欧州はコロナ「第2波」爆発的拡大中!! 世界の新規感染者数が最大に!!
ヨーロッパにおける新型コロナウイルスの再感染が爆発的な勢いで始まっている。
世界で累計感染者数の多い国の順番に見ていくと、1位米国が第3波の真っただ中、2位インド、3位ブラジルはようやく第1波を超えつつある。しかし、4位ロシアは第2波の真っただ中、ようやくピークが見えてきたところである。
第5位フランスも第2波のピークに近付きつつあり、第6位スペインは第2波の上り坂にある。第7位アルゼンチンはようやく第1波のピークを超えつつあり、第8位コロンビアは第2波を迎えつつある。第9位英国は第2波のピークに近づきつつあり、第10位メキシコは第2波の兆候がみられる。地域別に見ると、米国は第3波にあり、欧州が第2波にある一方、中南米諸国や中央アジアは第1波を超えてきているといった概況である。
- COVID-19 CORONAVIRUS PANDEMIC(worldometer、2020年11月1日閲覧、以下本文中で特に断りのない感染者数や死亡者数の情報はすべてこちらから引用)
世界全体で見ても、新規感染者数は急激な増加傾向にあり、10月30日は1日あたりの世界の新規感染者数がこれまでの最大の57万3800人となった。一日あたりの死亡者も、10月30日には7512人にと再び増加し、これまで最も多かった8514人(4月17日)に迫る勢いである。
▲表:世界の感染拡大(COVID-19 CORONAVIRUS PANDEMICよりIWJ作成)
人口約540万人のスロバキア(累計感染者数世界85位)では急速な感染拡大を受けて、世界で初めて、10歳以上の全国民を対象に抗原検査を実施するという。
▲「スロバキアの1日あたり新規感染者数の推移」9月中旬から1日あたりの新規感染者数が急増、10月下旬に初めて、3000人を超えた。(worldometerより転載、青い曲線は7日間移動平均を示す)
約5000ケ所の検査所に医療従事者や軍関係者、警官ら約4万5000人が動員される。スロバキアは欧州における春の第1波のときは、1日あたり新規感染者数が最大でも70人(3月27日)と、ほとんど感染が拡大しなかったが、9月11日に、1日あたりの新規感染者数が109人と、100人を突破して以降急増し、10月30日には3363人を記録した。
新型コロナウイスルの感染拡大の第2波は、欧州全体に広がっており、各国が再び各種の制限を強めている。ベルギー(累計感染者数世界18位)では10月2日から12月13日まで生活必需品を売る店以外を閉鎖し、夜間の外出を禁止。オーストリアでも10月3日から11月末まで夜間の外出を禁止、飲食店などの営業も禁止する予定である。
▲「ベルギーの1日あたり新規感染者数の推移」9月中旬ごろから第1波を大きく超える第2波が始まっている。(worldometerより転載、青い曲線は7日間移動平均を示す)
▲「オーストリアの1日あたり新規感染者数の推移」9月中旬ごろから第1波を大きく超える第2波が始まっている。(worldometerより転載、青い曲線は7日間移動平均を示す)
日本は世界の感染拡大に逆行して出入国を緩和! IWJ記者の質問に外務省は「分かりかねる」一辺倒!
日本政府は10月30日に出入国制限の新たな緩和策を決め、11月1日から、1週間以内の海外出張から日本に帰国した邦人などを対象に2週間の待機措置を条件付きで免除するというが、世界の情勢を見ての判断なのか。大いに疑問だと言わざるを得ない。
IWJ記者は、11月2日、外務省に10月30日付で入国緩和の考え方及びオリンピックとの関係、欧米諸国への対応について確認した。
IWJ記者「10月30日付けで、上陸拒否対象指定の解除となった国々があると思うのですが、それについてお伺いしたくお電話差し上げました。この(対象解除となった)10カ国はどのような経緯で入国緩和に至ったのか経緯をお教えください」
外務省外国課A「感染症の世界的な拡大は依然として続いているのですが、一部の国においては再拡大の傾向が見られているので警戒は必要としているのですが、一方で感染が落ち着いている国・地域なども考慮して、こうした各国地域の状態については、在邦人および渡航者に対して適切な情報発信を行っています。その点から政府としては、各国地域における新規感染者数の動向を含む感染状況や医療体制、移動制限の緩和や経済回復に向けたビジネス上のニーズなど様々な要素を考えて解除をしています」
IWJ記者「こちらの上陸拒否対象指定から解除された国から来た人でビジネスの目的でない人の入国を禁止しているということですか?」
外務省外国課A「現在はこれ以外の国でも入国を許可しているところもあります。現在はビジネス以外でも留学や家族、例えば日本にいる永住者の方の配偶者等の受入も開始しております」
IWJ記者「それは11月1日から変更になったということですか?」
外務省外国課A 「はい」
IWJ記者「来年のオリンピック開催を前提に欧米からの入国緩和の予定はあるのでしょうか?
