「木原事件」X子さんの取調官・佐藤誠氏会見全文文字起こし!(その3)「殺人事件で一番大事なのは遺族への対応」、それがなかったのは「異常な終わり方」〜7.28 佐藤誠氏(元警視庁捜査一課刑事)記者会見 2023.8.10

記事公開日:2023.8.10取材地: テキスト動画
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(取材・浜本信貴 記事構成・IWJ編集部)

 各記者からの質疑に対し、佐藤氏は、再捜査の終わり方が異常だったとする理由の一つに、被害者遺族に捜査の結果を伝えずほったらかしにしていた点をあげた。

 「殺人事件はホシを捕まえることも大事なんですけれども、一番大事なのは『遺族班』なんですよ。(略)

 やはり、被害者の方に、捜査が始まって一応終了するには、被害者の方に結果を伝えなきゃいけないんですよ。(略)

 さっき『異常な終わり方』といったのは、それがないんですよ」。

■全編動画 ※文字起こし(その3)の冒頭にリンクしています

  • 日時 2023年7月28日(金)13:00~14:00
  • 場所 文藝春秋西館1階 文春ギャラリー(東京都千代田区)
  • 主催 週刊文春 編集部(詳細

(文字起こし 20分頃から30分頃まで)

記者4「フジテレビの中村と申します。遺族の方は、真相を求めていると思うんですけど、どのような条件が整えば、再捜査が始まるとお考えですか?」。

佐藤氏「うーん。あくまでも個人的な意見ですよ。もう(露木康浩・警察庁)長官がああいう風に言っちゃっているじゃないですか。そうなると、ちょっと難しいのかなと。個人ですよ。もう、覆らないんじゃないかなぁと。

 いや、それはわからないですよ。どう決めるか。でも、やっぱり警察庁のトップが『自殺』って認定しちゃっているから、どうなんでしょうかね」。

記者4「それによって、再捜査は認められない?」。

佐藤氏「それはもうそうですよね。だって、本来であれば、殺人事件はホシを捕まえることも大事なんですけれども、一番大事なのは『遺族班』なんですよ。被害者班。だから、あの、はじめにね、何をしなきゃいけないのか? 遺族の方の対策が一番難しいんですよ。捜査が始まって、まずやります。

 だって、大塚の女刑事って出てくるじゃないですか。あの人は『どうなるかわからないけれども、始まりますよ』と言っているわけですよ。

 どうなるかわからないということは、証拠が見つかって起訴できるかどうかもわからない。もしかしたら自殺かもしれない。いろいろなパターンがあることをやってみますと言っているわけだから。

 やはり、被害者の方に、捜査が始まって一応終了するには、被害者の方に結果を伝えなきゃいけないんですよ。例えば、一生懸命やったけれども証拠が見つからなかったけれども、申し訳ございません、とか。捜査を尽くしたけど、これは自殺でしたとか。その結果を教えなきゃいけない。

 本来であれば、その18年の何月ですか、まあ10月ごろ、もし終わったとすれば。だからさっき『異常な終わり方』といったのは、それがないんですよ。

 それで5年経って、今頃になってね。『自殺だ』って言われたって、火に油を注ぐようなものじゃないですか。全然、結果を教えられていないんだから。突然5年経って、これは『事件性がない』と、『自殺なんだ』と言われればね、怒っちゃいますよね。だって、今までほっぽっておいたわけですから。

 それで、俺の見立てとしては、そんな、なんですか、『事件性がない』というような証拠なんかないわけですから。証拠も供述も、例えば遺書が出てくるとか。そういう証拠があればね、もう自殺になるんですけど、そんなのないんですよ。そんなの。

 遺族が、納得するわけないじゃないですか。だから、遺族の方はやっぱり、再捜査でお願いしますと言うに決まっていますよね。それはもう上の方で決めるあれじゃないですか」。

記者4「長官の発言を、非常に責任のある重い発言だったということですか」。

佐藤氏「うん、と思いますよ。だって、まぁ、けなすつもりはありませんよ。ただ、個人的にはそんなもの(自殺の証拠)ないのに、あるかのように言っているじゃないですか。そう思いませんか。だって証拠が、俺が、俺が一番知ってるんですよ。証拠を全部見ているんですよ。だけど、その証拠がないんですから。

 だから、自殺と認定する証拠とは遺書とか、自殺しているのを見た人がいるとか、そういうのがあれば、捜査はやらないじゃないですか。遺書が出てくれれば。

 だから、何を元に言っているのかなと思ったんですよ。思いというか、もうちょっと被害者のことを考えてもらいたいな、という気持ちの方が大きいですよね」。

記者5「後からも質問させてください。前ばっかりじゃなくて。すみません。

 すみません、フリーランスの緒方と言いますが、佐藤さんにうかがいたいんですけれども、今回ですね、今回のXさんが、木原副長官の、当時の自民党の情報局長の夫人でなければ、捜査の方向が違ったと思うか。

