【沖縄県知事選スペシャル】「アメリカ流非対称戦争」への準備が進む中の知事選 〜岩上安身による元宜野湾市長・伊波洋一氏インタビュー 2014.10.17

記事公開日:2014.10.18取材地: テキスト動画独自
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(取材:岩上安身、記事構成:藤澤要)

 元宜野湾市長の伊波洋一氏に、岩上安身が10月17日、インタビューを行った。インタビューは、沖縄県知事選に関する話題から始まり、南西諸島をめぐる米国の安全保障戦略と日本の置かれた状況、そして国内の政治問題へと大きな広がりを持つものとなった。

 昨年2013年12月に仲井真知事が、米軍基地新設を前提にした辺野古埋め立てを承認。日本政府による沖縄振興策と引き換える形だった。「県民はそれを忘れていない」と伊波氏は指摘。「仲井真さんのとった行動は、県民の心の傷となっています」と語った。

 日本が置かれた安全保障環境について伊波氏は「外側からみれば、日本が一番危険」と指摘。「世界から見れば、尖閣を中心とする地域にホットスポットがある」との見方を示した。

 米国は、東アジア地域の安全保障戦略において、中国への対処を最大の目標とする。そこでは「アメリカ流非対称戦争」が念頭に置かれ、日本の集団的自衛権行使を前提とした上で、自衛隊も積極的な役割を負うことになる。

 伊波氏は、海上自衛隊幹部学校の『海幹校戦略研究』に掲載された論文を参照しながら、この「アメリカ流非対称戦争」について詳細に解説。これらの論文には、南西諸島における「ゲリラみたいな役割」を果たすものとして、自衛隊が位置づけられているという。

 他方、現政権の姿勢と日本を覆う右傾化について伊波氏は、「日本はどうしようもないところまで落ちていくのか」と懸念しながらも、国民一人一人の選択により、極端に右に揺れた振り子がもとに戻る機会はあるだろうとの見解を示した。

■イントロ

  • 日時 2014年10月17日(金)13:00~
  • 場所 沖縄県宜野湾市内

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※以下、実況ツイートをリライトし再構成したものを掲載します

仲井真知事による辺野古埋め立て承認は「県民の心の傷」

岩上「今日は宜野湾市に来ています。伊波洋一さんには、宜野市長をつとめられていたころからインタビューさせていただいています。まずは、沖縄県知事選をどのようにごらんになりますか」

伊波氏「昨年末の仲井真弘多さんの辺野古埋め立て承認に対する審判としての選挙です。県民生活の向上などの課題もありますが、それらの課題の土台にある、大きな選択として、基地問題があります。

 昨年末から、かつて自民党であった人が辺野古承認に反対するという動きに入っている。県民の意志として示したいという思いがあるのだと思います」

岩上「4年前の知事選で、沖縄県民は埋め立て承認をする人を知事に選んだわけではありませんからね」

伊波氏「私も4年前の知事選の候補者でした。当時、仲井真さんは『この間まで辺野古容認と言っていた人が、いま言い出しても信用できない』と言われて、顔を真っ赤にして怒ったことを思いだします。

 結果的に沖縄県民は騙されたのかな。私は仲井真さんは県民の感覚とずれていると思います。県民はそれを忘れていないと思います。仲井真さんのとった行動は、県民の心の傷となっています。

 仲井真さんは、昨年12月25日の安倍総理との会談後で振興策をたくさんもらい、高揚感があったようです。

 振興策が沖縄経済の持続的成長に寄与することはない。大きな建設事業というのは、経済安定成長の阻害要因になるでしょう」

岩上「辺野古に恒久的な基地を作り、属国化させるというおかしな話。本来は右派も反対するべきことです」

伊波氏「米政府にも日本外務省にも『死んでしまった計画』という暗黙の了解があった時期がかつてあった。それを安倍政権が復活させてしまいました」

下地幹郎、翁長雄志、喜納昌吉、各候補の動向

岩上「下地さんは辺野古移設について県民投票に委ねようと。真意は県内移設にあると私は見ていますが」

伊波氏「下地さんはエネルギッシュに選挙運動する人。その部分は買いますが、向かう方向が県民とは違うと思っています。ただ若い人にはアピールするでしょうね。

 マスコミによれば、下地さんが狙っているのは、『仲井真超え』らしいのです」

岩上「つまり、保守層の支持をと」

伊波氏「この間の討論でも、熱心に安全保障について語っていました。

 仲井真さんは県民を裏切り、それを県民は受け入れないことは分かっている。そこで下地さんは、この選挙期間中の世論調査で仲井真さんを超えたい。1位は翁長さんですから、仲井真さんを超えて2位になろうとする。下地さんはその流れを作ろうとしているのです。