外務省外国課A「そちらに関しましては私たちの方に情報が来ておりませんので正確にお答えすることができかねます」
IWJ記者「それではどちらにうかがったらよろしいでしょうか?担当の課があれば教えていただきたいのですが」
外務省外国課A「少々お待ち下さい」
外務省外国課B「お待たせいたしました。現在全く決まっておりませんので、決まり次第随時ホームページの方を確認していただければと思うのですが」
IWJ記者「欧米からの入国緩和の予定はないということですか?」
外務省外国課B「はい。わかりかねます」
IWJ記者「すみません。もう一度確認なのですが、上陸拒否対象指定が解除された10カ国以外にもビジネス目的や家族がいる人々は入国可能だとおっしゃっていたのですが、他に何カ国の国が解除されているのでしょうか?」
外務省外国課B「何カ国と正確には数えられないのですが、ホームページに対象の国が書いてありますのでそれを確認していただければと思います」
欧米諸国への対応についての外務省の対応は「わかりかねる」一辺倒であった。世界の感染状況に対してどう対応するのか、明確な指針を示すべきである。
日本は新規感染者数、重症者数、死亡者数のいずれを見ても「第3波」到来の兆候
日本国内を見ても、第3波到来の兆候が見られる。
1日あたりの陽性者数は、夏の第2波の最大1595人(8月7日)に比べると、868人(10月31日)とまだ半分程度だが、すでに春の第1波の最大708人(4月10日)は超えた。いったんは週平均500人程度まで下がっていた1日あたり新規陽性者数が増加に転じていることは明らかである。
▲「日本の1日あたり新規感染者数の推移」10月中旬ごろから緩やかに新規感染者数が増加、第3波の兆候が見られる(worldometerより転載、青い曲線は7日間移動平均を示す)
第2波はPCR検査を増やしたために「見かけの感染者数が増えただけだ」という意見もあった。しかし、PCR検査実施人数は、7月下旬に1日あたり2万人前後(民間をあわせた実施件数は1日あたり2万5000件程度)に達して以来増えていない。したがって、9月下旬から徐々に増えている陽性者数は、検査数とは無関係に増えており、陽性率が高くなってきているといえるだろう。
▲「日本の陽性者数」10月上旬から陽性者数が増えている。新規感染者数が快復者数を上回っていることがわかる。(厚生労働省HPより転載)
▲「日本の1日あたりPCR検査実施人数」第2波が始まった7月下旬ごろに2万人を超え、一時的に検査人数が増加したが、その後は2万人前後で一定している(厚生労働省HPより転載)
▲「日本の重症者数」10月上旬から徐々に重症者数が増えていることが懸念される。(厚生労働省HPより転載)
▲「日本の1日あたり新規死亡者数」第1波の後、7月に死亡者数は少なくなったが、第2波の後は高止まりしている。10月中旬からやや増加傾向が見られるのが懸念される。(worldometerより転載、茶色の曲線は7日間移動平均を示す)
世界ワースト1位の米国は、1日あたり新規感染者数が10万人を突破!!
