「この要請団の目的は、沖縄基地の問題解決の道筋を探るため、中長期的に要請行動を続け、アメリカと沖縄のつながりを深めることだ。今回、アメリカ議会の議員へのロビー活動、有識者との懇談会、ナショナルプレスクラブでの記者会見を行なった」と新垣清涼氏は語った。
伊波洋一氏は「南西諸島を戦場にして、中国と日米間で戦争をするプランが立てられた。沖縄に辺野古新基地を作り、自衛隊の戦車車両も持ち込み、アメリカが台湾を守る戦争だ」と指摘、一筋縄ではいかない辺野古新基地建設の背景を説明した。
2014年2月21日、沖縄県宜野湾市の中央公民館で、「辺野古新基地建設に反対する議員要請団 訪米報告会」が行われた。糸数慶子参議院議員、新垣清涼県議会議員、上原快佐那覇市議会議員らで構成した要請団は、2014年1月25日から2月1日にわたって訪米。米国務省、国防総省、シンクタンクなどを回り、辺野古新基地建設反対、普天間基地即時返還、オスプレイ配備撤回を陳情した。
この日は、アメリカ側の反応や成果などを報告。また、ゲストとして、元宜野湾市長の伊波氏が招かれ、沖縄米軍基地の役割と海兵隊の実情、アメリカ国防総省やアメリカ議会の方針などを解説した。
- 報告者 糸数慶子参議院議員、新垣清涼県議会議員、 上原快佐那覇市議会議員
ゲスト 伊波洋一元宜野湾市長
- 日時 2月21日(金) 19:00~20:30
- 場所 宜野湾市中央公民館研修室
沖縄、グアム、日米両政府、4者が直接関与すべき
上原快佐氏の司会で、集会は始まった。まず、糸数慶子氏からスピーチをした。
糸数氏は「沖縄県議会の百条委員会で、(辺野古埋め立てを承認した)仲井眞知事を追求したが、はぐらかすような回答ばかりの印象だ。また、新基地建設に反対を掲げた稲嶺進氏が当選した名護市長選の直後に、防衛省は埋め立てに向けて、業者選定の入札公告を強行した。選挙は民意を問う大事なことだが、日本政府は、それを認めない」と話した。
「アメリカ国防総省、国務省に陳情に行った。今までは15分ほどしか時間をくれなかったが、今回は1時間も時間をとってくれた。しかし、会談内容は、どこでも口裏を合わせたように『辺野古移転が最良』と言うだけ。シンクタンクも同じ回答だった」。
しかし、朗報もあると言い、「2011年5月、カール・レヴィン軍事委員長、ジム・ウェッブ元上院議員、ジョン・マケイン上院議員が、在外米軍基地の機能不全と財政の無駄を訴えた、東アジア軍事基地再検討案を発表。今回、その提案者のひとり、ジム・ウェッブ氏に会うことができた。彼からは『沖縄、グアム、日本政府、アメリカ政府、4者の直接関与が必要だ』という前向きな意見をもらった。また、『機会があれば、喜んで(米政府との)橋渡し役をする』と申し出てくれた」と語った。
さらに、「ロビン・サコダ元国防総省日本部長は『1~2年前、仲井眞知事が、辺野古移転を検討していた』と明かした。その言葉を聞いて、仲井眞知事が『常に研究している』と言っていた、本当の意味がわかった。沖縄県民を裏切っていたのだ。しかし、今回、訪米して得た一番の成果は、『隠し事は、最後には明るみに出てしまう』ということだ」と強調した。
「沖縄の民意は、仲井眞知事とは違う」と米にアピール
新垣氏の報告に移った。「この要請団の目的は、沖縄基地の問題解決の道筋を探るため、中長期的に要請行動を続け、アメリカと沖縄のつながりを深めることだ。今回、アメリカ議会の議員へのロビー活動、有識者との懇談会、ナショナルプレスクラブでの記者会見を行なった」。
要請内容は、辺野古新基地建設反対、普天間飛行場の即時閉鎖・返還、オスプレイ配置撤回・撤去で、「仲井眞知事は、辺野古移設の承認後、支持率が下がった。県議会は、知事の辞任決議をした。沖縄の民意は、決して仲井眞知事が認めたこととは違う。その証拠に、名護市長選挙は稲嶺氏が勝った。これらを、国務省、国防総省に訴えてきた」と話した。
相手の反応については、「議員8名と18名のスタッフに要請書を渡したが、彼らの回答は『辺野古移設は、完璧ではないが、悪くない計画だ。普天間基地の危険性は承知している。だから、早く移転すべき。オスプレイは安全だ』というものだった」と言い、前出のサコダ元国防総省日本部長が明かした仲井眞知事の発言に言及して、「今後も、追求していきたい」と語った。
変質した、辺野古新基地建設の根拠