 ただ、下地さんは公明党と反目している経緯があり、そこから(票は)流れてこない」

岩上「公明党は自主投票ですが、どこに流れますか」

伊波氏「一部は翁長さんに流れるでしょうね」

岩上「喜納昌吉さんからは『翁長さんの頭には基地建設が既定路線』という発言があった。私のインタビューでそのことについて聞きましたが、翁長さんは気色ばんで反論しました」

伊波氏「その場面は見ていました。『大田県政の時に振興策が多かった』という話は、私たちも話す、当然のことです。喜納さんの言い分は、ちょっと分からない。喜納さんが言葉尻をとらえて主張していることはどうなのか」

岩上「喜納さんは8日に『翁長さんが条件をのめば出馬しない』と会見したが、その後の私のインタビューで、民主党から除名されたし、出馬するとはっきりとおっしゃいました」

伊波氏「報道では、翁長さんは基地阻止に『あらゆる手段を講じる』と公約に入れるとしている。翁長さんの政策発表はまだで、時間がかかっている点ではマイナスですが、しっかりしたものができる点ではプラス。辺野古については、最もはっきり公約で示すべきです」

岩上「沖縄に基地があり、攻撃対象となる沖縄はミサイル攻撃2発で終わり。この話を下地さんにしましたが『ずっと言われてきたが、そんなことは起きなかった』という答えでした。このような考え方は革新のものだということだそうです。

 一方で、翁長さんはミサイル2発で沖縄は終わりと話されました」

伊波氏「翁長さんの話は、水爆のことを指しているのでしょう。下地さんは『今まで撃たれなかった』と主張する。その通りですが、しかし、それはこれまでその能力を持つ国がなかったからです。

 中国がGDPで米国を追い抜く時代です。米国は、中国が撃ち込めることを前提にした安全保障上の対応にシフトしてきています」

岩上「下地さんは、50代で冷戦時代の申し子。一発もミサイルを撃たれなかったことが彼のリアリティなのかもしれません」

気づいている人が少ない「尖閣諸島を含む南西諸島が一触即発の地域」

伊波氏「外側からみれば、尖閣諸島を含む南西諸島が一触即発の地域なのですが、そこに住んでいる人が、必ずしも気づいていないのです。世界から見れば、尖閣を中心とする地域にホットスポットがある。そのホットスポットをめぐって、日本はせっせとここに軍備を強化しています。

 それが始まろうとする時期の今回の知事選挙、というのがポイントです」

岩上「みなさん、今回の沖縄県知事選は『戦争が始まる時代の賭場口の選挙』です」

伊波氏「沖縄にとって南西諸島が戦場になることを意味しますが、それが覆い隠されている現状です。

 日本政府の発表が、あたかも尖閣諸島で何か起きているようなものになっている。南西諸島の戦争が、日本と中国との戦争なら、日本のすべてが巻き込まれることを意味します。

 戦争になれば軍隊は国民を守らないということは、実際に沖縄戦が示しています」

岩上「南西諸島のフォークランド化を図っているのではないか。第一次安倍政権の時代に、フォークランド紛争の研究に下村博文氏らを派遣した経緯があります」

米国の「非対称戦争」の狙いに従う安倍政権

伊波氏「海上自衛隊幹部学校が発刊する『海幹校戦略研究』に、日米合同の訓練や取り組みが全部出ています。その中の論文を読むと、いままで断片的に伝えられてきたものが、全部つながっていたことが分かります。

 『アメリカ流非対称戦争』という論文は、中国の台湾侵攻に対して、日本が南西諸島で中国海軍を攻撃するよう求める内容です。これは日本による集団的自衛権の行使が前提となっている議論です。