再び世界に目を移すと、世界ワースト1位は米国で、現在第3波のただ中にある。1日あたりでみると、新規感染者数の最大が春の第1波の3万4808人(4月7日)、夏の第2波の7万9037人(7月24日)を超えて、10月30日に10万1461人という過去最高の記録を更新し、その後もまだ感染拡大の勢いが止まらない。
▲「米国の1日あたり新規感染者数の推移」3-4月にニューヨーク周辺で感染爆発し、第1波となった。その後7-8月にかけて南部で感染が拡大し第2波となった。10月に入って第2波を超える第3波が始まっている。(worldometerより転載、青い曲線は7日間移動平均を示す)
米国は、コロナ禍のなかでも、アンチ・ロックダウン運動、ブラック・ライブズ・マター運動、そして大統領選挙運動と、米国社会にとって抜き差しならない集会がつぎつぎに開かれてきた。コロナ禍で増大する社会不安と対立がさらに感染拡大を招く悪循環に陥っている。
▲ニューヨーク、ワシントンスクエアでのブラック・ライブズ・マター運動。(撮影:Rom Matibag、Unsplashより)
1日あたり死亡者数は、第1波の2742人(4月21日)、第2波の1851人(7月30日)に比べると、現在は10月25日から10月31日までの1週間平均で857人、直近のピークは1041人(10月29日)にとどまっているが、新規感染者数の増加から1~2週間遅れて死亡者数のデータが増えるのが通常であることを考えると予断を許さない。
▲「米国の1日あたり死亡者数の推移」8-9月は第1波の半分程度に抑制されてきたが、10月下旬より上昇に転じる兆候がみられる。(worldometerより転載)
▲「米国の陽性者数の推移」累計感染者数から累計快復者数を引いたものが陽性者数である。7月の上旬を除いて継続的に増え続け、既に陽性者が300万人を超えている。(worldometerより転載)
何より、現在の陽性者数の最大数が第1波のピーク時は116万3696人、第2波のピーク時は260万9547人だったのに対して、第3波の現在は、すでに310万4080人を数え、しかも急ピッチで増加中であることが懸念される。
<ここから特別公開中>
▲ニューヨーク・ブルックリン。コロナウイルスの取り締まりが厳しかった時期(第1波)、アメリカ国旗のN95マスクを着用する警官(撮影:Julian Wan、Unsplashより)
ロイターによると、米国では、教育機関の全面的な閉鎖がまだ続いており、エッセンシャルワーカー以外が全面的に閉鎖されていた状況は抜けたものの、まだ一部業種は閉鎖中である。また、いったん緩められた在宅の要請が、第3波の襲来を受けて再び始まっている。国境管理も、一部の国からの入国禁止を維持している。
世界ワースト10の国々! フランスの陽性者数は春の第1波の20倍!
第2波のピークが近いロシアは、1日あたり新規感染者数で第1波のピークだった5月11日の1万1656人に比べると、冬目前の第2波は、これからまだ増加する可能性があるとはいえ、直近の最大値で1万8283人(10月30日)と、春を上回っているものの、西欧諸国ほど極端な増え方をしてはいない。
▲「ロシアの1日あたり新規感染者数の推移」9月下旬ごろから急速に新規感染者数が増加、第2波のピークが近づいている。(worldometerより転載、青い曲線は7日間移動平均を示す)
現在の陽性者数も、第1波の最大値24万3868人に対して、10月末時点で37万4712人と、1.5倍程度にとどまっている。ただし、ロシアの場合は、1日あたりの死亡者数が第1波の最大232人に対し、現在366人(10月29日)で、絶対数が多いとまではいえないにしろ、第1波の1.6倍程度に増えていることが懸念される。
第5位のフランスは、1日あたり新規感染者数が、春の第1波の際には7578人(3月31日)であったのに対し、第2波にあたる10月25日の時点で5万2010人を記録した。第1波のピークと比べると約6.8倍に急増していることになる。また、現時点の陽性者総数も、第1波は最大時で5万9336人だったが、10月末現在は121万3179人と20倍以上になっており、医療体制の逼迫が懸念される。11月上旬にもフランス全土の病院のICUは、キャパオーバーになると言われており、非常に深刻である。
▲「フランスの1日あたり新規感染者数の推移」8月に入って徐々に増加、9-10月と急増している。バカンスの影響とも言われる。(worldometerより転載、青い曲線は7日間移動平均を示す)
1日あたりの死亡者数の最大は第1波では1437人(4月15日)であったが、直近の最大数は545人(10月30日)とまだ少ないものの、やはり2週間後に増加する可能性があり、予断を許さない。
こうした急激な感染再拡大の状況を受けて、フランスでは10月28日にマクロン大統領が2度目のロックダウンを宣言した。日本のマスメディアはこうした欧米の深刻な状況に対して、総じて鈍感であり、大きくは報じていない。五輪開催の可能性が遠のく情報を伝えたくないためなのかどうかは判然としないが、危機感が日本政府からも、大手マスメディアからも伝わってこないのが、もどかしい。
いったんは鎖が解除された教育機関も第2波の襲来を受けて、一部で閉鎖されたり、閉鎖が推奨されたりしている。一部業種での職場閉鎖も、休業や時短営業の要請から一部業種の閉鎖に戻っている。国境管理は第1波以降ずっと、一部の国からの入国禁止を継続している。
10月30日以降少なくとも12月1日までは、通勤や通学、買い物などを除く理由での外出が原則禁止となる。外出時には申請書や身分証を持ち歩く必要がある。飲食店や娯楽施設は閉鎖となり、欧州外との国境も封鎖される。
▲ある日のパリ、地下鉄で。(撮影:Davyn Ben、Unsplashより)
スペインでは外出禁止抗議デモ発生! 英国も2度目のロックダウンを11月5日より開始!!
