「国連人権理事会の特別報告に、日本政府は難癖をつけ反論」 ~福島・市民社会・国連をつなぐ 第2回~ 原発事故をめぐる「健康に対する権利」、国連人権理事会勧告を考える 2013.7.18

記事公開日:2013.7.18取材地: テキスト動画
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(IWJテキストスタッフ・富田/奥松)

 2013年7月18日(木)18時30分から、東京都文京区にある文京シビックセンターで、ソーシャル・ジャスティス基金が主催するシンポジウム「福島・市民社会・国連をつなぐ」の第2回目が行われた。タイトルは「原発事故をめぐる『健康に対する権利』、国連人権理事会勧告を考える」。弁護士で、ヒューマンライツ・ナウ事務局長を務める伊藤和子氏がスピーチを展開した。

■ハイライト

  • ゲスト 伊藤和子氏(ヒューマンライツ・ナウ事務局長)
  • 主催 ソーシャル・ジャスティス基金

 国連人権理事会から特別報告者に任命されているアナンド・グローバー氏は、昨年11月に来日し、福島原発事故をめぐる被災者の人権調査を実施した。その結果は報告書として、スイスのジュネーブで開催された国連人権理事会に提出され、今年5月27日に公表された。報告書は日本政府に対し、年間被曝線量1ミリシーベルトの遵守を勧告しているが、日本政府は「従う義務はない」との閣議決定を下し、拒否する姿勢を鮮明にしている。

 伊藤氏は「グローバー氏の来日は、日本政府の招聘によるものだったため、調査先が、東電や(子どもの被曝に関するヒアリング先としての)文科省など、政府側に偏ることを心配していた。だが、私たちが来日した彼に、『可能な限り、被災地に住む市民の声を聞いてほしい』と訴えたところ、住民からの聞き取りの割合が高くなった」と述べた。グローバー氏の、日本での調査をサポートした伊藤氏は、同氏の調査には被災地の声が反映されていることを力説。さらに「『原発労働者、わけても末端で汗をかいている労働者の声が聞きたい』との要望がグローバー氏からあり、ホームレスの人たちが原発労働に駆り出されている実態も、知ってもらうことができた」と語った。

 「しかし、公表された報告書に対し、日本政府は膨大な数のコメントを出した」と伊藤氏は続けた。日本政府が国連人権理事会に、自分たちに不都合な文章の削除・変更を要求、「良心的なグローバー氏は、それを突っぱねた」というのである。このような経緯を明かし、伊藤氏は、グローバー氏の報告書の意義を重ねて強調した。

 グローバー氏は、「年間被曝線量1ミリシーベルト」の基準に根ざした被災者支援を、日本政府に明確に求めている。日本政府は一貫して「年間100ミリシーベルト以下の低線量被曝は人体に有害ではない」との立場だが、同氏は、国際放射線防護委員会(ICRP)が、がんなどの発生が、100ミリシーベルト以下でも放射線量の増加に正比例する科学的可能性を認めていることを報告書で指摘。「避難者には、線量が年間1ミリシーベルト以下で可能な限り低くならない限り、帰還を推奨すべきではない」と勧告している。

 「日本の年間被曝線量は、元来1ミリシーベルトだった。グローバー氏は、別に革命的な提言を行っているわけではない」。こう主張する伊藤氏は、「報告書は、原発事故子ども・被災者支援法にも言及している」とし、「この法律は、成立から1年以上経過しても、支援対象地域が定まっていないため、宙ぶらりんな状態にある。グローバー氏は『年間1ミリシーベルトを超える地域を対象とすべき』と勧告。これに対し、日本政府は『予断に基づく文章であるため削除すべき』と難癖をつけている」と述べた。

 伊藤氏は、グローバー氏の勧告に対する日本政府の反論について、こうも述べている。「海外に向け、事故対応の万全性をアピールしたい日本政府の本音がにじんでいる。事実に反する、問題性のあるコメントが多い」。たとえば、原発労働者への健康診断義務。「法律があるにもかかわらず、健康診断が徹底されていない実態があるから、報告書は、徹底するように勧告しているのだが、日本政府は『法律があるから実施されている』という趣旨の答弁だ」。こうした日本政府の反論は、グローバー氏の報告書と共に、和訳されたものがウェブサイト(ヒューマンライツ・ナウ)にアップされている。

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