「集団的自衛権は、国際社会に向けた参戦の意思表示だ」 ~新外交イニシアティブ『虚像の抑止力』出版記念シンポジウム 2014.8.25

記事公開日:2014.8.29地域: テキスト 動画
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(IWJテキストスタッフ・関根かんじ)

 「沖縄について、ワシントン(米政府、連邦議会、シンクタンク)は、ほんのひと握りの人間以外、知識も興味もない。アメリカは、大統領が変わると役人もごっそり変わるので、日本に影響を及ぼすことのできる要人は、30人くらいしかいない」――。

 8月25日、新外交イニシアティブ(ND)設立1周年記念で行われたシンポジウムで、事務局長の猿田佐世氏は、米国内における沖縄基地問題の認識の実情をこう語った。

 「対中抑止力」の名のもとに、安倍政権が全身全霊で進める普天間基地の辺野古移設は、たった30人の「ジャパンハンドラー」たちの意に沿ったものに過ぎないのだろうか。ワシントンのほんの一握りの彼らが叫ぶ「抑止力」という言葉には、真実味はあるのだろうか。

 「どうする米軍基地・集団的自衛権―オキナワの選択」と題されたこのシンポジウムでは、在日米軍の実態、政府が集団的自衛権の根拠としている「抑止力」のウソと危険性、沖縄県知事選挙の意味、ワシントンのアメリカ政府要人たちの日本観などについて、熱気溢れる議論が展開された。

 シンポジウムは、同月発刊したND編の『虚像の抑止力』出版記念も兼ねており、著者5人のうち、4人がパネラーとして登壇。会場の沖縄かりゆしアーバンリゾート・ナハ(沖縄県那覇市)は、800人の聴衆で埋め尽くされた。

■ハイライト

  • パネルディスカッション:柳澤協二氏(ND理事、元内閣官房副長官補)、半田滋氏(東京新聞論説兼編集委員)、屋良朝博氏(元沖縄タイムス論説委員、フリージャーナリスト)
  • 全体司会:草柳悟堂氏(琉球朝日放送記者)
  • コーディネーター:猿田佐世(ND事務局長、弁護士)

「米軍を沖縄に集中させることが、抑止力の低下につながる」

 冒頭、『虚像の抑止力』の共著者のひとりで、新外交イニシアティブ理事であるマイク・モチヅキ氏(ジョージ・ワシントン大学教授)の文章を、司会者が次のように読み上げた。

 「抑止力とは、報復の意志および能力を示すことにより、一定の行動を控えるよう、対象国を説得するための戦略だ。しかし、対象国を刺激することで脅威を増大させる恐れがある。ゆえに、緊張の軽減、非軍事的外交努力が必要だ」

 そして、「中国の軍事力が増強し、沖縄のアメリカの軍事施設が危険にさらされる度合いが高まるにつれ、アメリカの軍備を沖縄に集中させることが、在日米軍を脆弱たらしめる。強いては抑止力そのものを低下させることになる。したがって、海兵隊の沖縄、グアム、ハワイ、カリフォルニアのローテーション配置が、沖縄基地負担軽減および抑止能力を強化することに有効だ」と続けた。

日本の呪縛「米軍の抑止力」

 続けて、草柳悟堂氏(琉球朝日放送記者)が、シンクタンクの新外交イニシアティブ(以下、ND)の活動を紹介した。その上で、米軍基地の辺野古移転への動きについて、「7月14日、フロートを設置。7月17日、県はボーリング調査を許可。海上保安庁の監視ゴムボートには6名が搭乗し、1名はビデオカメラで記録する。彼らはサングラスとヘルメットで顔が見えず、青森から来た巡視船もいた」などと、工事の進捗状況を話した。

 そして、新外交イニシアティブ理事、元内閣官房副長官補の柳澤協二氏、東京新聞論説兼編集委員の半田滋氏、元沖縄タイムス論説委員でフリージャーナリストの屋良朝博氏、ND事務局長を務める弁護士の猿田佐世氏が登壇し、それぞれスピーチをした。

 まず、柳澤氏は、アメリカの言い分で動く日本政府、それをまったく疑っていなかった自分に「退職してからやっと気づいた」と言い、そうなった理由を、米軍の抑止力という呪縛にある、と見立てた。「抑止力で思考停止になる。バカの壁だ。7月1日に、辺野古埋め立て工事の準備、同日、集団的自衛権の行使容認を閣議決定したが、安倍首相は『抑止力が向上し、日本が平和になる』の一点張りだ」

 そして、抑止力が増せば、相手も強くなる安全保障のジレンマや、米中戦争に加担した場合、沖縄への報復攻撃などの負の側面がまったく語られていないことを指摘した。

無人島のためにアメリカを巻き込むな

 柳澤氏は「むしろアメリカは、中国との戦争に巻き込まれないように願っている。中国の南洋進出は、軍ではないので抑止できない。島の軍事占領で、アメリカ空母機動部隊が威嚇し、日本がそれを守れば中国との戦争に発展し、沖縄への攻撃につながっていく」と集団的自衛権の末路を恐れる。

 さらに、クラウゼビッツの『戦争論』から「戦争をするには国民感情を煽ること。戦争を避けるには国民感情を煽らないこと」と引用し、「米中関係悪化で引き起こされる経済悪化を考えると、米中戦争はない。米軍機関紙には『無人島のためにアメリカを巻き込むな』と書かれ、アメリカの本音がうかがえる」と語った。