 それとその週刊誌の記事も、『週刊文春』さんの記事にも出てくるんですけれども、その中で『俺が手を回しておいた』とか、ドライブレコーダーの中にそういう発言とか、『国会の会期までに捜査を終わらせろ』とか、そういったことは『刑事にはしゃべるな』ということも、ドライブレコーダーの映像に残っているわけですけれども。

 それらは、まず、その『国会会期中』という話は、議員の付帯特権、議員に認められたもので、親族は関係ないと思うんですよね。その濫用に当たらないのか。

 また、その証拠の隠滅とかですね、犯人隠避またはその教唆に当たると、佐藤さん個人は木原氏の行動について思うのかどうか、を聞かせいただきたいんですが」。

佐藤さん「そうですよね。あのぉ、要は、一番は国会というのは、要は、当時ね、10月10日ぐらいからたしか始めたと思うんですよ。日付的には。

 ほいで、その後半に国会が始まるという話だったんですよ。何国会、臨時国会ですね。それが27日とか28だったんですよね。だから一応それを始まっちゃうとちっちゃいことも面倒を見れないじゃないですか。一応、木原さんが面倒を見ててくれたから、結局、あのぉ、任意同行なわけですよ。

 そうすると、やっぱり、はじめねぇ、行った時、一回も断られたわけですよ。子供がいるということで。ただそれを、俺の個人的な感覚ですよ。『ああ、もうこれ来ないな』と思ったんですよ。『二度と』。『来ない』。

 だって任同(任意同行)ですから。いろいろ理由をつけて、『今日は行けません。子供の面倒もあります』と、言われれば来ないことも自由なんですよ。任意同行だから。令状を持っていないですから。だから俺は『もうこれはダメかな』と思ったんですよ。もう、『もう二度と来ないかな』と思ったんですよ。いろいろ理由をつけてね。それもありなんですよ。引っ張っていけないですから。

 ただスムーズに行ったのは、当時幹事長の二階さん。二階さんが、俺、聞いた話ですよ、幹部から。二階さんが『ちゃんと警察の捜査には協力しなさい』と。『ちゃんと出頭しなきゃだめだよ、と言ってくれたから、明日から大丈夫だよ』と聞いたんですよ。

 だから、それでスムーズにいったって、事実ですよね。だから二階さんが結局ケジメというか、筋を通してくれた、という感覚でいるんですよ。

 だから当時は相当感謝したですよね。楽だったから、翌日からは。『あぁ、これ本当に、二階さんもちゃんと。大物じゃないですか、やっぱり。ちゃんと筋を通してくれて、警察に協力してくださいと言ったから、スムーズに行ったんだ』。今でもそういうふうにしか思えないですね。はい。あと何ですか。何でしたっけ」。

記者5「議員特権とか、議員の付帯特権とか、犯人隠蔽の教唆とか、証拠隠滅の教唆とか、木原さんの行動がそういうのに当たると、一線の捜査官として思うか」。

佐藤さん「うーん。あのぉ、犯人隠避は親族には適用されないんですよね。

 例えば、妻の罪を夫が隠すとか、そういうのは当たらないので。だから結局そこは当たらないんじゃないですかね。

 例えばね、タクシーの中の出来事だって、もしかしたら励ましているだけかもしれないですよね。だって(妻のX子さんは聴取で)疲れてきているわけですから。それをね、『頑張れよ』と。

 『俺が何とかしてやる』というのは、逆に、『後ろで手を回す』、『俺が手を回してやるから』とか、ハッタリかもしれないじゃないですか。妻を勇気づけるための。実際、そんなことをやっているかどうかも知らないし、それはそれで夫がX子さんを励ましている、というふうにもとれるじゃないですか。

 ただ、俺びっくりしたのは、初めて言うんですけれど、そのタクシーの中で、Yさんの名前が出たことなんです。Yさんの名前が。だから、Yさんの名前なんて、その、『X子さんが本当に言っているのかな。共有しているのかな?』みたいな感じで、ちょっと、それがびっくりしたんですよ」。

記者5「それは、どういう会話だったんですか?」。

佐藤さん「だからその中で名前が出たんですよ、Yさんの名前が。何らかの、もう、内容は覚えていないですよ。その、Yのあれで。ただ、Yさんという。もう二人(※木原氏とX子さん)で、じゃあ、『Yさんを共有しているんだな』と。『そんなこと、X子さん、言うかな』っての方がびっくりしたんですよね」。

記者5「その、最初に聞いた、木原さんの夫人だということがなければ、『10回以上、捜査やってきて、こんなことなかった』とおっしゃいましたけれども、この捜査の方法は変わったと思いますか」。

