【IWJジャーナル号外】ジェフリー・サックス教授が、米国一極支配から多極世界への構造的変化の現実に、認識がついていけない欧米の妄想について語りつくす!(後編) 2026.9.22

記事公開日:2026.9.22 テキスト
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(文・IWJ編集部)

特集 【特集】民主主義を装った米帝国の権力構造は、3層構造になっている!
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 IWJ代表の岩上安身です。

 コロンビア大学のジェフリー・サックス教授が、9月4日、米国の独立系メディア『ドロップ・サイト・ニュース』のロング・インタビューを受けました。

 インタビューのタイトルは『妄想の遺産』です。これが、欧米の現実認識のズレの実情をすべて物語っています。

 今回は、このインタビューの後編になります。

 前編と中編は、以下から御覧いただけます。

 後編では、米国の一極支配を支えてきた「ドル決済の武器化」が終焉に向かっていると、サックス教授は指摘します。そして、サックス教授は、多くの国で自国通貨建ての国債が急落し、金利が上昇している理由を、米国のAI景気が原因ではなく、資産が米ドルから人民元へ、アジアの株式やアジアの金融資産へと移動しているためだと断言します。

 また、現在の米国株の急騰についても、AI企業の「マグニフィセント・セブン」によるAI景気ではなく、一極支配についてのワシントンの認識と、世界の現実との隔たりが生んだ「地政学的バブル」であると診断します。


ジェフリー・サックス教授(以下、サックス教授)「キルギスで開かれたこの会議は、きわめて重要ですが、ほとんど報道されていません。

 これは上海協力機構(SCO)と呼ばれる組織の会議でした。実際、25回目の会議です。上海協力機構は25年前に中国の主導で発足し、ユーラシアの大国と中央アジア諸国を含む10ヶ国によって構成されています。

 ロシアとベラルーシが加盟しています。その隣には、カザフスタン、ウズベキスタン、タジキスタン、キルギスがあります。インドと中国も加盟しています。

 キルギスで会合を開いたこの10ヶ国には、世界人口の42パーセントが暮らしています。中国とインドだけで世界人口の37パーセントを占めているので、これは容易に理解できます。しかし地図を見れば、今週会合を開いた国々が、世界の非常に大きな部分を占めていることがわかります。

 面積でも、人口でも、欧州をはるかに上回っています。会合に参加したこの地域は、過去2000年の大部分において、世界経済の中心的地域でした。また、世界人口の中心でもありました。

 申し訳ありません。重要な点を一つ言い忘れていました。当然ながら、イランも加盟国です。ですから、『我々は、イランを孤立させている』という考えは、よく考えてみれば、あまりにもばかげています。英国の新聞に載ったとされる、有名な架空の見出しがあります。

 『海峡に霧、欧州大陸は孤立』。

 英国の視点では、英仏海峡に霧が立ち込めると、欧州大陸のほうが世界の中心から切り離されたことになるわけです。私達も同じように考えています。

 『ああ、我々はイランを切り離している』。

 しかし、イランは世界人口の42パーセントを占める国々と会合を開いていたのです。どうもありがとう、というところです。

 イラン文明の歴史は、2500年前にさかのぼります。ちなみにイランは、世界史上初めての巨大な多民族帝国を築きました。2500年前、キュロス大王のもとで成立したアケメネス朝ペルシアです。

 先ほどお話ししたように、私はイタリアから香港までユーラシアを横断しましたが、何千キロにもわたり、あらゆる場所でペルシアの影響が見られます。イランは、我々が孤立させられるような小さな国ではありません。イランは、歴史上最も偉大な文明の一つです。中国に巨大な影響を与え、ロシア、インド、中央アジア、西アジア、そしてアラブ世界にも巨大な影響を与えてきました。

 イランは、米国の10倍もの期間にわたり存在してきたのです。したがって、この会合は単なる会合ではありません。世界がまったく異なるものになっていることを示しています。

 我々は、ロシアを孤立させていません。ロシアは、中国、インド、中央アジア、イランと緊密な関係を築いています。

 ロシアは、イランを支援しているのでしょうか。おそらく支援しています。

 中国は、イランを支援しているのでしょうか。おそらく支援しています。

 なら、彼らは米国のようには考えていないからです。米国はこう言います。『誰と取引するのか。誰とは取引しないのか。スコット・ベッセント氏と、彼の言う『経済的Dデー』に従わないのか』(※注1)。

