袴田事件弁護団・事務局長 小川氏「『特別抗告』をするなんて考えられないし、するということになれば、検察のわけのわからない権限乱用であり、検察にあるまじき行為だと思う」~3.13日本弁護士連合会主催 袴田事件弁護団 記者会見 2023.3.13

記事公開日:2023.3.17取材地: テキスト動画
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(取材、文・浜本信貴)

 2023年3月13日午後2時に行われた東京高裁前での「袴田事件」の再審開始決定の報告を受け、同日午後4時から、東京都千代田区霞が関の弁護士会館にて、日本弁護士連合会主催で、袴田事件弁護団の記者会見が開催された。

 会見冒頭、日本弁護士連合会・会長の小林元治氏より、あいさつがあり、その中で、このたびの再審開始決定、そして、検察側から予想される「特別抗告」について、次のように述べた。

 小林氏「すでに袴田巌氏は87歳と高齢になっておられます。検察当局におかれましては、最高裁判所に特別抗告をすることなく、速やかに再審公判に臨んでいただくということを強く求めたいと考えているところでございます。

 先ほど東京高等裁判所の方で決定を出されました。この決定要旨を私も読みました。2つの点に注目したいと思います。

 その1つは、袴田さん以外の第三者が味噌のタンクですね。タンク内に衣類を隠匿し、味噌漬けにした可能性は否定できない。こう言っております。その第三者とは、捜査機関も含まれ、事実上、捜査機関のものによる可能性が極めて高い。ここに踏み込んで指摘をしているところでございます。

 2つ目は、原審の静岡地裁が再審開始決定に当たって、袴田巌氏に対する死刑及び拘置の執行を停止すると、こういう決定をされたわけであります。けれども、これにつきましても、袴田氏の年齢や心身の状況に照らして相当として支持できると言っておられる点であります。

 この2点につきましては、注目をしたいと考えているところでございます。私ども、日本弁護士連合会は袴田事件支援委員会を設置し、これまで無罪を勝ち取るため支援を継続してまいりましたが、引き続き、無罪確定までこの支援を継続してまいりたいというふうに考えているところでございます。

 あわせて再審法の改正、これも私ども、求めてまいりたいというふうに思っているところでございます。再審法改正とともに、冤罪防止のための制度改革こういったことに対しましても日本弁護士連合会としては、今後とも活動を継続してまいりたいと思っているところでございます」。

 続いて、袴田事件の再審請求人であり、袴田巌氏の姉である、袴田ひで子さんからあいさつがあった。

 ひで子さん「袴田でございます。今日の決定は大変うれしく思っております。57年間闘ってきました。袴田巌は今日は来ておりませんが、再審開始になったということもまだ理解しておりません。再審開始はもう終わったと言っております。で、きょうは、あの付き添いの方に連絡だけいたしましたが、本人には家へ帰ってからゆっくり話をするつもりです。

 そうすると、『当たり前だ』とよく簡単に話をされるんです。巌にすれば当たり前のことです。それが57年かかりました。兄が言っておりました。亡くなった兄が、30年もすればわかってくれるかなと言ってたんですが、30年どころではありません。57年かかりました。でも、大変うれしい。今日は本当にうれしゅうございます。

 1980年の1審の高裁の決定のときには、本当に、大勢皆様がおいでになりましたけど、みんな敵に見えました。私は何ですか、もう皆さん見てもみんな敵に見えたんですよ。それが日弁連を初め、皆さん弁護士さんたちのおかげでだんだんと薄れていって、今ではそんなことは決して思っておりません。

 大変お世話になりました。長い裁判でこれほどお世話になりました。なお、これからも即時抗告があるかもしれませんが、それにも負けないで頑張ってまいります。どうもありがとうございました。大変うれしゅうございます」。

 再審開始決定後の重要な問題である検察の「特別抗告」に関して、日弁連が発出した「検察官特別抗告の断念を求める会長声明」の内容について、日弁連副会長の増子孝徳氏より説明が行われた。

 増子氏「本日の決定を受けまして、日弁連会長名で会長声明(※)を発出いたします。その内容についてご説明させていただきます。

 当連合会は、死刑制度の廃止を訴えているところでございますけれども、本決定が確定して無罪となりますと5件目の死刑再審無罪事件となります。現在も、死刑冤罪事件が存在するということが明らかになるもの、このように考えております。

 死刑の恐怖が、袴田氏の心身に与えた影響がはかり知れないことは想像に難くないところでございまして、当連合会といたしましては、検察官に対して本件性について最高裁に特別抗告を行うことなく、速やかに再審公判に臨むよう、強く求めております。

 当連合会は、これからも袴田氏が無罪となるための支援を続けるとともに、また後ほどご説明申し上げますけれども、再審請求事件における証拠開示の法制化、検察官の抗告禁止をはじめとした再審法改正を含め、えん罪を防止するための制度改革の実現を目指して、全力を尽くしてまいりたい、このように考えております」。

 また、袴田事件弁護団・事務局長の小川英世氏は、このたびの再審開始決定後、検察が「特別抗告」を行なう可能性について、次のように述べた。

 小川氏「決定にも書いてありますけど、旧証拠は、何もその点について、十分な証拠はもともとなかったというようなことを言っているわけです。そういう意味では、この死刑事件であるにもかかわらず、この、一番重要な証拠について、本当にこんな欠陥があった判決だったということを、この決定は認めているものというふうに思います。

 そういう意味では、検察官がこれに対してもう東京高裁で機会を与えられ、そして、新証拠も出しているにもかかわらず、そこのところは全くカバーできなかったし、旧証拠にも、その点について裏付けるものは何もないというふうに決定でも言われているわけです。

 ですから、そういう意味では、『特別抗告』をするなんてことは、もちろん考えられないし、これに対して、するというようなことになれば、もう本当に検察がもうわけのわからない権限を乱用して、本当に、もう。検察のあるまじき行為だというふうに、私は思っています。(中略)

 この事件は、もうこれで早く速やかに再審開始を決定して、巌さんに早く無罪の声をかけてあげることが、もう本当に巌さんの今の状態から脱するための不可欠の条件だと私は思っていますので、ぜひ、それに対して皆さん方も支援をまた続けていただきたいというふうに思います。

 3月17日現在、検察が東京高裁の決定を不服として、「特別抗告」を検討していると報道されている。(※)

 検察側の特別抗告期限は3月20日(月)となっており、その日までに検察が最高裁に特別抗告をしなければ再審開始決定が確定する。つまり、やり直しの裁判が開始される。

 現在、検察に「特別抗告」を断念するように求める署名活動がSNS(change.org)上で賛同の輪を広げており、3月17日の午後4時現在、30,547 人もの人々が賛同している。(※)賛同される方はぜひ、署名をお願いしたい。

 詳細についてはぜひ全編動画をご視聴ください。

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