5月27日、ジュネーブで開催された国連人権理事会で、特別報告者であるアナンド・グローバー氏が「健康に関する権利」について、日本政府への勧告を発表した。この勧告は、昨年11月にグローバー氏が福島第一原発事故後の人々の健康に関する権利の現地調査を実施し、とりまとめた報告を受けて公表されたものである。
グローバー氏が発表した勧告には、「公衆の被曝限度を年間1mSv以下に低減すること」「『子ども被災者支援法』の基本計画策定に際し、住民の参加を確保すること」「子どもの健康調査は甲状腺検査に限らず、血液・尿検査など、すべての健康影響に関する調査を行うこと」などの内容が盛り込まれている。
日本政府はこの国連勧告に対し、答弁書で「個人の意見だから尊重する必要はない」と反論。勧告には応じないとする閣議決定を下した。勧告を軽視している日本政府の反応を受けて、7月24日、被災地の住民保護の現状と今後の課題について考えるシンポジウムが、特定非営利活動法人ヒューマンライツ・ナウ(HRN)と上智大学グローバル・コンサーン研究所主催で開かれた。
登壇者の一人、高木学校の崎山比早子氏は、現在日本政府が定めている避難基準「年間20ミリシーベルト以下」という数値が、あたかも安全基準であるかのように認知されつつある状況を危惧し、「ゼロリスクは放射線がゼロ」であることだと述べた。
また、東京大学原発災害支援フォーラムの影浦峡氏は「被災地の子どもたちが不安に思って暮らしている現状はおかしい」と述べた。グローバー氏の報告内容に対しては、「彼の報告内容は当たり前のこと」であると話し、日本政府が被災地の人々に対してとっている現在の対応を批判した。