2021年6月10日、東京千代田区の参議院議員会館で、市民や国会議員らが、参議院で審議中の「重要土地調査規制法案」の廃案を求める院内集会を開いた。
集会には「自衛隊の国民監視差し止め訴訟」の弁護士、小野寺義象(よしたか)氏が、インターネット会議方式で登壇した。
「自衛隊の国民監視差し止め訴訟」は、2007年、自衛隊のイラク派兵が憲法違反と問題視される中、陸上自衛隊情報保全隊が派兵に反対する行動や、国の施策に批判的な市民の行動を監視し、記録にまとめて利用していたことが発覚し、プライバシー権を侵害した違法な監視だとして争った裁判である。
- 自衛隊の国民監視差止訴訟:最高裁不当決定について(一番町法律事務所、2016年 11月14日)
小野寺弁護士は、「重要土地調査規制法案」の問題について当時の裁判で争われた、原告のシンガー・ソングライターAさんへの、プライバシー侵害が認められたケースを披露した。
小野寺氏によれば、当時、調査・監視をしていた、自衛隊の情報保全隊の内部文書には、Aさんが駐屯地から10キロも離れているスーパーの敷地内で「イラクに自衛隊を行かせないライブ」をしていることや本名、職業などを記録していた。裁判では、地裁・高裁それぞれで国側は敗訴し、控訴をしなかったため敗訴が確定した。
小野寺氏は重要土地調査規制法案になぞらえて「駐屯地は重要施設ですね」「そこから10キロメートル離れたところまで監視する」「イラクの自衛隊派兵反対は機能阻害行為ですね」「それに対して政府は勧告・命令・逮捕する」と解説して「裁判所で違法だとなされているものについて、それを合法化しようとしているのだから『権力分立』に反している」「裁判所の判断をキッチリと尊重して吟味する慎重な審議をしてもらいたい」と述べた。