「法の支配に対する挑戦が行われている」――気鋭の若手憲法学者が安保法制を進める政府・与党の「無法者」ぶりに警鐘を鳴らす!~岩上安身による首都大学東京准教授・木村草太氏インタビュー 2015.6.16

記事公開日:2015.6.17取材地: テキスト動画独自
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(IWJ・原佑介、平山茂樹)

 連日、国会で審議が続いている、集団的自衛権の行使を含む安全保障関連法案。2015年6月4日には、衆議院憲法調査委員会で、与党である自民党と公明党が推薦した早稲田大学教授の長谷部恭男氏が「違憲だ」との意見を表明した。このことにより、野党の追及は勢いを増し、国会前などで若者が抗議行動を展開するなど、国民による「反対」の声はより一層強まっている。

 6月15日には、長谷部氏と慶応義塾大学名誉教授の小林節氏が日本記者クラブと外国特派員協会で記者会見を行い、安保関連法案について改めて「憲法違反」と指摘。「(最高裁の)砂川判決から集団的自衛権行使を合憲とする主張は、法律学の基本原則と衝突する」と述べた。

 国会で審議が行われている安保関連法案は、1.在外邦人の警護・救出の拡大、2.国連PKOへの協力拡大、3.自衛隊による外国軍の後方支援の拡大、4.集団的自衛権行使の限定容認の4つから構成される。

 では、これらはそれぞれ、法理論上、どのような点で違憲なのか。『憲法の条件~戦後70年から考える』(NHK出版新書)、『テレビが伝えない憲法の話』(PHP新書)、『憲法の創造力』(NHK出版新書などの著書があり、報道ステーションのレギュラーコメンテーターも務める首都大学東京准教授の木村草太氏に、6月16日、岩上安身が話を聞いた。

■イントロ

  • 日時 2015年6月16日(火) 16:00~
  • 場所 IWJ事務所(東京都港区)

国会でまったく議論されていない、安保法制の国際法上の問題点

岩上安身(以下、岩上)「本日は、現在国会で審議が続いている安保法制について、木村草太さんにお話をうかがいます。木村草太さんは1980年生まれ。首都大学東京准教授で、弱冠35歳の若手憲法学者です。東京大学時代は、長谷部恭男早稲田大学教授(前東大教授)のゼミにも参加されていました。芦部信喜氏の孫弟子にもあたる、ということです。

 現在、国会に提出されている『戦争法案』についてお聞きします。安倍総理は、閣議決定後の記者会見で、戦争に巻き込まれることは『絶対にない』と言っていますが、これについて、いかがでしょうか」

木村草太氏(以下、木村・敬称略)「根拠がないと思いますので、コメントもしようがありませんね。不安を払拭したいなら、実際に米国から要請があったらどうするかということを言うべきです。この言葉を好意的に解釈するなら、『日本国民が米国の戦争に付き合う人を首相に選ぶことはないだろう』ということかもしれませんね」

岩上「労働者派遣法改正案で、維新が与党に擦り寄り、野党に亀裂が入っています。橋下徹大阪市長と安倍総理が、6月14日に会談を行いました。橋下氏は、『自衛は他衛』などとツイートしていましたが、『隠れ・第2自民別働隊』としての正体をあらわし、与党の採決に協力するのではないか、と思われます」

木村「ホルムズ海峡の機雷掃海は個別的自衛権でできる、という主旨にも見えるので、政府とは一線を画していると言えます。しかし、集団的自衛権の行使について、維新も安倍政権も、立場が一つにまとまっていません。だから動きがわかりにくくなっている、そんな印象です。

 集団的自衛権という言葉の定義が共有されていないことが問題です。ホルムズ海峡に機雷を設置するのは、いったいどの国でしょうか。中国の脅威が強調されていますが、中国ではないでしょう。『誰が誰に対して武力行使をしているのか』にもよります。

 詳細なシチュエーションがなければ『国際法上の扱いがわからない』ということ。曖昧です。停戦後、領海国の同意を得たものであれば武力行使にならない可能性もあります。この論点は、憲法の話の前に国際法上の論点をみてからにしてくれ、ということですね」

