「有識者個人宛に抗議文が送られたことは、科学的・技術的態度を欠いており、センスを疑う」 ~第7回原子力規制委員会 2013.5.22

記事公開日:2013.5.22取材地: テキスト動画
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(IWJテキストスタッフ・富田/奥松)

 2013年5月22日(水)10時30分から、東京都港区六本木の原子力規制委員会で「第 7 回 原子力規制委員会」が行われた。この日、規制委員会は、「敦賀原発の2号機直下の断層は、活断層である」という有識者会合の報告を了承した。一方、当該事業者(日本原電)が、有識者会合の個々のメンバー宛に抗議文を出した問題も取り上げ、更田豊志委員は「この一件を重く見ている」と、静な口調に怒りをにじませた。

■全編動画

  1. 日本原子力発電敦賀発電所敷地内破砕帯の評価について
  2. 高速増殖原型炉もんじゅにおける点検時期超過事案に関する対応について
  3. 東京電力福島第一原子力発電所の地下貯水槽からの漏えい事故等について
  • 日時 2013年5月22日(水)10:30~
  • 場所 原子力規制委員会(東京都港区)

 この日、規制委員会は、停止中の敦賀原発2号機の再稼動が、極めて難しくなる判断を示した。真下に活断層がある原発は再稼動を認めない、という国のルールに従うもので、有識者会合が取りまとめた「敦賀原発の2号機直下の断層には活動性がある」との報告に対し、委員の間から反論は出なかった。この結果、日本原電が敦賀2号機の再稼動の審査を申請しても、「審査に値しない」と見なされる公算が大きい。同社は、かねて「活断層ではない」と主張しており、独自調査を続行中だが、有識者会合の認定を否定するに足る、新たな調査結果が提出されない限り、この状況は変わりそうにない。

 会合では「活断層が存在するとの前提で」(田中委員長)、敦賀2号機の安全対策についても議論された。2号機は、2011年5月に運転が停止されており、使用済み燃料はプールに保管されている状態である。使用済み燃料は発熱しているため、地震でプールの冷却水が流出した場合を想定しておく必要があり、田中委員長は原子力規制庁に対し、必要に応じて安全対策を検討するよう指示した。

 また、規制委員会の評価のあり方に関する課題も提示された。有識者会合にも所属した島崎邦彦委員の、「今回、(活断層の根拠とされた)K断層が見つかっていなければ、結論は変わっていたのではないかと思う」との発言を巡り、更田委員が「事業者側の調査に依存している現状は、好ましいものではない」と指摘。「調べれば調べるほど、事業者が不利になるというのであれば、規制委員会と事業者の間に『もっと調べろ』『いや、もう調べなくていい』の押し問答が起こりかねない。こちらが事業者に十分な調査を強く要求していかないと、今後は活断層が見過ごされる恐れがある」と強調した。

 会合の後半では、今回「活断層である」と報告した有識者会合のメンバー宛に、日本原電が抗議文を作成し、それを規制庁が取り次いだ問題に時間が割かれた。

 田中委員長は「事業者から、有識者会合の専門家に対し、余分なことが行われたが、非常に遺憾である。今後、こういうことが起こらぬよう、規制庁にも注意を願う」と苦言を呈した。更田委員が「有識者会合の専門家に抗議文を送るという、そのセンスには疑問符がつく。また、それを規制庁が仲介する形になったことは、不始末としか言いようがない。その場で突き返すのが筋だ」と言葉を継ぐと、出席者から拍手が起こった。対座した規制庁の担当者は、「すでに何度か(日本原電から)要望書が提出されていたため、今回も同じようなものと勝手に解釈して、取り次いでしまった」と釈明した。

 更田委員が「専門家は、それぞれが持つ科学的知見に基づいて意見を述べているだけ。その専門家に対し、抗議をすること自体が、科学技術的態度を欠いている。今後、日本原電には強く抗議したい」と発言を重ねると、田中委員長は、東通原発(青森県)、大飯原発(福井県)、美浜原発(同)など、敦賀原発以外にも5つの原発が活断層の有無の判断を待っていることに照らして、「同様の動きが、今後も発生することが予想される」と述べ、出席者全員に毅然たる態度を徹底するよう促した。

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