保健・医療団体が、東京都にPFASの血中濃度検査、検査助成制度の創設、汚染源の特定と除染を要望!~7.31 有機フッ素化合物(PFAS)の健康被害を明らかにするために「全国規模での血中濃度検査測定を求める合同記者会見」 2024.7.31

記事公開日:2024.8.5取材地: テキスト動画
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(取材、文・浜本信貴)

 2024年7月31日(水)、東京都新宿区の東京都庁にて、東京保健会病体生理研究所、社会医療法人社団健生会、東京民主医療機関連合会の主催により「有機フッ素化合物(PFAS)の健康被害を明らかにするために『全国規模での血中濃度検査測定を求める合同記者会見』」が開催された。

 会見冒頭、司会の東京民主医療機関連合会・事務局長の西坂昌美氏は、記者会見の目的を次のように語った。

 「一つは、希望する多くの方に、PFASの血中濃度検査、そして、『相談外来の受け皿がある』ということを知っていただいて、相談外来を受診して、血液検査に進む跳躍台にしていきたいというふうに考えております。

 二つ目に、東京都に対して、積極的な血中濃度検査、また、除染、抜本的対策を呼びかけるとともに、希望する人が安価で検査できるよう、助成制度の創設をお願いしたいということ。

 三つ目に、東京都として『汚染源の特定』とあわせて、『汚染土壌の除去』を、都の環境科学及び産業振興施策として、推進していただく転機にしていただきたい」。

 続いて、東京民主医療機関連合会会長の根岸京田氏は、次のように語った。

 「PFASについては、全国的に汚染が明らかになってくるにつれて、国民の皆さんの健康不安も高まっている状況じゃないかと思います。

 2021年に環境省が全国の地下水の検査をした時に、143地点のうち12都道府県の21地点において、基準値より高いPFASが検出された、と。

 東京都でも、定期的に環境調査をされていますけれども、2021年に、やはり多摩地域から、東京23区に至るまで、基準値より高い数値が検出がされているということですね。

 環境省の資料でも、『排出源』となり得る施設として、泡消火剤を保有使用する施設、有機フッ素化合物の製造使用の実績がある施設、廃棄物処理施設、下水道処理施設とされているんですけれども、最も大規模な汚染源として考えられているのが、自衛隊や米軍の基地ということになります。

 実際、東京にある横田基地では、泡消火剤の漏出事故が複数回起こっておりまして、都内最大の汚染源である可能性が高いのではないかと思われます。

 長期的な健康への被害ということは、まだわからないところも多いかと思うんですけれども、少なくとも国際保健機関WHOが、アスベストやダイオキシンと同等の発がん性があるというふうに認定している物質ですので、住民の健康不安も非常に高まっているという状況じゃないでしょうか」。

 この会見に先立ち、この日午前11時より、主催3団体の代表者が、小池百合子東京都知事に対して、要請行動(「東京都におけるPFAS政策に関する要請書」の提出)を行った。その結果について、社会医療法人社団健生会専務理事の松崎正人氏は、次のように報告した。

 「対応したのは、東京都保健医療局の金子課長、環境局の東川課長の2名でした。

 まず、冒頭、京都大学名誉教授の小泉(昭夫)先生から、『横田基地における除染の重要性』について質しています。

 具体的には、『東京都は、国に対して、「しっかり除染」という表現を使って、要求しているのかどうか』ということが、話の中心点だったと思います。

 東京都の回答は『「必要な措置」の中には、色々な事が含まれている』というようなことを言っていましたが、曖昧模糊な表現で、具体的ではない、よくわからない言葉の中に、『除染も含まれている』というような回答をしていた。

 これでは、まったく相手方(国・横田基地)には伝わらない。きわめて遺憾な状況だったというふうに言わざるを得ない。

 次に、健生会の医師である大山先生と青木先生から『国待ち』にならず、都が責任を持って希望する住民の血液検査に乗り出すべきだと。都の電話相談でも、相談外来や血液検査が始まっていることを伝えてほしい、と、このようにお伝えしました。

