能登半島地震を受けて、各地の原発周辺住民らが、今回の地震の新知見がまとまるまで、原発再稼働に向けた審査および使用前検査を凍結するとともに、稼働中の原発の停止を求める要望書を、2024年2月2日、衆議院第一議員会館で、原子力規制庁職員に手渡した。
要望の申し入れとその後の記者会見の司会は、京都グリーン・アクション代表のアイリーン・美緒子・スミス氏が務めた。
要望書は、原子力規制委員会の山中伸介委員長宛で、提出者は、石川県珠洲市、石川県金沢市、新潟県刈羽村、福井県若狭町、福井県高浜町、宮城県女川町、茨城県ひたちなか市の住民7名による連名。さらに原発周辺住民ら281人が賛同している。
要望書の手交後、提出した住民7人が、会場およびオンラインで、それぞれの強い危機感を訴えた。
今回の地震に見舞われた石川県珠洲市の北野進氏は、かつての珠洲原発の予定地、寺家(じけ)地区から約5km、高屋地区から約9kmの場所に住む。北野氏は、珠洲原発予定地が、能登半島地震の震央のすぐそばで、今回大きく揺れ、隆起も激しく、避難路も断たれ、「もし原発があったらと思うと、ぞっとする」と語った。
その上で、「能登に今ある志賀原発で重大事故が起これば、自宅は半島の先端近くで、逃げ道はない」「今もっとも心配するのは、今回の地震が引き金で、次の大地震に向かっているのではないか、その時に志賀原発は無事かということ」だと不安を吐露した。
その上で北野氏は「規制委の審査能力自体が問われている。今回150kmの断層が動いたと言われるが、審査会合では、この規模の地震動は検討すらされず、想定外だった。まず、審査会合を停止すべき」などの疑問・要望を、原子力規制庁に突き付けた。
また、福井県の全原発から30km圏内の福井県若狭町に住む石地優氏は、「能登半島地震では、自分の住まいも震度4で長時間揺れた」という。
石地氏は、その時、「福井県内で5基稼働していた原発を、関西電力が止めなかった」のみならず、「地震から半月余りの1月18日、定期点検で止まっていた美浜3号を、反対があったにも関わらず、再稼働させた」と指摘。「関西電力だけでなく、電力事業者を規制する立場で、人や環境を守る使命がある原子力規制庁は、なぜ、『止めろ』と言わないのか?」「能登半島と若狭湾はすぐ近く。ひずみ集中帯(※IWJ注)で、原発がいっぱいある。こっちまで(地震が)来る可能性が十分あるのに、何で止めないのか?」と強く批判した。
- 定検中の美浜原発3号機 18日に原子炉起動 運転再開(NHK、1月18日)
(※IWJ注)ひずみ集中帯:長期的に見て、地殻変動による歪みが特に集中している地域。
- 福井県の大部分は大地震が起こりうる「ひずみ集中帯」 福井地震74年、地元出身の気象庁地震津波監視課長に聞く(福井新聞、2022年6月28日)
- 歪集中帯(ひずみしゅうちゅうたい)(ウィキペディア)
さらに石地氏は、江戸時代の寛文地震では、美浜原発から15km弱にある自宅近くの場所で3~3.6mの隆起があった記録が残ることから、「能登半島地震での4mの隆起に衝撃を受けた」と言う。
「美浜原発は海底断層に挟まれ、直下にもC断層がもぐっている。その横にはマグニチュード6.9とされる陸域の断層もあり、海底断層はマグニチュード7.2~7.4の地震を起こすと国の報告書にある。
ここに住む私たちの思いを、関西電力も規制庁も規制委員会も、なぜ理解してくれないのか?」。
そう述べた石地氏は、「規制庁の使命として、原発をすぐに止めてほしい」と、重ねて強く訴えた。
こうした地元住民の疑問・要望は、改めて文書で原子力規制庁に送られたあと、要望書とともに、2週間を目途に回答される予定である。
なお、申し立て後には記者会見が行われ、要望書を提出した地元住民が質問に答えた。
詳しくは、全編動画を御覧いただきたい。