岩上「これだけホルムズ海峡と言いながら、どういう戦いを指すのか国会では議論されていない、ということですね」

木村「メディアでも国際法学者の話は全然出てきませんね。『そもそも国際法上できるのか』という論点が研究されていません」

「存立危機事態」をめぐり、政府・与党は説明が不足している

岩上「新三要件についてお聞きします。『日本が武力攻撃されるか、日本と密接な関係にある他国が武力攻撃され、我が国の存立が脅かされ、国民の生命、自由及び幸福追求の権利が根底から覆される明白な危険がある』とあります。しかし、密接な国が明示されていないため、歯止めがかからなくなる恐れがあるのではないでしょうか」

木村「密接な関係にある他国、と言われるとややこしいんです。先入観なしに読んだら、『これだけ危険な状況なら何かしなければいけない』ということになります。

 急迫不正の侵害なので、『武力行使』もそんなに変な話ではないんです。なぜこれが不思議な文言になっているか。存立危機事態に関しては、『昭和47年見解』で、存立危機事態に武力行使するのはやむを得ない、としています。

 では、存立危機事態とは何か。それは、日本が武力攻撃をされている事態、ということです。これは極めて真っ当です。法学的には、『国家が存立している』というのは『主権が存立している状態』のことです。そして武力攻撃とは、『主権国家の主権を外国が制圧する』という概念。つまり、主権が基準です。

 外交とは、対等に主権を尊重するか、相手国の主権を無視するかの二者択一です。外交は前者で、戦争は相手国の主権を制圧する後者です。従来の解釈は、存立を脅かされる時には個別的自衛権で武力行使をしていい、というものでした。

 『外国への攻撃で我が国の存立が脅かされる』というのが今回の新要件であれば、これまでの解釈と何の意味も変わらない、と読むことができます。一方で、存立が脅かされるのが『主権の侵害』だけでなく『経済』も含まれるのなら、全く意味が変わってきます。自民党は、例えば、『油』や『名誉』といったことも存立危機事態に含めています。これでは従来の読み方と違ってきます。その読み方が正しいかということが問われなければなりません。国会で野党が追及していますが、政府は意味をまったく明確にしようとしません。文言の意味を曖昧にしています。

 この文言ではなく、空文化しようとしていることが問題です。自民党は狙ってやっています。安倍総理は嫌がりましたが、『根底から覆される明白な危険』というのは公明党が入れさせました。ですので、本来、政権はこの文言を避けたいということです。このままいけば、この文言は空文化し、『日本と関係ある他国が武力攻撃され』たときに日本が武力行使する、という方向で運用するかも知れません。これは憲法9条だけでなく、自分たちで決めた文言さえ守らない。法の支配自体を破壊しようとしている。無法です。

 この閣議決定が出た時は、ほとんどの憲法学者が『何を言っているかわからない』となりました。その後の答弁で、政府が『根底から覆される明白な危険』を無視しているのを見て、『これは駄目だ』となりました」

菅義偉官房長官、稲田朋美政調会長、高村正彦副総裁ら、「無法者」の面々

岩上「稲田さんなどは、『違憲かどうかはどうでもいい』などと言っていますが、これはすごい発言ですよね」

木村「すごい発言です。憲法違反ですし、自分たちで作った法律の文言も無視する。これは、法の支配自体が挑戦を受けているということです。専制主義…『絶対なんとか主義』ですよね(笑)。こうなったら、何を言っても信じられない。『徴兵制をしない』と言っても信用できません。法の支配を抜け、人類が『もう勘弁してくれ』と言った体系に戻ろうとしています。

 今やっている方々は、法案の合憲性を信じていると思います。『自分たちが合憲だと言っているのだから合憲だ』と。ルールはあるが、あえて無視しているうちはまだ話が通じる。時速100キロ上限というルールを120キロと思っている人とは話になりません。『裸の王様だ』との指摘に『裸でも恥ずかしくない!』と言い返しているようなものです。憲法学者は技術に長けた人たちです。技術者として彼らの考えを読み、反論していく、ということが重要です」

安保法制の整備により、「北朝鮮による拉致被害者を奪還する」という論理のデタラメさ

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