ジュゴン訴訟原告団が日本時間の8月1日午前2時頃、訴訟の再開を求め、サンフランシスコ連邦地裁に申し立てを申請した。原告団は同日、東京、沖縄で同時記者会見を開いた。
(IWJ・原佑介)
ジュゴン訴訟原告団が日本時間の8月1日午前2時頃、訴訟の再開を求め、サンフランシスコ連邦地裁に申し立てを申請した。原告団は同日、東京、沖縄で同時記者会見を開いた。
■ハイライト
ジュゴン訴訟とは、普天間飛行場移設にともなう辺野古新基地建設がジュゴンの生態に悪影響を与える可能性が高いことから、辺野古新基地建設計画を中止し、ジュゴンの保護を訴えるものだ。
被告は米国防総省。原告には沖縄の「ジュゴン」と、地元・沖縄住民、日本環境法律家連盟、米国環境保護団体などが名を連ねている。裁判は2012年の民主党政権下で休止措置がとられたが、辺野古の埋め立て承認を受け、今回の弁論再開申し立てに至った。
ジュゴン訴訟弁護団の事務局・籠橋隆明弁護士はこの日の会見で、ジュゴン訴訟の意図について、「連邦地方裁判所を使い、米国の法で、米国防総省をコントロールしようという試み」だと改めて説明した。
米国には「米国文化財保護法」という法律がある。世界遺産条約を執行するため、政府に世界各国の文化財を保護するよう規定したものだ。沖縄のジュゴンは日本の文化財保護法によって保護される天然記念物であるため、「米国文化財保護法」の保護対象となる。
ジュゴン訴訟は2003年にサンフランシスコ連邦地裁に提訴され、05年に地裁が「米国文化財保護法」の対象であることを認定。08年に地裁は、国防総省の基地建設ロードマップが「米国文化財保護法」に違反しているとの中間判決を出した。
地裁は、法に適合するため、「ジュゴンへの悪影響を考慮する措置」を取るよう命じている。国防総省による辺野古に関する情報の開示。関係団体の意見を聞き取り、受け止め、代替案などを提供するなどのコンサルテーション(協議)の実施。そしてジュゴンへの環境アセスメント報告書が必要となる。
米国防総省はジュゴン調査報告書をまとめ、今年4月16日に地裁に提出した。これをもって米国防総省は、ジュゴンへの悪影響評価を終えたとしている。
籠橋弁護士は、「アセスの中身は不十分。日本政府の環境アセスをもとにした中身になっているが、そもそも日本の環境アセスが不十分で、那覇地裁で裁判にもなっていて、県知事も不十分だ、と言っている」と指摘した。
さらに、「コンサルテーションには、情報公開と十分な協議が必要でありながら、情報も公開されていない。原告との協議も、環境保護団体との協議もされていない」と反駁した。
訴訟では、米軍が、日本政府や業者に対し、基地建設のための米軍施設内への立ち入りを拒否するよう求めている。
「基地建設は日本政府が行うが、敷地に入るには米軍の許可が必要。日米地位協定に基づいた『排他的管理権』が米国にはある。基地建設はジュゴンに影響がある行為なので、立ち入り許可を辞めるように、と求める。立ち入り許可が違法になれば、基地建設は止まる」と籠橋弁護士は説明する。米国の法で、日本国内における米軍の動きを縛る、という方法だ。
「米国文化財保護法」が海外で適用された例は、ジュゴン訴訟が初。裁判の再開は2、3週間以内に決定し、早ければ5、6ヶ月以内に地裁判決が出るという。籠橋弁護士は「ハードルは高いが、勝つ見込みは十分ある。勝利したら基地建設は止まる」と話した。
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