「賠償の責任者は誰?」 〜原子力損害賠償法勉強会「空白の責任――原賠法の問題点とあるべき姿を考える」 2013.6.7

記事公開日:2013.6.7取材地: テキスト動画
このエントリーをはてなブックマークに追加

(IWJ・鈴木美優/安斎さや香)

 NGO5団体と福田健治弁護士による原子力損害賠償法についての勉強会が、6月7日、衆議院第一議員会館にて開催され、原賠法の問題点について熱い議論がなされた。

 原子力損害賠償法(以下、原賠法)において原発事故の被害者に支払われる賠償金は、東京電力(以下、東電)の見積もりで約3兆2000億円を超える。事故後、避難区域内だけでなく避難区域外に住んでいた人のサポートを続けている福田健治弁護士は、「どこまで賠償の対象になるのかをはっきりさせる必要がある」「私たちにも国を訴える権利はある」と、現在挙げられている問題点と課題を述べた。

■ハイライト

  • 講師 福田健治弁護士

 原賠法の第一条には、「被害者の保護を図り、及び原子力事業の健全な発達に資することを目的とする」と示されており、事故そのものの責任は東電にあるとしながらも、原子力発電所の建設を推進してきた国にも責任がある、と福田氏は訴える。

 日本では電力会社のみが責任を負う「責任集中の原則」が原賠法に定められているが、この原則は「被害者に対して誰が責任者なのかをはっきりさせておく必要性」「賠償金の確保」「東電以外に原発事業に関わっているメーカー等に責任が及ばないこと」などを約束することが前提となっている、と福田氏は説明し、改めて国と東電の持つ責任の重要性を強調した。

 また、福田氏は「東京電力プレゼント方式」と名付けられている、原子力賠償責任支援機構法の問題点として、株主が被賠償者から免責されているにも関わらず、国民が電気料金として賠償金を支払うことになること、東電が責任を負うべき原発事故の賠償を他電力会社が支援することなどを挙げ、負担の非公平性に繋がると指摘した。

 東電によると、支援機構から得た支援金は「特別負担金」で支払われる。「特別負担金」とは、支援機構が沖縄を除く全電力会社に支援金支払いを促し、その支援金が一般負担金として東電に支払われるものだが、「結局最後には国民が電気料金により負担することとなる」、と福田氏は指摘した。

 また、事故による損害の見積もりが困難であることから、原子力事業者である電力会社には、その責任を無制限に負う「無限責任」が課されている。これに関して福田氏は、「今後無限責任の変更を断固として拒否するべき」と、無限責任を維持することが重要だと主張した。FoE Japanの満田夏花氏も、「無限責任をいじられないように」と、今後も引き続き国や東電と闘っていく決意を見せた。

 環境エネルギー政策研究所の松原弘直氏は、「リスクの負担を今後さらに議論していく必要がある」と述べ、今後の取り組みに対する姿勢を示した。

 今後の原賠法のあり方について、福田氏は「国策のために負担金を税金として国民に課すことは理解できるが、東電が収束義務を持つ問題を、国民に負担させるのは間違っている」と、負担の公平性に関して指摘した上で、迅速かつ十分な賠償が求められることが必要であると主張した。

アーカイブの全編は、下記会員ページまたは単品購入より御覧になれます。

一般・サポート 新規会員登録単品購入 330円 (会員以外)

関連記事

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です