「第7波で医療が逼迫しているのは、政府が医療従事者らへの4回目接種をしなかったため」~岩上安身によるインタビュー 第1084回 ゲスト 医療ガバナンス研究所理事長・医学博士 上昌広氏 2022.8.1

記事公開日:2022.8.7取材地: テキスト動画独自
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(文・IWJ編集部)

特集 #新型コロナウイルス
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 第13期に入って早々のインタビュー第一弾、8月1日午後6時20分から、「新型コロナ新規感染者数で日本は世界ダントツ1位! コロナ第7波に加えてサル痘も迫る! 岩上安身による医療ガバナンス研究所理事長 上昌広医師インタビュー」をIWJ事務所より中継した。

 日本は、オミクロン株 BA.5株による「第7波」の真っ只中にある。1日あたりの新規感染者数が20万人を超え、東京都でも4万人を超えた。日本は新規感染者数はで世界の「ダントツ1位」にもなった。7月29日には全国の「入院治療等を要する者の数」は150万人を突破した。

 今回の感染爆発の舞台となっているのは、「ファクターX」があるなどと言われ、これまで比較的感染者数が少なかった、日本や韓国など、アジアの先進諸国である。どうしてこのような大規模な感染拡大になっているのだろうか。

上医師「コロナは、はしかや水疱瘡みたいに、一回ワクチンを打てば免疫を持つというものではなくて、どうやら何回も感染して何回もワクチンを打って、ゆっくりと免疫を獲得するんだとされています。そういうコンセンサスになっています。

 ワクチン打つだけよりは、かかった方が(獲得する免疫が)強いので、これまで大流行をしてない地域は、弱い。まさに、そういう地域(日本を筆頭に)が、今、(感染拡大の)上位に来ています」。

 第7波は、これまでの感染拡大規模を大きく上回っているが、どの程度の脅威と受けとめたらいいのだろうか。岩上は、デルタ株とオミクロン株の両方にかかった知人の例を紹介した。

岩上「1度デルタ株にかかったのだから、抗体ができて、もうかからないと思っていたのに、2度もかかってしまったという話があるんですよ」。

上医師「風邪のウイルスですからかかっても、また、かかりますよね」。

岩上「でも、症状の酷さが全然違ったそうです。オミクロンはそれほど駄目じゃなかったけれども、デルタ株の時には、本当に恐怖を味わったと。症状の差っていうのは、やっぱりあるんですね?」

上医師「全然違う、別のウイルスですよね。オミクロンは、症状はすごく軽いですよね。実質的には(重症化する人も)ほとんどないと思います。もともと持病があって、最後の一押しになるということはありますけど」。

 オミクロン株による症状は、デルタ株と比べると症状は軽いということだ。非常に感染力が強いウイルスは、一般に毒性がそれほど高くないとも言われている。

上医師「致死率は、デルタの時は、だいたい1パーセント。100人に1人が亡くなったんですが、今は1000人に1人以下になってるので。実質的には10分の1以下なので、もうそんなに、オミクロン株の流行を、ワクチンを打っている方が心配する必要はないと思いますよ」。

 7月29日、29日、政府は「都道府県が『BA.5対策強化宣言』を出す仕組みをつくる」と発表しました。ポイントは以下である。

・強化宣言を出したい都道府県が国と調整し、国が適用を認定。

・地域の病床使用率がおおむね50%か昨冬のピークを超え、同時に入院患者の多くが中等症以上の医療が必要である場合などに宣言を出せる。

・国は必要に応じて自治体に対策を助言したり、応援の職員を派遣したりする。

・宣言に基づく都道府県の協力要請は高齢者や同居家族の外出自粛、飲食店の長時間滞在の回避などを想定する。

・新型インフルエンザ等対策特別措置法に基づく緊急事態宣言やまん延防止等重点措置と異なり、罰則は想定していない。

 都道府県が主体となって対策に取り組み、外出自粛などの協力を求めるものの、罰則は設けない方針である。政府の方針を、上医師はどのように見ているのだろうか。

 上医師はにべもなく、「意味ないです」と切り捨てた。

上医師「意味ないですよね」

岩上「意味ないですか!?」

上医師「日本独自とかいうのは、もうないんですよ。世界のオミクロン株の流行で、大騒ぎしてる国なんてないですよね。普通にマスクを外して、普通に経済活動していますよ。『ロイター』や『タイムズ』を読んでいて、大騒ぎしてる国はないですよね。