 そして同論文には、『琉球列島での戦闘で米政府の適度な目標達成に有効とする』。米国の国益のためですね。また、『戦争を米中全面戦争や核戦争にエスカレートさせない制限戦争を行うためだ』とあります」

岩上「ようするに、米国と中国の全面戦争ではなく、第三国を戦場にするということですね」

伊波氏「米中がそれぞれの国を攻撃しない、ということなのです。

 2013年9月25日に安倍総理は米ハドソン研究所で演説。『集団的自衛権について憲法解釈を見直す』『日本が米国の安全保障の弱い環であってはならない』と発言しました。これは南西諸島の軍事強化の表明にほかなりません。

 このハドソン研究所の演説で安倍総理は、『右翼の軍国主義者と呼びたければ呼んでください』とまで言いましたね。そして今年7月に集団的自衛権行使容認の閣議決定です。

 この流れの中で、沖縄本島と宮古島の間の公海上を通る中国艦船へ、地対艦ミサイルを用いた攻撃訓練が実施されています。南西諸島に軍事力がどんどん集積されている。有事即応部隊が石垣、宮古、奄美大島、沖縄本島に配備される予定です。さらには強襲揚陸艦を購入する予定です。これは九州を出て沖縄に上陸する時に使われるものです」

岩上「尖閣ではなく、南西諸島での戦争ということですね」

伊波氏「南西諸島の戦争は、米国の台湾防衛支援のもの。自衛隊も演習を実施しています。

 有事即応部隊の配備は、配備された場所が最前線となり真っ先に攻撃されることを意味します。配備を歓迎している自治体は勘違いをしているわけです」

岩上「つまりガードマンではないというわけですね」

伊波氏「陸上自衛隊が広報用に作った『島嶼部に対する攻撃への対応』という映像では、海兵隊による自衛隊の訓練の様子も映し出されます。米国の指示通りの動くという様子です。

 これを沖縄から見ると、沖縄を戦場にするということです」

岩上「これを見てわくわくする人もいるでしょうね」

伊波氏「沖縄の人はこれを見て、自衛隊に入ろうとは思わないでしょうね」

米国に見放されたら「美しい国」になるしかない?

岩上「ネオコンの塊だったブッシュ政権からオバマ政権に移りましたが、戦争は増えているようにも見える。オバマの中身をネオコンだと考えるとします。

 米国は日本を使い『制限的な戦争』のための準備をする一方で、安倍政権の右傾化には釘を刺します。このわかりにくさをどう見ますか」

伊波氏「私は、ブッシュとオバマは違うと思います。1990年代と2000年代とでは、中国の経済規模も変化する。その間にリーマンショックで米国は停滞する。中国は簡単に潰せない相手になりました。

 米中対話がある一方で、日本の軍事的負担が大きくなる構図。米国のオフショア・バランシング戦略のなかに日本がはまっている状況だと思います」

岩上「ただ、日本が鉄砲玉にされている現状です。『かみつくブルドッグ』としての日本があり、政府がヘイトスピーチや歴史修正的動きを放置している。戦後レジームからの本格的な脱却に乗り出している日本の右傾化には、国連、世界から厳しい批判があります。中国をわざわざ怒らせるこの右傾化に対し、米国は織込み済みなのか、それとも本気で怒っているのか、どちらでしょう」

伊波氏「よく聞く話として、米国政界では日本への関心が薄いと言われています。日米韓間の軍事同盟は基本ですが、日韓関係が最悪の状態。日本の流れは民主党、自民党変わらず米国の臨む軍事拡大は実施していますが、安倍政権の発想は民主主義に反旗をひるがえすというものですね」

岩上「飼い犬が言うことを聞く間は可愛がるが、言うことを聞かなければ、どうなるか。大日本帝国が復活し、国連の敵国条項に当てはまるような事態になったら、米国は叩くのではないでしょうか。

 米国に見放されたら、日本は世界から孤立します」

伊波氏「『美しい国』になるんじゃないでしょうか。まあ、米国は日本が米国の威を借りて韓国などに何かすることは防ぐでしょう。また中国も変わっていくと思います」

「中国が攻めてくるという強迫観念」

伊波氏「秘密保護法や集団的自衛権行使は米国の要求です。安倍政権が復古調なのも、米国に従っているので、それを認めてほしいということですね。ただ、米国には民主主義という建て前と、現実にはどんな手段も取る立場との間で、せめぎ合いがある」