第6位スペインも第2波を迎えて新規感染者が急増中でまだ先が見えない。
1日あたり新規感染者数は、第1波のピークで1万859人(3月20日)だったのに対して、現在2万5595人(10月30日)と2倍以上になっている。スペインは、現在陽性者数のデータを出していないため、最新の状況がよくわからない。1日あたりの死亡者は第1波で961人(4月2日)に対し、直近の最大数は267人(10月27日)である。
▲「スペインの1日あたり新規感染者数の推移」7月に入って徐々に増加、8月に急増、9月にいったんは抑制されたが、10月また急増している。(worldometerより転載、青い曲線は7日間移動平均を示す)
スペインでは急激な第2波の到来を受けて、10月25日に全土に非常事態宣言を出した。夜11時から翌朝6時までの外出禁止、州をまたぐ移動の禁止(各州の判断に委ねられる)、異なる世帯の集まりは最大6人までとしている。
AFPによると、10月30日、バルセロナ中心部、夜間外出禁止令や週末の移動制限に抗議する約700人規模の集会が開かれ、警察と集会参加者の間で衝突が起きたということである。地元警察によると、集会に参加した50人あまりが警察に「危険物を投げ始める」など暴徒化したため、警察がデモの解散に動いたという。
第9位の英国は、第2波のピークを迎えつつあるが、1日あたり新規感染者数は第1波で最大5618人(5月1日、注意:4月10日の7860人は異常値として)、直近の最大値は2万6684人(10月21日)と、3倍強である。英国も現在の陽性者数は公開していない。1日あたり死亡者数の最大は、第1波で1166人(4月21日)、直近では367人(10月27日)となっている。
▲「英国の1日あたり新規感染者数の推移」9月に入って急増、10月下旬に勢いがやや鈍化、今ちょうど第2波のピークを迎えつつあると思われる。(worldometerより転載、青い曲線は7日間移動平均を示す)
英国では第2波の到来を受けて、ボリス・ジョンソン首相は10月31日、新型コロナウイルスの感染再拡大を受け、11月5日から12月2日までの4週間、2度目のロックダウンを開始すると発表している。ただし、春の第1波とは異なり、教育機関の閉鎖はしないという。
▲ロンドン中心部で行われた自由と反マスク、反ロックダウンの集会で、警官とにらみ合う参加者。(撮影:Ehimetalor Akhere Unuabona、Unsplashより)
世界ワースト50位の国々、欧州諸国の「第2波」顕著! 「優等生」ドイツも苦戦!!
その他、50位までの状況を見ると、感染者数が増加傾向にある国は、以下の19カ国である。累計感染者数の順位とともに、カッコ内に1日あたりの新規感染者数の春の第1波の最大値と直近の最大値の比較(倍数)を示す。春に感染がほとんど拡大しなかった国々はカッコ内に(第1波)と記している。
13位イタリア(8.9倍)、14位イラン(2.2倍)、15位ドイツ(2.8倍)、18位ベルギー(9.7倍)、21位ウクライナ(第1波)、23位トルコ(0.4倍)、24位ポーランド(第1波)、25位オランダ(7.7倍)、27位チェコ(第1波)、30位ルーマニア(12.5倍)、31位カナダ(1.8倍)、32位モロッコ(第1波)、33位ネパール(3.4倍)、35位スイス(6.6倍)、37位ポルトガル(3.9倍)、39位UAE(1.6倍)、43位スウェーデン(2倍)、45位カザフスタン(0.2倍)、49位オーストリア(4倍)
これら19カ国の中で、ネパールの3.4倍が非ローロッパ圏では最大の倍数だが、ヨーロッパ勢が軒並み、第1波の2倍から12.5倍の規模の第2波を迎えつつあることがわかる。
ルーマニア(12.5倍)、ベルギー(9.7倍)、イタリア(8.9倍)、オランダ(7.7倍)、スイス(6.6倍)、オーストリア(4倍)、ポルトガル(3.9倍)ドイツ(2.8倍)、スウェーデン(2倍)
ヨーロッパの優等生と言われたドイツだが、やはり感染抑止に苦戦している。春の第1波のときは1日あたり新規感染者数の最大が6933人(3月27日)だったが、直近では1万9367人(10月30日)を記録し、2.8倍になっている。
▲「ドイツの1日あたり新規感染者数の推移」8-9月に徐々に増加するのを抑制していたが、10月に入って急増している。(worldometerより転載、青い曲線は7日間移動平均を示す)
ドイツ政府は10月28日に、再び厳しい行動制限や都市封鎖を最低1ヶ月に渡って実施すると発表した。学校の全面閉鎖はしないものの、11月2日からは飲食店や娯楽施設などの営業を禁止する予定である。
「集団免疫政策」のスウェーデンは、どの数値も隣国の6倍〜10倍!
