7月8日に開始されたイスラエルによるガザ地区攻撃は、17日の地上軍投入を経て、8月1日にはいったん72時間の停戦に入った。しかし、これは数時間で継続不可能になり、長期化する攻撃の結果、ガザ地区での死者はすでに1500人を超えている。
アラブ文学研究を専門とする京都大学教授の岡真理氏は、この3月に封鎖状態に置かれるガザを訪問するなど、パレスチナ問題に取り組んできた。7月26日、岩上安身のインタビューに応じた岡氏は、イスラエル国家建設の根源にある「民族浄化」を軸に、歴史経緯を踏まえ、繰り返されるパレスチナ人攻撃の問題を論じた。
■イントロ
■2014.7.26 【PickUP1】「ハマスがテロリストなら、イスラエルだってテロ国家」岩上安身による岡真理・京都大教授インタビュー
■2014.7.26 【PickUP2】「ユダヤ人が2000年の放浪後、パレスチナに帰還を遂げて祖国を再建したというのは神話」 岩上安身による岡真理・京都大教授インタビュー
■2014.7.26 【PickUP3】「パレスチナに自分たちの国を再建した=シオニズムは正統派ユダヤ教では否定されていた」岩上安身による岡真理・京都大教授インタビュー
- 岡真理氏(京都大学大学院人間・環境学研究科教授、現代アラブ文学、パレスチナ問題、第三世界フェミニズム思想)
- 日時 2014年7月26日(土)
- 場所 京都大学吉田南キャンパス(京都市左京区)
「イスラム原理主義」~内実のない言葉を用いる主流メディア
大手主要メディアでハマスのことが報道されるたび、「イスラム原理主義組織」であり「ガザ地区を実効支配する」と説明される。しかし、岡氏によれば、「イスラム原理主義」という言葉は、様々な現象に貼られる「レッテルのようなもの」だという。中東の専門家は学術用語として、この言葉を用いることはないと岡氏は言う。
「メディアが使う『イスラム原理主義組織』『ガザ地区を実効支配』という言葉を通じて、過激でおどろおどろしい武装組織が力にものを言わせて武力でガザを支配している、という印象が作られてしまう」。
ハマスはれっきとした政党だ。2006年に実施された評議会選挙で民意の付託を受けている。政治的立場は、イスラム法による社会統治を目指すもの。これ自体は、メディアを通じてイメージ化される「イスラム原理主義」とは何の関係もない。
ハマスは、軍事部門と呼べるような組織を確かに抱えてはいる。しかし、これだけを持ってハマスをテロリスト集団と呼ぶのは不当だと岡氏は指摘。背景にある、ガザが長い間占領されてきた地域だという事実が見過ごされていると語る。
「ガザは占領されている場所ですね。占領下の民衆による占領軍へ武装闘争は、国際法上で、正当な抵抗権としてみなされています。そうであるならば、ハマスに軍事部門があるというだけでテロリストと呼ぶことはできないわけです」。
何がなんでもハマスをテロリストにする。そうすれば、思う存分叩くことができる。こんな考えを正当化する力が、「テロリスト」という言葉には与えられてしまっている。「9.11以後は、『テロリスト』とレッテルを貼りさえすれば、何でもできることになってしまった」と岡氏は話した。
イスラエル国防軍は「芝を刈る」~封鎖の構造的暴力
2006年の評議会選挙でハマスが勝利し、ガザの地を実効統治し始めると、イスラエルは封鎖という行動に出る。「封鎖」と一言で片付けてしまわれがちだが、現地で暮らす人びとにとってどれほどの暴力なのかが十分に知られていない、と岡氏は実感を語る。
「境界にそって築かれた分離襞により、文字通り、監獄のように180万人が閉じ込められているのです。随所に監視タワーがある。境界線から1.5キロメートルに立ち入ると、発砲される危険がある」。
陸路、海路、空路のすべてが完全封鎖。住民の出入りが不可能なのはもちろん、物資、医薬品、電力など生きるために必要なあらゆるものが入ってこない。生活は常に低水準に置かれる。ガザでは乳幼児の52%が栄養失調状態、世帯の6割が食糧難の状態にあり、人口の8割に相当する150万人が、何らかの国際援助がなければ食べていけない。
封鎖が恒常的にある一方で、さらに今回のように、数年に一度の大規模な攻撃作戦が実施される。それでも攻撃を受ける度に現地の人はまた立ち上がろうとする。「5年半前の攻撃をそれでも乗り越え、また基盤を整備する。しかし、そうするとまた、4年後の2012年に攻撃が起こる、さらに2年もせずに、今回のような攻撃がまた開始される」。
「この繰り返される攻撃のことを、イスラエル軍の隠語で『芝を刈る』と言うそうです。放っておけば人口がどんどん増え、破壊したものも元通りになる。だから、定期的に芝を刈るように、攻撃で破壊する。生活するのがやっとの状態に常にしておくのです」。
民族浄化とイスラエル国家建設
イスラエル周辺諸国の関係性がよくわかり、勉強になりました。
「イスラム原理主義」~内実のない言葉を用いる主流メディア
岡先生の文学者ならではの情熱のこもった素晴らしい解説、初めて、基本的なところからこの問題を理解することができました。このような長時間のインタビューを可能にしたこの番組に感謝します。南カリフォルニアの大学教員住宅に住み、沢山のユダヤ人の友人がいます。普段はリベラルで私と全く変わらない彼らが、”ユダヤ性”についてはひどく頑で、子供をユダヤ人学校に行かせ、13歳になると”成人式”儀式を一年もの準備をし大金をはたいて立派にさせる、、、、今回の攻撃に関しても極めて保守的、、、どうしても理解ができないことがまだまだありますが、とりあえず、基本的なことを理解することができ感謝です。この、目の前で舞台のように繰り広げられる虐殺に対して、私のような人間にも”具体的にできる行動”をもっと教えていただければ有り難いです。
『ユダヤ人=シオニスト』ではない。世界の大勢のユダヤ人が、シオニズムというイデオロギーに抑圧されているパレスチナ人に連帯している」
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自分が如何に無知であるかを気付かされた。