バイデン・民主党候補の勝利が確実になった11月7日、各国のメディアは早くも、バイデン新政権で外交問題が今後どのような展開を見せるか分析・予想する記事を掲げた。
中国共産党の機関紙『人民日報』の系列紙である『グローバル・タイムズ(環球時報)』は、「バイデン勝利、次なる米中関係の行方は?(What next for China-US relations? )」と題する分析記事を出した。
同紙は、中国の専門家たちが「大統領選の結果はすでに緊張している中米関係を『緩衝期間』に導き入れ、ハイレベルの対話の再開や両国間の戦略的相互信頼の再構築に向けた突破口を提供する機会になるだろうと予測し」つつも、「米国の指導者が交代しても、ワシントンの中国政策の全体的な方向性を変えることはないだろう」、「ホワイトハウスに誰が就任しようとも、米国は現在の対中政策をある程度維持するだろう」との認識で一致していると報じている。
さらに、「新政権のもとでも貿易戦争は続くのか?」「台湾海峡での中米衝突の危険性は高まっているのか?」「バイデン氏は香港をめぐる対中制裁をさらに後退させるのか?」「ファーウェイやTikTokなどの中国ハイテク企業への制裁は緩和されるのか、それとも強化されるのか?」「米国はトランプ政権の今後70日間で中国政策に『最後の狂気』を示すのか?」など、詳細な分析を掲載している。
- Biden wins: What next for China-US relations?(グローバル・タイムズ、2020年11月8日)
新大統領のもとで米中関係は対立がエスカレートするのか、それとも緊張緩和に向かうのか、日本にとっても世界にとっても大きな影響をもたらす2大超大国の関係について、一方の当事国である中国がどう考えているのかを知ることは重要である。
IWJはグローバル・タイムズの記事の仮訳を試みた。その文全文は、以下のとおりである。
バイデン勝利、次なる米中関係のゆくえは?
2020年の大統領選挙でジョー・バイデン氏が当選すると予想されていたことから、中国の専門家は、この結果はすでに緊張している中米関係に「息抜きの余地」を与え、ハイレベルなコミュニケーションの再開や両国間の戦略的相互信頼の再構築に向けた突破口を提供する機会となると予測した。
中米関係の悪化は悪循環に陥っており、戦略的相互信頼が損なわれ、ハイレベルなコミュニケーションが中断され、具体的な協力がほとんど行われていない、と復旦大学米国研究センターのXin Qiang副センター長はGlobal Timesに語った。
中国と米国がワクチン、疫病対策、気候変動に関する現実的な協力を再開することが期待されるようになったかもしれない、とXin Qiang氏は指摘した。いくつかの連絡メカニズムと行き詰まっていた対話の再開が期待できるが、「しかし、相互の戦略的信頼を再構築するには時間がかかるだろう」と彼は言った。
北京の人民大学の国際学部の准学部長であるJin Canrong氏は、「バイデンは悪化した中米関係を『緩衝期間』に導き入れるだろう」と、グローバル・タイムズに語った。
「バイデンは外交問題の取り扱いにおいて、いっそうの穏健さと成熟ぶりを示すだろう」とJin氏は言った。
バイデンは彼の外交チームにより多くの専門家を任命することができ、従って米中の緊張が一時的なタイムアウトを取ることが可能になった。
しかし、米国の指導者が交代しても、ワシントンの中国政策の全体的な方向性を変えることはないだろう、とJin Canrong氏は言う。ホワイトハウスに誰が就任しようとも、米国は現在の対中政策をある程度維持するだろう。
バイデン氏の対中政策は、過去4年間の中米関係や世界情勢が大きく変化したように、2016年のオバマ時代のアプローチに単純に戻ることはないだろう、とJin Canrongは述べている。
「中国を封じ込め、対峙することは、米国の2大政党間の戦略的コンセンサスであるからだ」
バイデンは異なる措置を意味するかもしれないが、異なる方向性ではない、とJin氏は主張した。
北京の国際関係大学戦略国際安全保障研究センターのDa Wei所長は、両国のエリートと国民は互いの国に対する見方を再形成しているとグローバル・タイムズ紙に語った。
「バイデン氏の中国政策は、トランプ時代の上に築かれることになる。実際、中国政策の抜本的な変更は、おそらくトランプ政権に残された大きな政治的遺産だ」とDa氏は語った。
米国では、「対中政策の見直しが必要だ」という超党派のコンセンサスがあり、「バイデン氏が就任してもそれは変わらないだろう」とDa氏は警告した。
「バイデン氏がどのような代替案を推し進めるのかについてはまだ明確ではない」とDa氏は指摘する。しかし「バイデン次期政権が中国との本格的なデカップリングに合意するとは思えない」との認識を示した。