広島地方裁判所は2020年6月16日(火)、河井案里氏の公設秘書、立道浩(たてみちひろし)被告に懲役1年6カ月、執行猶予5年の判決を言い渡した。
これは、自民党の河井案里参議院議員が当選した2019年7月の参議院選で、河井氏の秘書が車上運動員に規定を上回る違法な報酬を支払ったという、公職選挙法違反に問われたものである。
立道被告は選挙戦において、ウグイス嬢14名に法定上限の日額1万5千円を超える報酬を含む、計204万円を支払った罪に問われていた。これまでの裁判で検察側は、立道被告が報酬額を算定し、支払いを指示したとして、懲役1年6カ月を求刑。立道被告と弁護側は事実関係を認めながら、「報酬額の決定に関与しておらず、幇助犯にとどまる」とし、罰金刑が相当と主張していた。
広島地裁冨田敦史裁判長は、「違法な報酬を支払うという陣営の方針に従って犯行に関与したという面も否めないが、罰金刑相当の軽い事案とは言いがたい。遊説の責任者で報酬の支払いも指示していた被告は従属犯ではなく共同正犯である」として懲役1年6カ月、執行猶予5年の判決を下した。
広島地方検察庁は3月24日の起訴と同時に、立道被告が公選法の定める「連座制」の対象となる組織的選挙管理者にあたるとして、「百日裁判」を申請していた。
「百日裁判」とは、起訴から100日以内に判決を出すよう努めなければならない規定のことであり、16日は起訴から85日目にあたる。
「連座制」とは、候補者と密接な関係者が、悪質な選挙違反で禁固刑以上の罪が確定した場合、候補者の関与がなくても候補者が連帯責任を負う制度。当初この制度の対象は出納責任者や候補者親族などであったが、1994年の公選法改正で選挙運動の調整や運動員の指揮監督をする組織的選挙管理者にも適用されるようになった。
立道被告が罰金刑にとどまった場合は連座制とならないため、今回の判決には注目が集まった。広島地裁は新型コロナ感染症対策のため傍聴席を13席に限定したが、そこに100名近くの傍聴希望者とマスコミが詰めかけ、抽選が行われた。東京からも多数のメディアが取材に訪れた。
今回の判決で禁固刑以上の罪状が言い渡されたため、広島高検は連座制適用の行政訴訟を起こすと見られ、その場合河井案里議員は当選無効となり、同一選挙区からの立候補も5年間禁止となる。
傍聴者の話によると、判決を聞く間、立道被告はしばしばうなだれて、罪の重さを受け止めていたように見えたという。
タクシーで地裁を去る立道被告は座席に突っ伏してカメラを避けていた。判決後、立道被告の弁護士は記者に対し、「控訴を検討中」とのみ述べた。