 もうそろそろ二年半経つので。例えば、外出自粛。外出しなくて本当に感染者って減るんですかって言ったら、減らないですよね。

 事実、人流と感染者が影響したなんてデータはないでしょう。感染系の先生はお手盛り出しますけど。

 私たちは医学のトレーニングを受けるときは、人間の介入は基本的にはほとんど意味がないんだと、治療行為っていうのは『害を与えるな』と習うんです。どんな医療をしても効果はほとんどないんです」

岩上「すごい根本的な話ですね。ものすごくラディカルな話」

上医師「基本の基なんです。副作用は、必ず出るんです。抗癌剤なんて、癌は小さくなるけど、寿命は延びない典型的な薬が多いんです。

 今回の(感染爆発を)見ても、もうピークアウトしてるかもしれない。西欧はだいたい日本よりも1ヶ月先行しています。そろそろ西欧がピークアウトして1ヶ月なんですよ。事実、今日は先週より下がってるんですね。

 私たちは、新宿の駅中で診療してるんですが、そこはもうとっくにピークアウトしてるんですよ。東京の駅中って、これまでも早かったですね。患者さんを見てちゃんとやってるからこその、皮膚感覚ってあるんですよ。

 ちゃんとした観測した事実にもとづいてやらなきゃいけなくて。感染者数、推移、外国の状況。こういうのを見た時に、もうこれ、普通に考えて、下がり始めますよ」

岩上「なるほど」

上医師「そしたら今時、大騒ぎする必要ないです。全国でもあと、1、2週間だと思います。8月の初旬から中旬にかけて、一昨年は2020年8月19日がピーク。去年8月20何日かがピーク。お盆の人流急増の時に減ってるんですからね」。

 岩上は、上医師がもっとも早く「季節性」に言及したことに触れまた。上医師は、「風邪なのだから、季節性に着目するのは当然だ」と述べた。

 コロナの感染拡大は季節性要因が大きく、お盆の人流増加時期にあってもむしろ感染は減っていたのだから、ピークアウトは自然に起きる、と指摘した。つまり人流を抑制する、行動制限をかける、外出を自粛するといった政策で感染を減らしたり、左右することは、ほとんどできない、関係ない、というのである。

上医師「だから、何やってもそんなに流行を変えることはできないですよ。もちろん、重症の方を救命する、ということには(手段を講じるか否かで)差があると思いますよ。

 でも、流行のピークなんて、人間がほとんど変えることはできない。これは、我々の臨床医の感覚に合うんです」
 
 上医師は、人間が介入することによって、流行を大きく変えることはできない一方、介入の「副作用」が出るから、介入は最小限にしないといけない、と主張した。

上医師「一方、(介入の)副作用が出る。日本の最大の問題は、コロナ死者とその時期の死亡者の比を見ると、日本は6倍死んでいる。これは先進国の中でも、圧倒的に高いんです。要するに介入したために、持病が悪化して死んでるんです、運動不足になって。これが行動制限の副作用です。

 すごい人口減で、話題になってましたよね。もう2年半経つのですから、介入するにはそれなりの根拠がないとやってはいけません」。

 上医師は、国立感染症研究所の脇田隆字(わきたたかじ)所長が「行動制限も今後の選択肢になる」と述べたことについて、「この人たちが(コロナ対策を)間違ってきたんですよね」と厳しく批判した。

上医師「私は、まったくのナンセンスだと思いますよ。感染者数の抑制など、目的ではありません。あくまで重症者が命を落とさないこと。

 行動制限には、負の影響があります。行動制限をかけるなら、それなりの合理性がいる。アジア、東南アジアの中で、行動制限を一番かけた日本が死亡者は平均なんですよ。(行動制限には)効果がなかったと考えたほうがいいんです」。

 上医師は、行動制限によって運動不足になって持病を悪化させたり、認知症が進んだり、様々な悪影響が出て、人口減少にもつながったと指摘した。

 日本の超過死亡者が多いことについて、『ランセット』でも取り上げられているということである。

 上医師は、今回の第7波における医療逼迫について、「感染症法を変えないと無理だ」と主張している。上医師によると、都内のコロナ機関病院の医師は「入院しているコロナはほとんど中等症止まりで軽症も多い、入院の必要なんかほとんどないですよ」と述べており、これが臨床医の実感だと述べた。