 しかし、現在の世界は、もはやそのようには受け止めていません。『米国の方針に従え』というメッセージを聞いて、世界が震え上がるような時代ではないのです」

(※注1)スコット・ベッセント米財務長官が、2026年8月24日、イランの資金源を断つ「経済的孤立作戦」を発表し、各国にイラン関連の取引を停止するよう求めた。このとき、ベッセント長官は、米政権がイランを経済的に孤立させる制裁強化を、第二次世界大戦のノルマンディー上陸作戦開始日「Dデー」になぞらえて「経済的Dデー」と呼んだ。米国の方針に従わない事業者には、米金融システムからの排除や二次制裁の可能性があると警告した。

サックス教授「来週、正確には9月12日と13日だったと思いますが、次の大きな会議であるBRICS会議が開かれます。BRICSの加盟国は、上海協力機構の加盟国とかなり重なっています。BRICSも10ヶ国で構成されています。

 BRICSはユーラシアだけの組織ではありません。ブラジル、エジプト、アラブ首長国連邦、そしてイランも加盟しているからです。参考までに言うと、BRICSの10ヶ国は、世界人口の48パーセントを占めます。

 これに対して、盛んに称賛される主要7ヶ国(G7)は米国が主導し、米国、カナダ、英国、フランス、ドイツ、イタリア、日本から構成されています。その人口は世界人口の9.6パーセントです。

 つまりBRICSには、G7の5倍の人口がいるのです。かつては、こう考えられていました。『確かに人口は多いが、貧しい人々が大勢いる』。しかし、彼らは核保有国です。どうもありがとう、というところです。

 彼らは、高度な技術を持っています。独自の宇宙開発計画があります。当然ながら、デジタル技術の開発計画も、人工知能(AI)の開発計画も、半導体の開発計画もあります。

 中国は、あらゆるグリーン技術で全面的に先頭に立っています。なぜなら、米国を20年後退させている現在の大統領のもとで、我々は電気自動車を放棄し、再生可能エネルギーを放棄したからです。基本的には、その分野で世界を支配する機会を、贈り物として中国に差し出したのです。

 このように、二つの会議が連続して開かれます。一つは上海協力機構、もう一つはBRICS諸国の会議です。これらは基本的に非西側諸国です。では現在、『西側』とは何でしょうか。先ほど述べたように、米国、カナダ、英国、欧州連合、日本です。韓国も含まれるかもしれません。

 トランプのせいでどうなるかはわかりませんが。いずれにしても、それはおそらく世界人口の12パーセント程度です。世界の残りの国々は、こう言っています。『いいかげんにしてくれ。我々は、自分達の仕事を進める。ロシアとの取引をやめるつもりはない。中国との取引もやめない。米国から『我々を選ぶのか、彼らを選ぶのか』と言われたからといって、中国のオープンウェイトAI(※注2)を使わないということにもならない』」

(※注2)オープンウェイトAIの「ウェイト(重み)」とは、AIが学習を通じて調整した、膨大な数値のことである。AIは質問者の入力を処理し、次に出力するトークン(語や語の一部などの単位)の確率を計算する際に、この「重み」を使う。天気予報のように答えが外部情報に書かれている場合も、AIがその情報を読み、日本語の回答文を生成するときには「重み」が使われる。
 たとえば、「今日は雨が」の次に何が来るかを考えるとき、AIはその入力を処理した時点の状態を、仮に[0.2、0.5、−0.1]というような、数列で表す。この数列の長さは、モデルの設計によって異なる(開発企業が決める)。
 トークンの選択には、その確率が最も高い候補を選ぶ方法もあれば、確率に応じて選ぶ方法もある。この方法の選択の初期設定は、開発企業やAIサービスの提供者が決めている。
 中国の「オープンウェイトAI」とは、中国の企業や研究チームが、学習済みAIモデルの「重み」を公開しているものを指す。代表例にDeepSeekの「DeepSeek-R1」や、アリババ系の「Qwen3」がある。
 公開された「重み」を入手すれば、利用条件と必要な計算設備の範囲で、モデルを最初から学習させることなく自分の設備上で動かしたり、用途にあわせて追加学習したりできる。ただし「オープンウェイト」は、学習データや開発過程まで公開されていることを意味しない。

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