コロナ対策を事実上放棄し、個々人の免疫力にゆだねる「集団免疫政策」で話題を集めたスウェーデンだが、やはり「第2波」を迎えている。累計感染者数は12万4355人、死亡者は5938人になった。
▲「スウェーデンの1日あたり新規感染者数の推移」6月には集団免疫を獲得しているはずだったが、10月に入って感染者が急増、第2波を迎えている。(worldometerより転載、青い曲線は7日間移動平均を示す)
▲「北欧3国の累計感染者数」集団免疫政策のスウェーデンは北欧3国の中で他国の6〜8倍の感染者数を出している。同じように第2波を迎える中で、スウェーデンの増加が特に大きいことも注目される。(worldometerよりIWJ作成)
隣国のノルウェーもやはり第2波を迎えつつあるが、累計感染者数2万331人、死亡者は282人。フィンランドは累計感染者数1万6291人、死亡者は358人である。スウェーデンの隣に位置しながら、集団免疫政策はとらず、スウェーデンとの国境を厳格にシャットダウンした効果があらわれている。
スウェーデンの直近の1日あたり新規感染者数の最大値は3396人(10月28日)だが、ノルウェーの最大値は498人(10月30日)、フィンランドの最大値は344人(10月30日)で、どの数値をとってもスウェーデンは他の2国の6倍から10倍の数になっている。第2波の規模を見ても「長期的に見ればスウェーデンの集団免疫作戦が正解」などとは逆立ちしても言えない状況だ。
「第1波」をまぬがれた東欧で今、大きな「第1波」が半年遅れて到来! 感染拡大が小さかった国も今後が懸念される! 日本も要注意!
また、西ヨーロッパ全体が第1波を迎えていた春の時期に感染拡大が比較的少なかった東欧諸国で、この秋、大きな第1波を迎えている国々があることは注目に値する。
ウクライナは直近の1日あたり感染者数の最大値が8752人(10月31日)、ポーランドは2万1897人(10月31日)、チェコ1万3605人(10月30日)、ルーマニア6546人(10月30日)と急速に感染が広がっており、まださらに拡大する勢いである。
春の第1波は、スイスを囲むように、ドイツ南部、フランス北西部、イタリア北部で感染爆発が始まった。それはすぐに、スペイン、ベルギー、オランダ、英国へと地理的に隣接する地域へと広がっていった。しかし、東欧諸国まではやや距離があるためか、爆発的な感染は起こらなかった。それらの東欧諸国に半年遅れて感染爆発がやってきたようにも見える。
コロナの感染拡大に影響を与えるものとして、コロナウイルスの型、これまでのワクチン歴、人種や各国の文化や政策、社会の格差など多様な要素が取り上げられてきたが、地理的な問題はあまり取り沙汰されてこなかった。
感染拡大を各国別に見ることにこだわりすぎると、地理的な問題を見逃す可能性がある。アメリカは11月10日ごろには累計感染者数が1000万人に達すると思われ、世界ワースト1位の座を当分どこにも譲りそうにない。
しかし、一方で、大陸ごとに大きく分けて捉えれば、北米(中部を含む)の累計感染者は1142万人(総人口5億9067万人)、南米は974万人(総人口4億3196万人)、欧州は1046万人(総人口7億4780万人)と、国別に見るほどには、感染率に大きな差が見られない。
ちなみにアジアの累計感染者数も1385万人とやはり1000万人規模だが、総人口が46億2106万人と多いため、感染率は北米の1/6程度と低い。さらにアフリカは、総人口が13億5126万人と北米と欧州の合計ほどもあるにもかかわらず、累計感染者は181万人と、北米の1/15程度の感染率にとどまっている(アフリカの感染率の低さは医療体制の不備に由来する可能性もある)。
▲「ウクライナの1日あたり新規感染者数の推移」欧州における春の第1波のときは感染が抑止されていたが、8月に入って増加傾向が見られ9-10月と急増、現在もピークが見えない。(worldometerより転載、青い曲線は7日間移動平均を示す)