 都の回答は、何と言いましょうか、通り一辺倒で、『国がPFASの健康被害に関しての評価だとか、そういうものを一切示していないので、何もできない。だから何一つ回答できない』というような、消極的な姿勢に終始したというのが、特徴だったのではないかなと思います。

 都民の健康に関わる重要問題であるにも関わらず、都が積極的な意向を示さないというのは、甚だ問題であると思います。

 最後に、PFAS問題は『クローズアップ現代』に明らかなように、この1年間で全国レベルの被害が広がっています。

 今こそ、都は、全国に先駆けた血液検査や、予防原則にもとづいた対策、除染、検査を行うべきであると、改めて、この要請を通して確認させていただいたということです」。

 京都大学名誉教授の小泉昭夫氏は、「PFAS環境汚染にどう立ち向かうか?」と題し、講演を行った。

 その講演の中で、小泉氏は次のように述べた。

 「2022年から2023年にかけて、全国でPFASの汚染が報道されてきました。

 汚染源は大体、PFOSという泡消火剤由来のものと、もう一つは、産業利用や産業廃棄物による汚染であるPFOA、この2つが大きな問題となってきております。

 一方、国は国民のこういう不安に対して、背を向けてきたわけなんですけれども、背景には、国と自治体の不作為と人権無視があると考えられます。

 ところが、6月21日に出ました岸田内閣の『骨太の方針』を見ますと(中略)、PFASに関する今後の対応の方向性を踏まえて、科学的知見の充実や必要な対策を推進する、と言っております。

 今日の(要請行動の)一つの意義としては、せっかく岸田内閣もこのような積極的な立場に立ったわけですから、それを推進していただきたいということを願って、行ったものであります」。

 小泉氏は、また、健康被害や除染の問題について、次のように語った。

 「健康への影響ですが、アメリカの研究所でわかりました『抗体の低下』、『免疫毒性』、『実質代謝異常』、『幼児および胎児の成長の低下』、『腎がんリスク』ということになっております。

 この間、日本政府では、『内閣府リスク評価書』が出されました。ただし、この『リスク評価書』は、疫学データや免疫毒性の無視、胎児・新生児の発育特性の無視ということが大きな特徴であります。(中略)

 今、アメリカで大統領選挙が行われていますが、バイデン、ハリス(陣営)は、PFOS、PFOAを『スーパーファンド法(※)』に登録し、除染を行うことを決定いたしました。

 また、環境庁による全国水道水調査を行うことを指示いたしました。こういうことから、除染の議論は避けて通れないということで、アメリカでは除染が進んでいるのに、日本国内の米軍基地はどうするのか、日本の要求にほぼ依存している状況となっております」。

※包括的環境対応対策補償責任法(CERCLA:Comprehensive Environmental Response, Compensation, and Liability Act)の一般呼称。
 1970年代の環境汚染事件を契機に1980年にアメリカで制定された法律。
 スーパーファンド法では、政府が直接、浄化対策を実施する権限を持ち、汚染サイトに関係する潜在的責任当事者を特定し、責任を負わせる。
 政府ファンド(スーパーファンド)を用いることで、汚染責任者の特定を待たず早期の対策が可能となり、汚染責任者が特定されない場合は、汚染に関与した全ての者を潜在的責任当事者(PRP:Potential Responsible Parties)に指定し、費用負担を強制することができる。
参照:DOWAエコジャーナル https://www.dowa-ecoj.jp/houki/2024/20240702.html

 記者会見の詳細については、ぜひ全編動画を御覧いただきたい。

■全編動画

  • 日時 2024年7月31日(水)15:00~16:30
  • 場所 都庁記者クラブ内会見場(東京都新宿区)
  • 主催 東京保健会病体生理研究所・社会医療法人社団健生会・東京民医連

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