 「集団的自衛権は、国際社会に向けた参戦の意思表示だ」と警鐘を鳴らす柳澤氏は、「沖縄県知事選では、与党の中に心配の種を作り出せ。(米軍基地の辺野古移設に反対する候補者が)どれだけ大差をつけて勝つか。それで沖縄の民意をアメリカにわからせるのだ」と訴えて、スピーチを締めくくった。

日米の不適切な関係

 次に登壇した半田氏は、冒頭で「日米の不適切な関係が呼び込む基地問題」と述べ、沖縄の問題は、アメリカの要求をそのまま日本の地方に強要してきた典型だと指摘して、以下のようにポイントを列挙した。

 アーミテージ・レポートでの集団的自衛権の要請。安倍首相の、7月14〜15日の予算委員会での「日米同盟は死活的に必要」との発言。2014年12月の日米ガイドライン改定(日米防衛協力のための指針)で、戦争を約束。来年の夏、戦争ができるよう法律改正。

 さらに、2013年に再開した安保法制懇(安全保障の法的基盤の再構築に関する懇談会)では、「わが国を取り囲む安全保障は格段に厳しさを増している」と、2007年と同じフレーズを繰り返した安倍首相の米軍寄りの真意があらわになった、と見る。

 政府の力説する「抑止力」についても、半田氏は、2005年と2012年の在日米軍再編から見える矛盾を突き、「(米軍人)1万9000人というが、すでに9ヵ月間、基地を留守にする第12海兵連隊、グアムに移転していなくなる第4海兵部隊。ほとんどが海上にいる第31海兵編成隊(ミウ)が実戦部隊。これが、果たして政府の言うような抑止力か?」と声を上げると、会場から拍手がわき起こった。

人道支援活動、災害救援活動が中心になった海兵隊

 続いて、屋良朝博氏が登壇。抑止力について、「沖縄周辺が、中国の海軍艦船の航路にあたるためだというが、沖縄基地の75%が海兵隊基地。その地上戦闘兵力の海兵隊が、なぜ艦船と戦えるのか?」と疑問を呈した。

 そして、司令部の下に地上戦闘、航空(普天間)、後方支援、洋上展開部隊31MEUで編成された沖縄在留海兵隊は、「2005年と2006年、在日米軍再編で、グアムに司令部要員、補給部隊8000人移転が決定。さらに、2012年再編見直しで、第4連隊、第9工兵大隊5000人がグアム移転が決定した」と、抑止力のウソを論破していった。

 さらに、海兵隊は人道支援活動、災害救援活動が中心で、インド、ロシア、ニュージーランドとも共同訓練で軍事外交を行い、アジア太平洋安全保障ネットワークを維持、管理していることから、「沖縄を拠点にする必要はない」とスライドを見せながら解説した。

 屋良氏は「米軍と日本の尖閣を一体だと考えているのは、視野狭窄にほかならない。虚構の『抑止力』で、集団的自衛権、辺野古移設を強行。それを抑止力と地理的優位という言葉でごまかしているのは、政治の責任放棄である」と訴えた。

アメリカで日本に影響を及ぼす要人は30人

 最後に、ND事務局長の猿田佐世氏が、仕事で経験したワシントンの現状について話した。「沖縄について、ワシントン(米政府、連邦議会、シンクタンク)は、ほんのひと握りの人間以外、知識も興味もない。アメリカは、大統領が変わると役人もごっそり変わるので、その準備組織のシンクタンクには影響力があるが、日本に影響を及ぼすことのできる要人は、30人くらいしかいない」と言う。

 また、「沖縄の声を、ワシントンに伝える手段はない。日本人は、大使館員が200人、企業の駐在員、国際機関出向者、日本メディアの関係者だけ。鳩山元首相の『普天間基地の県外移設構想』は、ワシントンで、アメリカ全土に伝わらないように阻止した。当時、民主党の誰かがワシントンにいて、アメリカ側の関係者に伝えていれば、アメリカも意識は変わったはず」とも明かす。

 また、猿田氏は、自身がセッティングした、名護市の稲嶺市長の訪米のスライドを見せて、「自分たちはワシントンの人間たちに、沖縄のことをもっと教える努力をしなければならない。予算案、法律案を具体的に議論できる人間が交渉し、2月から3月は予算委員会の審議になるので、それも勘案しなければならない。ワシントンでは、軍事的な戦略を踏まえて議論できることも必要だ。また、ワシントンから発信する影響力も利用するべきだ」などと具体的な方法を示唆した。

アメリカの射爆場だった尖閣。日本領土なのは明らか

 後半、猿田氏がコーディネーターを務めて、パネルディスカッションが始まった。まず、集団的自衛権の抑止力の効果と、尖閣問題と沖縄基地の必要性について各パネラーに訊いた。

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コメント “「集団的自衛権は、国際社会に向けた参戦の意思表示だ」 ~新外交イニシアティブ『虚像の抑止力』出版記念シンポジウム

  1. 話題がずれてしまいますが、猿田さんや藤田早苗さんや満田夏花さんや内田聖子さんなど、IWJでは魅力的な女性の活躍が目立ちますね!(私は台湾の李先生のインタビューを視聴すると元気になれます。)
    学生さんたちがこのように活躍する女性の姿を見たら、将来へのイメージが変わってくると思いますし、社会に対してポジティブな姿勢が学生さんたちのミームを刺激すると思います。

    ワシントンや国連機関へのロビーイングが手落ちなのは残念ですが、その中でも猿田さんや藤田さんがとても重要な仕事をしてくださいました。東京でロビーイングに尽力していた満田さんたちの成果が得られなかったのは、受け手の議員たちの了見の問題のように思います。

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