2023年3月20日、午後4時半より、東京千代田区の司法記者クラブにて、3月13日に最高裁が決定した『袴田事件』の再審開始に対し、検察庁が特別抗告を断念したことを受けて、袴田事件弁護団による記者会見が行われた。
東京高検前で、検察の特別抗告に反対する座り込みの取材中であったIWJ記者は、この記者会見が行われるという情報を得て、急遽、司法記者クラブへ向かった。
会見場で機材の設定を終え、スタンバイしていると、袴田弁護団事務局長の小川秀世弁護士ら弁護団が到着し、会場は「おめでとうございます」の歓声で満たされた。
小川弁護士は、高検前の座り込みの場所から、司法記者クラブへの移動中に、「検察が特別抗告を断念した」という知らせを受けたようだ。入場時には、すでに喜びと安堵の表情であった。
記者会見冒頭、袴田弁護団・弁護団長の西嶋勝彦弁護士からのあいさつがあった。
西嶋弁護士「先ほど、検察官の方から、我々の問い合わせに対して、『特別抗告を断念する』という正式表明がありました。検察庁自身の公式判断の表明は午後7時にするそうです。ですから、もはや、引き返しはないと思います。
この決定に対し、私も当然だと思います。決定があれほどに詳細に検察官の論点を一つ一つ判断して、成り立たないことを懇切丁寧に説明していますから、刑訴法が言う、『特別抗告の理由』にまったくあたらない。
つまり、特別抗告ができるのは、著しく正義に反するということでなければ、あと、憲法違反がなければ、特別抗告の理由はないんです。彼らがいくらあがいても、恥をかくだけです。検察官も、皆さんの世論動向を見ながら決定している…。
西嶋氏は、ここで言葉を詰まらせ、数秒黙ったあと、「皆さん」への感謝を述べたようだが、その震える声をうまく聞き取ることができなかった。
続いて、弁護団事務局長の小川氏が次のように語った。
小川氏「先ほど、公判担当の山口検事から、お電話いただきまして、それで『特別抗告はしない』というお話をいただきました。それで、私がなんと答えたかというと、『ありがとうございます』と(笑)、いや、本当にうれしかったものですから(涙)、検事は午後7時に、また正式に公表するというお話でした。
けれども、本当に、僕は、本当に『ありがたい』という気持ちも、本当に、そういう意味では同じです。秀子さんにも電話したんですよ。秀子さんは、『検察官は偉い』っておっしゃってました。やっぱり、同じようなお気持ちだったというふうに思います。
本当に、これはだけど、支援者の皆さん、それから、本当にマスコミの方々も、それから、本当に、そのためにそのことで、もう本当に、もう今回は、『絶対、特別抗告はされないだろう』という、そういうムードがもうできていたじゃないですか。
今回ですね、学者の先生方にも声明を出していただいて、もう、本当に皆さんの力が、こうやって一つに合わさって、その結果、今日を迎えられたというふうに思います。本当にいいタイミングで、また、しかも本当に最高のところで連絡を受けられたことを本当に喜んでおります」。
リモートで会見に参加していた袴田巌氏の姉である袴田秀子氏は、「再審開始の時と一緒でね、とてもうれしかった。本当にもう、これで安心。はい」と、簡潔明瞭に自身の喜びを表明した。
「巌さんには何かお伝えしますか?」との記者からの質問には、「ちょうど帰ってきたんですよ、今。だからね、『安心しな、もう再審開始になったよ!!』って説明したですがね、わかってるのかどうか、わからないだが、ちょっと反応は鈍かったです」。
秀子氏は、今後の「やり直し裁判」に期待することについて聞かれ、次のように答えた。
秀子氏「裁判は巌の言う通りになっているんです。ね。だから、このまま進んでいってもらいたいと思っています。はい」
3月23日現在、検察当局は、今後開催される静岡地裁での再審公判において、「有罪立証」を見送る方向で検討中であると言われており、これにより、審理が大幅に短縮され、袴田さんへの無罪判決が早まる見通しとなっている。