▲「ポーランドの1日あたり新規感染者数の推移」欧州における春の第1波のときは感染が抑止されていたが、10月に入って急増、現在もピークが見えない。(worldometerより転載、青い曲線は7日間移動平均を示す)
▲「チェコの1日あたり新規感染者数の推移」欧州における春の第1波のときは感染が抑止されていたが、9月に上昇傾向が見られ、10月に入って急増、11月2日現在はピークに近づいていると思われる。(worldometerより転載、青い曲線は7日間移動平均を示す)
▲「ルーマニアの1日あたり新規感染者数の推移」欧州における春の第1波の4月に一度やや増加、7月増加を8-9月は抑制したが、10月に入って急増、現在もピークが見えない。(worldometerより転載、青い曲線は7日間移動平均を示す)
このことから、3月から5月にかけての世界的な第1波の間、比較的感染を抑止できていた国々でも、今後感染が拡大する恐れがあるといえそうだ。
東欧諸国のように、これまでに感染がほとんど拡大しなかった地域であっても、今後はわからない。日本を含め、東アジアも油断をすれば、感染が拡大してゆく可能性は大いにある。
言い換えるならば、東アジア最大の国である中国が短期間に感染を封じ込めたことで、周辺諸国への波及も少なくて済んでいるということになる。
日本と中国、新型コロナウイスル対策で圧倒的な差!100万人あたりの感染者数は中国の4.7倍!!
日本も累計感染者数は10万392人となり、中国の累計感染者数8万5997人を大きく上回り、世界50位となった。死者数も少ないと言われていたが、いつの間にか累計で1755人、世界49位である。日本の総人口は1億2634万人、対して中国の総人口は14億3932万人と約11.4倍である。100万人あたりの感染者数でみると、日本は14人で、中国の3人の4.7倍である。
▲「日中韓累計感染者数」中国は3月1日に8万人を超えたがその後は感染爆発を起こしていない。韓国は3月に第1波を超え8-9月に第2波を迎えたが、増加率は日本ほど急ではない。7月以降の日本の増加が顕著である(worldometerよりIWJ作成)
また、日本の11月2日時点の陽性者数は6420人だが、中国は363人にとどまっている。
これは中国の総人口を考えれば、驚異的な数字である。中国政府が不断に感染を抑え込む努力をし続けていることを付け加えておかなくてはならない。
▲「中国の1日あたり新規感染者数の推移」3月以降現在に至るまでほぼ感染抑制に成功している。(worldometerより転載、青い曲線は7日間移動平均を示す)
中国青島市は、10月12日市内の病院で12名の感染者が確認されたことから、全市民900万人の新型コロナウイルス検査を実施すると13日に発表した。そして、ジェトロによれば「10月15日午前8時時点で994万人強のPCR検査が完了し、764万人強の分析を終えた」という。
- 中国の青島市、全住民900万人に新型コロナ検査へ(ウォールストリートジャーナル、2020年10月13日)
世界的に見ても、当初は「武漢ウイルス」と言われたものの、徹底した大規模検査と隔離、そして新型コロナウイルスに関連する医療外交、ワクチン開発、経済活動、どの要素をとっても中国の圧勝は明らかである。
こうした事実を、もっと日本のメディアは報じる必要がある。
▲中国北京、Galaxy Soho、2013年竣工、ザハ・ハディド設計。中国には、世界で最も前衛的なデザインの建築が次々と生まれている。(撮影:Road Trip with Raj、Unsplashより)
新型コロナウイルスについては、感染者の後遺症が徐々に明らかになってきた。新型コロナウイルスがもたらす健康被害の実態がまだ良くわからないのに、「インフルよりも弱い」などと軽視すべきではない。感染者が増えれば死亡者も増える。十分な注意が必要だ。
※これは日刊IWJガイド2020.11.2号~No.2972号に掲載された記事を大幅に加筆・修正したものです。