佐藤さん「うーん。実質、やりにくかったのは確かですね。別にそれは、あの、木原さんがいるから、勝手にできないじゃないですか。それはやはり、礼儀みたいなのがあって。そこら辺の兄ちゃんだとか、そこら辺の不良だったら、いくらでも引っ張れるじゃないですか。任意っていったって、『来い』ってやれますよ。

 だけれど、そうはいかないから。だから、そこで苦労したんじゃないですかね。はじめ、特命が入っている時は。それで『ちょっと無理かな』ということで、サツイチ(※7)を入れたわけですから」。

(※7)サツイチ:警視庁捜査一課殺人一係の俗称。

記者5「最後、最後に一点だけ、短かく。記事の中で、『包丁の柄のところにテープが、両面テープがぐるぐる巻きになっていて、それが怪しいと思った』と。

 それはどういう構造で、誰の指紋を取って、どういう風に使えるのかってのがいまひとつよく分からなかったんですけども、その見立てを教えていただけませんか」。

佐藤氏「いやぁ、見立ては…。要はそんなものに両面テープ巻く人間はいないじゃないですか、普通は。だけど巻いてあったんですよ。これは我々が、あの、Yが『そういう風になっていましたよ』と言っているわけですよ。それは、『種雄君が、覚せい剤で錯乱でやったんじゃないか』、と。

 だけれども、実際Yは、こっちから何も向けないのに、そういう話をするわけですよ。別にそんな話をする必要はないわけですよ。でも、巻いてあった。だから結局、どういう風に巻いていたかというのは…。それだけで(Yに話を聞くために)宮崎行っていますからね。巻いた形を、どうしても不自然だと。じゃ、何の目的かな。

 で、『このナイフがちょっとポイントになるのかな』といって、いろいろ考えてたんですよ。だから、実際にその、巻いてある状況が。だけど(Yさんが)剥がしてもってちゃってますから、ちょっとあれですよね。そこら辺は推理というか。

 他に誰かの、さっきも言った通り、X子さんの指紋が(ナイフに)ついたって、家にあるものなんだから、全然不思議じゃないんですよ。

 ところが、『私の指紋がついちゃった』と。そういえば、剥がすじゃないですか、Yが。『私の指紋ついちゃった』ということでね。でも、『私の指紋ついた』ということは、『剥がしてほしい』という意味なんですよ、多分。

 だって、自分の家にあるナイフに自分の指紋がついたところで、何ら不思議じゃない。だから、それは種雄君のナイフだとしても、(妻のX子さんが)触る可能性だってあるじゃないですか。それをわざわざね、『指紋がついちゃった』。ちょっとおかしくないですか」。

記者5「ありがとうございます」。

その4に続く

 IWJでは、佐藤氏の記者会見を質疑の部分も含めて、全文文字起こしをしました。ぜひ、全編動画とともに御覧ください。

※「木原事件」X子さんの取調官・佐藤誠氏会見全文文字起こし!(その2)「X子さんはちょっと違うんじゃないかと」「(捜査の)終わり方が異常だったんですよ」〜7.28 佐藤誠氏(元警視庁捜査一課刑事)記者会見 2023.7.28(08;39;02〜)
https://youtu.be/sujrsd1ZX-w?t=519

※「木原事件」X子さんの取調官・佐藤誠氏会見全文文字起こし!(その3)「殺人事件で一番大事なのは遺族への対応」、それがなかったのは「異常な終わり方」〜7.28 佐藤誠氏(元警視庁捜査一課刑事)記者会見 2023.7.28(20;02;24〜)
https://youtu.be/sujrsd1ZX-w?t=1200

※「木原事件」X子さんの取調官・佐藤誠氏会見全文文字起こし!(その4)読売新聞記者「『地方公務員法違反』に抵触することは、承知の上か?」〜7.28 佐藤誠氏(元警視庁捜査一課刑事)記者会見 2023.7.28(31;50;25〜)
https://youtu.be/sujrsd1ZX-w?t=1910

※「木原事件」X子さんの取調官・佐藤誠氏会見全文文字起こし!(その5)かつての同僚からは「電話が1個も来ない」「『余計なことをあいつに言うな』っていう話じゃないですか」〜7.28 佐藤誠氏(元警視庁捜査一課刑事)記者会見 2023.7.28(45;11;05)
https://youtu.be/sujrsd1ZX-w?t=2710

※「木原事件」X子さんの取調官・佐藤誠氏会見全文文字起こし!(その6)遺族への思いやりに欠ける露木長官の発言に「頭きますよね」「ちゃんと働け」〜7.28 佐藤誠氏(元警視庁捜査一課刑事)記者会見 2023.7.28(56;04;17)
https://youtu.be/sujrsd1ZX-w?t=3364

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