺地域に様々に生じている振動が要因となった可能性のある家屋やインフラの損傷、地盤の液状化の痕跡等の事象に関する原因分析の実施。
●低周波音被害について、掘削工事を停止している現在も低周波音被害を訴える住民が少なからずいることから、要望する住民宅における低周波音の測定、並びに住民自ら測定が可能となるよう事業者による低周波音測定器の購入および周辺住民への貸し出し。
●地表面変位計測調査について、測量方法、測量地点、水準点、基準日、誤差オーダー等の基本情報の開示。
●「北行き」トンネルの直上で実施された微動アレイ調査の結果についての速やかな住民への開示・説明。(※「北行き」トンネル=被害箇所から数メートルのルートで並行するトンネル(道路進行方向逆向き)が造られる計画である)
●地盤の緩みの潜在的リスクを伴うエリア全域における地盤の緩みの有無の確認。「土木事業における地質・地盤リスクマネジメントのガイドライン」を適用した上での被害状況の把握の再検討。
また、事業者が編成した有識者委員会が、この工事の技術的検討を行なったが、この有識者委員会は、事故の当事者とも言える「東京外環トンネル施⼯等検討委員会」の委員で構成されている。会見では、このことも問題だと指摘された。
会見の詳細は、ぜひ全編動画を御覧いただきたい。