「穏やかで緑爽やかなこの場所で、冷静な状況であるにもかかわらず、なぜこんな隙間だらけの法案が出てくるのか、理解できない」。
福島県双葉郡浪江町の檜野副町長は、5月1日に開かれた「福島原発事故・損害賠償請求権 消滅時効に関する学習会」で、こう語った。
東京電力は今年の2月4日、「原子力損害賠償債権の消滅時効に関する弊社の考え方について」と、題する見解を公表した。内容は、東電が損害賠償の請求受付を開始してから3年間で、被害者の請求権が消滅することを示唆するもの。つまり、消滅時効完成まで、最短で約11ヶ月しか残されていない。
政府はこれを受け、時効の中断を認める、「時効特例法案」を今国会で提出する方針だ。しかし、法案の中身を見ると、時効の中断が認められるには、ハードルの高い条件を満たす必要があり、被害者を救済する誠意が感じられないものになっている。
「被災者は安定した住まいを得ることが一番の関心事だ」。
檜野副町長は、被災民は未だ不安の渦中に置かれ、落ち着いて損害賠償について考える余裕さえない現状を訴えた。
日本弁護士連合会は、先の見えない生活の最中に、損害賠償請求の法的手続きをとらざるを得ない状況に被害者を追い込むのは正義に反するとし、請求権が消滅しないとする特別の立法措置を、早急に講ずるべきだと訴えた。