岩上「しかし、今の安倍政権は、その米国のねじれの立場からも逸脱しています。自民党の憲法草案がそうですね」

伊波氏「安倍政権の戦前回帰的な価値観がボンと全面に出ている状況です。思わぬ展開といえばそうです」

岩上「核保有が悲願だと言う人は、いくらでもいる時代です」

伊波氏「中国が攻めてくるという強迫観念を持つ人がどれだけいるかという点もありますが、戦場となるのは日本なのですね。だから戦争をしない選択をするべきでしょう。

 中国が攻めてくるという強迫観念よりは、中国と仲良くし、そこに活路を見いだすべきです」

岩上「『べき論』ならばそうですが、そう考えない人もどんどん増えています。政府もそうです。歯止めをかける術がない状況です」

伊波氏「中国の成長が、日本国民を気づかせると思います。米国を追い抜く中国により、世界のしくみが変わりつつある。それが生活に反映されるようになる。そうすれば、今は右に振れ過ぎている振り子が戻るのではないでしょうか」

岩上「しかし、振れた振り子にフックをかけるための手だてをどんどん打っている。NHKへの介入もそうですし、朝日社長を謝らせた動きもそうです」

伊波氏「それが日本に繁栄をもたらし、国民の生活をよくできるなら、支持を受けるでしょうが、そうはならないでしょう。国民が政権選択をするチャンスはあります。

 ただ、厄介なことに現在の野党にあまりにも力がなさ過ぎる。野党の中でも、もっと右の側が力を持っていたりする。

 しかし、いずれはこれらも淘汰されるものではないでしょうか。そんなに悲観はしていません。戦後70年の間、憲法の下で普遍的な価値観に触れてきました。それを変えてみて、言論がきつくなり、生活が苦しくなれば、一人一人が選択をすると思います」

岩上「戻るでしょうか。日本の本土を見ると、右にいったものが戻るような動きが感じられない」

伊波氏「そうでしょうか、私は全国を周り、どこも捨てたものではないと思います。地方それぞれに日本の行く末を考える人がいます。

 ただ、みんなの声を受け止められる政党、政権がないのですね。今の安倍政権に対抗する勢力として、維新を考える人がいるのかもしれない。今の日本はどうしようもないところまで落ちていくのかなという気もしています。ただ、落ちても、戻ると思います」

「戦争への振り子」がこの先戻ることはあるのか?

岩上「改造安倍内閣の高市さん、山谷さん、政調会長の稲田さんといった方たちは極端な右派ですね。この方たちは福井と関係がある人たちです。福井県は原発銀座。その福井でヘイトスピーチが地元メディアや自治体と一体化しているそうです」

伊波氏「日本の国会議員は党に従属している。そこを変えていかなければ。親分が言うことを聞くという価値観がある」

岩上「日本はタテ社会なので、一度に一つの方向に向かってしまう。復元力がないのです。今、振れている振り子は、戦争への振り子です」

伊波氏「慰安婦問題などの『汚名』のために戦争するという話ですね。『汚名』ならば言論を通じて晴らせばいいことです。内閣府によれば、中国は2030年に日本と米国を足した2倍以上の経済力を持つことになります」

岩上「今なら勝てる、という主張が出てくるわけですね」

伊波氏「それはエア・シー・バトルの時期。勝機は逃しました」

岩上「ロシアと中国が天然ガス供給で関係を強化。決済にはドルを用いないそうです。これは米国にとっては大きな問題です」

伊波氏「世界は変わっていく。その中で、面子で戦争をされたら、たまりませんね。

 沖縄への中国人の観光客は増えています。日本の地域も同じです。そこを活かして日本の地域経済も考えていかなければ」

岩上「辺野古基地建設は、南西諸島での戦争になりうることなんだ、という意識が沖縄の有権者には、あるのでしょうか」

伊波氏「県民の意識はそこまでいっていないと思います。仲井真さんのこと、基地が未来永劫続くということの他に、これまで、沖縄が望んで作られた基地はなかったところへ、沖縄県知事が『承認』をしたということ。この3点への関心が大きいと思います」

岩上「辺野古基地が戦争につながるということを広めていきましょう」

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