続いて、伊波洋一氏のレクチャーに移った。「2006年から、グアム基地での訓練は秘密になっていた。なぜなら、普天間基地から辺野古へ移る根拠がなくなるからだ。米連邦議会も、国防省に、普天間基地のマスタープランを出せと言っているが、まだ提出していない」。
このように話し始めた伊波氏は、フランク下院歳出委員長やロン・ポール下院議員たちが、海外の基地支出に異議を申し立て、「沖縄海兵隊1万7000名を減らしても変わらない」と意見したこと、2011年にはゲーツ国防長官が、5年間で1780億ドル削減を決定したことなどを述べた。
「海兵隊2万7000人、陸軍2万人を削減する方針と、10年間で4000億ドルの国防費削減案を計画した。現在では、20万人の海兵隊員を15万人に、4000億ドルを1兆ドル削減へ、と変わった」。
「ウェッブ元上院議員たちの提案は、すでに、グアムに5000名、オーストラリア2500名、ハワイ3000名、沖縄9000名で、ローテーションを組むシステムに動いている。辺野古新基地建設の理由は、1996年『SACO合意』(沖縄に関する特別行動委員会最終報告)だったが、今、その中身は変質した」。
さらに、伊波氏は「なぜ、米軍基地問題では、基本的人権、民主主義がなくなるのか」と憤り、プエルトリコでの住民運動で果たした基地閉鎖を例に挙げて、「きちんと国会で提案、承認があれば、民主主義を尊重する米連邦議会は受け入れる」と主張した。
南西諸島で戦争をするプラン
次に、オスプレイの危険性について、アメリカで起きた事故映像を示して懸念を表明し、「ハワイではコウモリの生態と遺跡保護のために、ニューメキシコでは土製家屋の保護のために、オスプレイは飛行中止になっている」と述べた。
伊波氏は、辺野古新基地建設について、「当初、沖縄の負担軽減に、普天間基地が含まれていたが、9.11以降、米軍再編へと方針が変わってしまった」と振り返り、「南西諸島を戦場にして、中国と日米間で戦争をするプランが立てられた。辺野古を作り、自衛隊の戦車車両も持ち込み、アメリカが台湾を守る戦争だ」と解説した。
極秘公電「辺野古は中国との戦争に必要」
「2010年、内閣府発表『世界経済の潮流』で、2030年、中国が32~33%、アメリカ15%強、日本は3%強の経済力になると予想。アメリカは、もう自国だけでは中国と戦えないので、日本を巻き込もうとしている」と基地建設の背景を説明した。
「安倍首相の押し進める集団的自衛権の行使は、沖縄本島と宮古島の間を通過する、中国艦船を攻撃するために必要なのだ」と指摘し、昨年、奄美諸島などで、車両を持ち込んで行なった自衛隊の訓練を例に挙げた。
ウィキリークスで暴露された、2009年10月15日のカート・キャンベル国務次官補の極秘公電「辺野古新基地建設は、中国との戦争のため必要だ」を示した伊波氏は、「自分たちが、辺野古基地建設を阻止する意味は、アメリカが中国と戦争をしにくくすることだ」と言明した。
また、伊波氏は、日本を戦場に想定した日米共同軍事演習「ヤマサクラ61」のシミュレーションを見せて、「辺野古新基地の問題は、海だけではなく、沖縄全体、日本全体の問題として捉えなくてはならない、重要な時期になった。米軍は、戦争をするために沖縄にいる。そのため、毎日、訓練し、無駄に金を使わないように、いかに効率的に戦争をするか考えている。今、その動きを認めていったら、もう一度、沖縄戦をやることになる」と警鐘を鳴らした。
アメリカは本当に戦争をするのか
質疑応答になり、会場から「中国とアメリカは、本当に戦争をするのか」と質問が出た。伊波氏は「アメリカでは、戦争反対派と賛成派の2つに意見は分かれている。また、軍産複合体は、10年に一度は戦争をしないと、経済的に維持できない構造だ。今、アメリカは、日本列島や南西諸島を戦場に想定している」と述べ、「安倍首相はじめ、若い官僚たちも、そういう流れになっている。軍装備は、日本全国にどんどん蓄積されている。しかし、米中大陸間ではなく、制限戦争を奨励している」と答えた。
糸数氏は「アメリカ滞在中、佐々江賢一郎駐米大使に、『政府は島を守れというが、むしろ、島民が住めないようなことをする。TPPが一番危いが、日台漁業協定もしかり。石原元東京都知事が火をつけたことで、みんな迷惑を蒙っている』と訴えてきた。また、アメリカ政府よりも、日本政府の方が、今回のわれわれの訪米にピリピリしている」などと語った。