2021年7月23日(金)、午後2時より、東京・文京区民センターにて、「もの言えぬ社会の到来 沖縄つぶしの『土地規制法』は廃止!」学習集会が開催された。
2021年6月16日未明、「重要土地調査規制法(正式名称:重要施設周辺及び国境離島等における土地等の利用状況の調査及び利用の規制等に関する法律)」が参院本会議で可決・成立した。
この法律は、自衛隊や米軍基地、そして原発等の「重要施設」の周辺、および、国境離島など、政府が安全保障上重要だとする土地・建物の利用者や使用者らを調査、規制ができるようにするものであり、罰則も備えている。
このたびの学習会で講演をした弁護士の馬奈木厳太郎(まなぎいずたろう)氏は、6月14日に行なわれた、参議院内閣委員会参考人質疑に参考人として出席し、この法案に対する氏の印象について、以下のように述べた。
「この法案は、だいたいにおいて4つの言葉から成り立っています。『内閣総理大臣』、『等』、『その他』、『できる』です。
たとえば、『内閣総理大臣』は、○○『等』について、○○『その他』の○○に対して、○○することが『できる』といった感じです。『等』や『その他』という幅を持たせる表現が多いです。
なにより、『内閣総理大臣』という主語が圧倒的に多い。28か条の条文のなかに、なんと33回も出てきます。その結果、この法案は、国民の権利を保障するものではなく、政府に権限に与える行政命令のような内容となっています。いわば『内閣総理大臣の内閣総理大臣による内閣総理大臣のための法案』という印象です」
この法律は、可決・成立したとはいえ、その条文上の規制の内容や罰則の対象が曖昧で、運用についての多くを総理の判断に委ね、過度な私権制限、そして恣意的な運用につながる懸念は残されたままだ。
馬奈木氏は、この法律にかかる問題点について、以下のような点を挙げている。
・調査対象者、調査内容、調査手法、調査期間に限定がない
・重要施設にも限定がなく、政令で定められる(沖縄は全県域・全県民が対象となる可能性があるが、沖縄のことを意識した発言をする政治家がまったくいない)
・法律を作成するための根拠となる「立法事実」がない
・大事なことは閣議決定される
馬奈木氏は、講演の中で、「重要土地調査規制法」第二十二条(※)を例に挙げ、この法律の立て付けを次のように、詳しく説明した。
※(関係行政機関等の協力)第二十二条 内閣総理大臣は、この法律の目的を達成するため必要があると認めるときは、関係行政機関の長及び関係地方公共団体の長その他の執行機関に対し、資料の提供、意見の開陳その他の協力を求めることができる。
馬奈木氏「今回のこの土地規制法は、国が、あるいは内閣総理大臣が、『こういった協力をして下さい』とか『こういった情報を提供して下さい』と自治体に協力を求めることができることになっています。あたかも対等の関係ではない、『下請け』機関かのような扱いになっています。
地方分権一括推進のための法律が2000年とかにできていて(編集部注・「地方分権の推進を図るための関係法律の整備等に関する法律」1999年7月16日公布)、ここでも改めて、国と自治体の関係というのはうたわれているにもかかわらず、今回のこの法律というのは、まるで『下請け』機関、内閣総理大臣の手足のように、地方自治体を使う。そういうことが予定されている。そういう内容になっています。
しかも、『情報出して下さいね』、『調査に協力して下さいね』と言うだけじゃないんです。22条の条文では、『土地規制法という法律の目的を達成するために、必要があると認める場合には、内閣総理大臣は、地方自治体の長やその他の執行機関に対して、意見の開陳・表明に加えて、その他の協力を求めることができる』となっている。これは結構すごいですよ。
この土地規制法の目的というのは『安全保障』ですから、『安全保障』のために必要だと内閣総理大臣が判断した場合には、地方自治体の長には色々と協力を求めることができる、となっています。(中略)しかも、この内閣総理大臣の判断を止めることのできる機関がない、法律上、予定されていない。このことは国会でほとんど議論されなかった」
馬奈木氏はこうも言った。「(22条条文の)『その他の協力を求めることができる』、この『その他』、つまり、限定されていないのが恐ろしいのです」
詳しくは、全編動画にてご確認いただきたい。