2021年の東京都議会議員選挙も終盤に差し掛かった2021年6月30日、西武新宿線の田無駅北口で、午後4時から、東京都議選に立候補した自由民主党 浜中義豊(のりかた)候補の街頭演と、応援弁士として安倍晋三前内閣総理大臣らの応援演説が行われた。
この街頭演説には、安倍前総理以外にも、自民党の遠藤源太郎議員、松本洋平衆議院議員らが応援弁士として参加した。
西東京市選挙区は、定数2に4人が立候補している。都民ファースト、立憲民主の現職に、共に新人の共産党候補と浜中候補が挑む。
マイクを握った候補者の浜中候補は、「私、浜中理隆が政治を志したのは、困ってる人がいたらそれは、政治の責任だからこのように私は考えております」と述べ、「たとえば、このコロナウイルス、しっかりとワクチン接種を行い、経済を元に戻し、当たり前の日常を皆さんと取り戻していく。その為に東京都との連携は、必要不可欠であると私は考えております」と語った。
浜中候補はさらに「コロナウイルスワクチンを打つ医療従事者が、ワクチンを打てていない問題もあったわけですが、現場の声を届けるのが議員の仕事であります。私は、今ここにいらっしゃる皆さんの声をしっかりと吸い上げて、東京都につなぎ、西東京市と東京都の架け橋として、東京都の光をこの西東京市に当てていきたいと考えております」と演説した。
途中、遅れながら、安倍前総理が登場し、以下のように応援演説をした。(一部抜粋)
「私達政治家における一番大きな経済分野における責任とは何か、いろんな皆さんが街頭に足を運んでくださいましたが、働きたいと思える人が働ける社会を作っていくことなんです。
9年前、2012年どうだったか。例えば、当時、製造業はどんどん、海外に出て行ってしまう。下請け事業が生きていくことができないから、工場を閉め、そして、お店を閉めるしかなかった。全国で連鎖倒産という言葉が覆っていた。
その中で、高校を出て、大学を出て、一生懸命頑張っても、なかなか就職できない時代だったんです。
この状況を変えるために私たちは政治を奪還して、いわゆるアベノミクスを進めた。その結果どうだったか、いろんなことを批判する人がいますが、結果が示しています。
就職になりたい方の有効数人倍数0.53つまり、100人就職になりたい人に対して、53人分の仕事しかなかった。二人に一人しか、正社員になれなかったんです。
それが、私たちが、政策を進めた結果、2019年には、1.57倍。100人正社員になりたいという人がいるならば、157人分の正社員の仕事があるという状況を作り出すことができました。一倍を超えたのは史上初めての事です。正社員になりたいという人にそれ以上の仕事がある、真っ当な社会を私たちは実現することができました」
安倍前総理は演説で「有効求人倍率0.53。(中略)それが、私たちが、政策を進めた結果、2019年には、1.57倍」と訴えたが、有効求人倍率は第一次安倍政権の2006年から下がり始め、2009年の麻生太郎政権時にリーマンショックの影響で0.45で底を打ったあと、民主党政権に交代して上昇。再び自民党政権に交代した2012年には0.82まで持ち直している。
なお、有効求人倍数の上昇には労働需要の高まりだけでなく、若年労働人口の減少も大きく影響しており、単純に喜べる話ではない。言うまでもなく、若年労働人口の減少は、少子化の帰結である。少子化の傾向が70年代半ばから現れていたにもかかわらず、ずっと政権を担当してきた自民党政権が長期にわたって有効な手立てを打たなかったためにもたらされた現象であることは言うまでもない。
また、安倍前総理は「100人正社員になりたいという人がいるならば、157人分の正社員の仕事があるという状況を作り出すことができました」と主張しているが、有効求人倍率は正規と非正規の求人の区別をしていない。正社員の仕事が増えた、という主張は、明らかに虚偽の主張である。
また、第2次安倍政権が誕生した2013年1月と安倍前総理が取り上げている2019年12月のデータを比べると、有効求人件数は197万件から267万件と1.35倍に増加しているが、有効求職者数は223万人から159万人へ3割も減少している。そのうち、正社員として就職できた人数は6.3万人から4.6万人までやはり3割近く減少している。
- 平成25年1月一般職業紹介状況(職業安定業務統計)(厚生労働省、2013年1月)
- 令話元年12月一般職業紹介状況(職業安定業務統計)(厚生労働省、2019年12月)
「今残念ながら、コロナ禍で状況が厳しくなっています。しっかりと下支えしていくという事が求められているという事だともいます。昨年私たちは思い切った、大規模な経済対策を行った事業規模で200兆円の対策を行っています」
「まだまだ、不十分なんじゃないか、厳しいお叱りもいただいてます。私たちの改革は政府と日本銀行の連合軍でやっています。政府と日本銀行の関係は、親会社と子会社の関係ですから一緒に頑張っていく。ただもちろん問題があり、インフレになったり、円が暴落したら、それはだめです。やめなければいけません。けれど今は全くそういう状況にありませんから、もう一段思い切った対策を打っていく必要性が今の状況ではあるのだろうと私はそう思います」
この発言も問題である。政府と日銀を親会社と子会社に例えること自体、日銀の独立性をまったくないがしろにしている。
「こうした対策は街の声を拾っていく必要性があります。浜中さんは誰よりも、この街を知っている。足を棒にしていろんな街頭に立っている。いろんな街角に行って、目立つ声を集めてきた。そういう声を政策に変えていく。国会と人と血が一丸となっていくためにも、どうか厳しい厳しい戦いですが、浜中義豊さんを都議会に送っていただけるようにお願いします」
都議選では、コロナ禍での五輪強行という政府・東京都・組織委員会などの判断の是非が問われる。自公が勝利するならば、コロナ禍へのより真剣な対応は国民から求められていない、という判断に傾くだろうし、野党が勝てば、年内に行われることが確実な次期衆議院選挙をにらみ、与党政府もコロナ禍への対策を強化する方向へ姿勢を改めなくてはならなくなるだろう。国政に与える影響も大きい。
都内在住の有権者の皆さんは、ぜひ、投票所へ足を運んでいただきたい。