2023年4月4日午前9時10分より、東京都千代田区の農林水産省にて、野村哲郎農林水産大臣の記者会見が開催された。
冒頭、野村大臣からの報告事項はなく、大臣と各社記者との質疑応答となった。IWJ記者は、「日本の食糧安全保障」について、次のように大臣に質問をした。
IWJ記者「岸田政権は、前政権を引き継いで、軍事的な安全保障には力を入れていますが、食糧の安全保障の強化には目が向いておらず、いざ有事を想定すると穴だらけであるように感じられます。
たとえば、昨年の12月16日に閣議決定をした『安保3文書』で、中露を敵国視して、有事に備えるとありますが、化学肥料のカリウムはロシアから、リンは中国から、これまで購入してきました。
ウクライナ紛争で対露制裁に加わり、中国に対しては台湾有事を想定して敵国扱いし、結果、自ら輸出規制と物流停止を招いています。食糧生産において、これでは『セルフ兵糧攻め』と言っていい状況です。早急な備蓄こそが、資源のない島国が行うべき政策と思われますが、いかがでしょうか?
また、大臣は、安保3文書の閣議決定に賛同されました。その安保3文書で、食糧安全保障を達成できるとお考えですか? もしそうであるなら、その根拠についてもお聞かせください」
これに対して、野村大臣は次のように答えた。
野村大臣「日本の農業の方向を変えていこうという中には、今、ご指摘のありました、特に生産資材、なかんずく肥料について、日本にはその原料がないわけですから、どう確保していくのかということが、また大きな課題になってきております。
そこで、今、お話がありました。ロシア・中国からの輸入が途絶えてしまったら、日本は物を作れなくなるのではないのかということも、ひとつ懸念されているんだろうなと思いますが、一番私どもが懸念したのが、中国から窒素リン酸カリというリンが、中国から、一昨年までは9割、中国から輸入していましたので、それが入らなくなるぞということになったときに、さてどうするかというときに世界を見渡した。
また、少し取引のあったモロッコに話をしに行って、そして話だけじゃだめだから、礼を尽くした方がいいよって、私は、党の中にいたときに、それはもう大臣が行って、リンをモロッコに行って、お願いしてこないとだめじゃないか。まあ、こんなことを、実は、党の中で言った覚えがあるんです。
そうしたら、早速、農水省の方では、武部副大臣がモロッコに飛んだということで、モロッコから今、リンも入ってきております。
- 武部農林水産副大臣がモロッコを訪問しました(農水省、2022年5月17日)
で、調べてみますと、モロッコというのは、リンの埋蔵量は、リン鉱石の埋蔵量は世界一なんです。中国なんかより、あるいはロシアなんかより、ずっとあるんですよ。
だから、こういう、モロッコと流通でちゃんとやっておけば、あまり心配いらないのかなと思っていたんですが、もうひとつ欠点は、輸送費が高いということです。今まで、中国だと3000トンクラスでよかったんですが、モロッコになると、やはり1万トン級の貨物船でないと、なかなかコストがあわない。
だから、運賃代が高くなってきていることは事実です。だから、そういったようなことで、できるだけ原料として日本にないものですから、それでリンを一番含んでいるのは、じゃあ、日本では何があるのかといいますと、鶏の糞です。鶏糞。それで、今まで鶏糞についてはなかなか使い途がないということで、私の鹿児島も、全国で3位の鶏の羽数が多いんですが、その鶏糞をもう始末に困っていたんですよ。
そうしたら、宮崎の会社が引き取って、それを燃料に使っていた。そうしたら、それから出る灰が、今はもう引く手あまたになっているそうです。何でかというと、リンを含んでいるものですから、そのリンを採出するのに、鶏糞が一番いいということで、重宝がられてきているんですが、そういったものを、日本にあるものを、何か使えないかということで、先ほど言った、その鶏糞もしかり、あるいは豚糞もしかり、あるいは牛糞もしかり。
だから、国内にあるものを使って、肥料を何とか、全部は全部できないんですけれども、ある程度までは確保できれば非常に取り組みやすくなっていくのではないかと。それと、もう一つは、やはり、誰もそんなことは考えなかったんですけれども、この、肥料なんかの原料を備蓄することも考えていかなければならないということで、本年度の予算の中にその備蓄の費用も予算化しました。
ですから、そういう形で、資源のない日本ですから、できるだけ、いろいろな組み合わせでもって、途絶えないようにしなければいけないなと思っておりまして、ロシア・中国からもう来なくなったら、日本はお手上げじゃないかと思われているかもしれませんが、いろいろな手を使いながら、そういうことを組み合わせをしながら、日本の生産者の皆さんが困らないようにしたいなこんなふうに思っています」。
詳細については、ぜひ全編動画を御覧いただきたい。