 上医師の知人であるコロナ機関病院の医師は、今回の医療逼迫の最大の原因は「院内クラスター」の問題だ、と指摘していた、と言う。

岩上「医療従事者を、ワクチン4回目接種の対象から外しちゃったのですか?」

上医師「そうです。全国市長会など、いくつかの団体が正式に要望を出したんですが、その時に厚労省の医系技官はエビデンスがないから不要だと回答したんです」

岩上「ええ!? でも、初期の段階で、『医療従事者こそ(ワクチン接種が)必要』っていう風にしてきたんじゃないですか」

上医師「今回の4回目、外したんです。わざと。各地から要望が正式に来てるのに、そのことに対してエビデンスがないから不要って言ったんです」

岩上「3回目まで、ちゃんとやってたじゃないですか」

上医師「だから、後藤大臣をちゃんと追及しないといけないんです」

岩上「厚労省の責任は大きい。後藤厚労大臣は、なぜワクチンが余ってるのに外したのか。しっかりと説明する必要があります。これは追及も足りないですね」

上医師「足りません」

岩上「これはもう追及しましょう」

上医師「鉄道の従業員の方から、自衛隊から、エッセンシャルワーカーの方は、打つべきなんですよ」

岩上「エッセンシャルワーカーの優先順位を、下げちゃったんですか?」

上医師「だって、医者もしていない。何もやっていませんよ」

岩上「…はあ、これはなぜなんですか。また、厚生行政がおかしいと…」

上医師「ワクチンを捨てていましたから。余っていたものを大量廃棄しました。そのことを、マスコミとか国会は追及しないといけないです」

岩上「それで結局、院内クラスターが増えている、と」

上医師「病院が(医療関係者用の)ワクチンを受け取れなくなったから、(中等症レベルの患者ばかりなのに)医療が逼迫しているんです」。

 実際に、上述の「都内のコロナ機関病院」では、定時手術がすべてできなくなり、救急受け入れもほとんどできず、病棟スタッフが次々と感染して勤務できなくなるといった状況だという。上医師は「これがリアルですよ」と語気を強めた。

岩上「エッセンシャルワーカーの方々が、打たれてないということですよね。でも医療従事者も、大事だけど、その以外のエッセンシャルワーカーも」

上医師「鉄道止まってますよね。運休していますよね。ウクライナの危機を煽るんだったら、自衛隊いっぱい部隊止まっています」

岩上「そうですよ、大変なことです」。

 最後に7月23日にWHOが「公衆衛生上の緊急事態」を宣言したサル痘の問題についてもお話をうかがった。

 上医師は、サル痘が世界で注目されているのは、「バイオテロ」対策の一環であるが、日本ではまったくそうした認識がない、と警告した。

 サル痘は、死亡率3割の天然痘ウイルスの仲間である。現在、天然痘ウイルスは、米国のCDCと、ロシアの国立ウイルス学・生物工学研究センター(ベクター)の2ケ所で保管されているだけだが、テログループが保有している可能性も否定ない。

 世界でサル痘についての研究が進められているのは、容易に実験できない天然痘ウイルスの代わりにサル痘が利用されているからだというのである。

 上医師は、日本のバイオテロ研究は極めて薄く、「ほとんどない」と言って良い状況だと指摘した。日本でも政府は、「健康危機管理庁(仮称)」の創設を進めているが、その運用は、国立感染症研究所と国立国際医療研究センターを統合した「日本型CDC」だという。

 上医師は、「いずれも厚労省の医系技官が仕切る組織」であり、「バイオテロに対応する実力はない。もっと自衛隊の専門家を登用すべきだ」、「バイオテロ対応は、国家の責務だ」と主張している。

 この他にも、日本でお馴染みとなったアクリルのパーティションも、空気を滞留させるため、むしろ危険で、換気の方が大切だという認識、コロナの院内感染が空気感染で起こったことを丁寧に証明した研究、上医師が携わっている福島県相馬市での若年層を含む積極的なワクチン接種によって感染が大幅に減った実例、ワクチン不安についての見解、後遺症問題などについてお話をいただいた。

 詳しくは、ぜひ、全編動画をご覧ください。

■ハイライト

  • 日時 2022年8月1日(月)18:30~
  • 場所 IWJ事務所(東京都港区)

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